目次
産婦人科医が教える 働く女性のヘルスケア最前線
仕事に家庭に、プライベートにと忙しい日々。女性特有の不調や疾患について、自分自身も周囲も「仕方ない」と見過ごしていませんか。2026年3月3日に開催された「女性の健康週間 丸の内キャリア塾スペシャルセミナー」(主催:日本経済新聞社 メディアビジネス)では、女性の体について役に立つ情報を専門家がわかりやすく解説。セミナー参加者から寄せられた質問・悩みにも回答しました。
【基調講演】女性の健康と社会 〜働く女性の視点から〜
自身の健康に意識向けて

働く世代の女性の健康には、卵巣機能が深く関わっています。卵巣には女性ホルモンの分泌、卵子の発育・成熟という2つの大事な機能があり、前者は月経関連の不調や更年期障害、後者は不妊症の問題につながります。
月経関連の不調は、月経前症候群(PMS)や月経困難症、過多月経などがあります。月経痛のひどさの背後には子宮内膜症、月経量の多さには子宮筋腫が隠れていることも。月経不順の場合には多嚢(のう)胞性卵巣症候群(PCOS)の可能性があり、これは不妊症の排卵障害の最大の原因といわれています。
更年期は閉経の前後計10年間を指します。のぼせ・ホットフラッシュやめまいなど、日常に支障を来す場合更年期障害と呼ばれ、治療は漢方やホルモン補充療法などがあります。不妊の検査や治療を受けた経験がある夫婦は約4.4組に1組で、年齢とともに妊娠率は下がります。
こうした働く女性特有の健康課題による経済損失は、社会全体で年間約3.4兆円と試算されています。
問題解決に向けて、こども家庭庁は「プレコンセプションケア推進5か年計画」を進めており、啓発や専門的な相談支援の体制構築がうたわれています。厚生労働省は2026年度から、一般健康診断で女性特有の健康課題の問診項目の追加を予定しています。ぜひご自身の健康に意識を向けて、受診のほか、自治体や勤務先の様々な支援を活用しましょう。
【産婦人科医講演セッション】気になる症状、理解して相談―女性のヘルスケア入門
月経トラブルは早期受診を

私たちの仕事や日常生活のパフォーマンスを日々変動させる要因に、月経トラブルがあります。主に痛みや過多月経による貧血ですが、落ち着かない気持ちにさせるマイナートラブルも多々あります。
最近の調査では、約8割もの女性が月経トラブルを我慢した経験があるそうです。また、約半数の女性が自分で市販薬を購入して対応しており、6人に1人が休んだり、我慢したりなどの消極的対応でしのぎ、婦人科の受診は10人に1人しかいません。月経トラブルによって、普段のパフォーマンスが約6割に低下してしまうという報告もあります。
月経トラブルで実際に産婦人科を受診してみると、子宮筋腫、月経困難症、子宮内膜症などの疾患が見つかることがあり、その後は長期的に、様々なライフイベント、ライフステージに寄り添いながら管理していくことになります。
産婦人科受診は怖くありません。まず問診し、超音波検査を行い、治療方針を相談する流れが一般的です。産婦人科診療は生涯にわたって女性をサポートするための診療科です。あなたの人生の伴走者と考えてください。
痛みのせいで学校や仕事に行けない、外出できないなど、日常生活への支障が生じるときはぜひ受診してください。現在は無理なく続けられる薬も多く、症状やライフスタイルに合わせた治療の選択肢が広がっています。早期のほうが治療の選択肢が広く、生活や仕事への影響を最小限にすることができます。
【Q&Aセッション】知ることが将来の病気予防に
笹川 ここからは、事前にセミナー参加者から届いた質問に答えていただきます。

