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AIによる原稿制作、米カンファレンスに学ぶ3つの使い方

「コンテンツ・マーケティング・ワールド2025」視察リポート(上)

BizGateリポート/Creativity

生成AI(人工知能)の普及に伴い、広告などのコンテンツ制作でどう活用するか、クリエーターたちが知恵を絞っている。米カリフォルニア州サンディエゴで2025年9月15〜17日に開かれた世界最大規模のコンテンツ・マーケティングのカンファレンス「コンテンツ・マーケティング・ワールド(CMW)2025」での講演から、原稿コンテンツ制作における生成AIの先進的な3つの使い方を紹介する。

「コンテンツ・マーケティング・ワールド2025」には、クリエーターやマーケターらが大勢集まった(2025年9月、米サンディエゴ)

使い方その1 ウェビナーをAIで多重活用

配信プラットフォーム大手、ON24のマーケティング担当副社長であるマーク・ボーンスタイン氏は講演で「(生成AIのプロンプトを何度も打ち込むのではなく)ボタン1つで成果を得られるように、我々が毎日使う基盤システムにAIが統合されたときに、AI活用が大きく進む」と語った。

同氏が活用例として挙げたのが、ウェビナーの多重活用だ。1時間のウェビナーは聴衆の関心が最も高いコンテンツの1つだ。従来、ブログ記事や電子書籍に加工するのは専門チームに作業を依頼するため数カ月間はかかった。

AIを使えば簡単に文字起こしができるほか、イベントの要約、ブログ記事、電子書籍をボタン1つで作ることができる。1時間の講演をポッドキャスト形式で15分ずつに切り分けて配信もできる。

ウェビナーの関心が高い部分だけ切り出して、30秒間のビデオクリップを自動で生成し、YouTube(ユーチューブ)のショート動画やTikTok(ティックトック)などで拡散することで、オンデマンド形式のウェビナー参加者を増やす好循環を生み出すことも可能になるという。ウェビナーに登録したが参加しなかった人々に短い動画と要約を送ったところ、2日以内に75人がオンデマンド視聴したという。

ウェビナーを基にしたコンテンツなら、講師の視点や考えが直接反映されている。ウェビナーを聴いたライターが書いた原稿ではないので、それほど編集しないで済む利点もある。

使い方その2 企業からの想定質問をAIで準備

クライアント企業の最高経営責任者(CEO)からの想定質問をAIに作らせて、CEOとの面談に臨んだのが、データボックスのディレクター、アリ・オーランド・ワート氏だ。

想定質問の作成には、Chat(チャット)GPTを自分好みにカスタマイズできる「GPTs」を使った。同社の業界内でのポジショニングやメールのやり取り、コンテンツ戦略など多くの知識をAIに教えた。「コンテンツについて譲れない点」などワート氏のコンテンツに関する考え方も哲学もAIに教え込んだという。

ワート氏がカスタムGPTに「あなたは私の知的なスパーリングパートナーだ。私のアイデアに反論し、検証してほしい」と指示したところ、コンテンツ戦略を発表したときに予想されるクライアント企業CEOの反対意見を洗い出してくれた。実際のCEOの反対意見はほとんどその通りで、準備万端で臨めたという。

ただ、「情報漏洩のリスクがあるため、会社の秘密を何でもかんでもAIに与えるのは避けるべきだ」ともワート氏は注意喚起していた。

使い方その3  100の質問でAIが原稿を自己修正

ブルース・クレイ社は「プリライター(ライターの前段階)」というAI活用ツールを有料で提供する企業だ。ライターが1本の記事を書くのにおおよそ4〜5時間かかるが、プリライターを使えば3分の1で済むという。

プリライターは、AIが生成した記事コンテンツについて、品質を改善するために100の質問を投げかけ、あらかじめ設定した品質に達していない場合は自己修正させる。AIにファクトチェックをさせることはしない。

社長のブルース・クレイ氏は「AIは解決策ではなく、ツールだ」と話す。足りない知識を補完してくれるなどリサーチに有効なツールであるが、記事コンテンツを完成させるのはあくまでライターの責任だという。

コンテンツ・マーケティング・ワールド(CMW)とは 

アメリカマーケティング協会(AMA)と提携するコンテンツ・マーケティング・インスティトゥート(CMI)が運営する大規模カンファレンス。企業のマーケティング担当者やクリエーターら1000人以上が集う。2025年の共通テーマはAIなどの変化を突破する意味合いを込めて「ブレークスルー」だった。

CMIはコンテンツ・マーケティングについて「顧客に収益性の高い行動を促すため、価値があり、関連性が高く、一貫性のあるコンテンツを作成・配信する戦略的なマーケティング手法」と定義している。すなわち、商品やサービスそのものを売り込むのではなく、顧客をより賢くする情報を提供し続けることで、顧客がビジネスとロイヤルティーという形で報いてくれるというコンテンツ戦略だ。

2026年のCMWは10月5〜7日にコロラド州デンバーで開かれる。

(早川淳)

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