小川 一般的には40代の後半、月経が不順になってきたころからが更年期です。ただ更年期症状は個人差が大きく、また必ず回避する方法はありません。まずは更年期障害について知ることが大事です。
宋 更年期は約6割の人に何らかの症状があって、生活に支障がある更年期障害は2、3割といわれています。私も49歳の後半から急に更年期症状が出て、「私ってこんなにパフォーマンスが低かったかしら」と治療を始めました。産婦人科では予防医学的な観点からもお話しできますので、行きたいなと思ったら気軽に受診していただきたいですね。
笹川 更年期はなるべく快適に過ごしたいのですが、事前にできることはありますか。
小川 更年期は無理が利かなくなる時期。でも皆さん仕事や子育てに忙しいですよね。調子が悪いと思ったら睡眠や食事などを見直すこと。運動習慣がある人は更年期の症状が軽いともいわれています。
笹川 私の経験からも、つらそうな女性にどう接すればいいのか悩むことがあります。

宋 企業から同様の相談をよく受けるのですが、打ち明けたい人が打ち明けやすいように職場環境を整えてほしいと思います。保健師や人事部に相談しやすい企業や、チームごとにヘルスケア担当のマネージャーがいる企業もあります。また、「女性は特有の健康課題がある」と職場で常識にしていく必要があります。
小川 私たち医師が企業で女性の健康課題についてお話しする機会もあるのですが、全社員、または管理職が全員参加する機会をぜひつくっていただきたいです。また、調子が悪かったら誰もが休みやすく、フレキシブルな勤務ができる体制も大切です。
小川 共有したいと思っていただけるだけでありがたいです。やはり疾患について知り、声かけしていただくのがいいのかなと思います。

笹川 私たち女性も、自分の体を知ることは意外と難しいです。私は現在35歳ですが、歳を重ねるごとに体の変化を感じて驚いています。
宋 自分をいたわる「ご自愛の時間」を、わずかな時間でもいいのでつくっていただきたいですね。また、女性は閉経まで月経が続き、様々なリスクがあります。毎月のことを自分で知っているだけで、将来の病気の予防になります。
小川 つらくなってから産婦人科に行くよりも、健診などをきっかけに「ここなら行きやすい」と決めておくといいですね。ピルひとつとっても症状や要望に合わせて様々な選択肢がありますので、ぜひ相談にいらしてください。
【協賛社対談】女性の健康とキャリア―個人と企業が向き合う視点
正しい知識届けチャレンジ支える
笹川 いま、女性の健康課題を企業や社会全体で考える必要があるのはなぜですか。

森田 女性の健康課題は単なる個人の悩みや不調ではなく、キャリア形成や働き方に大きく影響します。女性は思春期から更年期までの間、月経、妊娠、出産など様々な体の変化が起こり、そのほとんどがキャリア形成のタイミングと重なります。しかし日本では不調を我慢する傾向があり、正しい理解や治療で改善できることを伝えていく必要があります。
笹川 ギアを上げて働きたいのに、体がついてこないという話はよく耳にします。つらいのを我慢することが当たり前になっている女性も多いですね。
森田 当社は女性医療を中心に事業を展開し、日本とタイに拠点を持つ製薬会社で、社員の半数以上が女性です。過去の社内調査では、月経痛や更年期症状がある社員は7割に上り、仕事に影響がある社員も半数を超えていました。女性医療に携わる企業であっても、現実には多くの社員が不調を抱えている。その事実を重く受け止めました。
笹川 私自身、女性特有の不調があっても「別に病気でもないし……」と思ったことが何度かありました。
森田 知識を得て、ぜひ産婦人科に相談していただきたいと思います。当社では先ほどの調査後にプロジェクトを立ち上げ、社員の声を参考に医療費補助などの制度を整えました。乳がんや子宮がん検診に加え、月経困難症や更年期障害に関する薬の費用を補助しています。また、社員が女性の健康課題を正しく理解する機会も大切にしています。
笹川 長く勤めようと思ったとき、そうしたケアがある会社なら大きな安心感につながりますね。一方で、昇進や転職のタイミングとライフイベントや不調が重なり、悩む方も多くおられます。
森田 だからこそ、企業として女性が安心して働き続けられる環境を整えることに加え、私たち製薬会社が疾患や治療に関する正しい知識を社会に届けていく役割は重要だと考えています。こうした取り組みが、女性がキャリアを諦めることなく、前向きにチャレンジできる社会につながっていくのではないでしょうか。
SNSでも随時情報を更新中 日本産科婦人科学会 公式Instagram
日本産科婦人科学会は産婦人科についての情報発信を行う公式Instagramアカウントを開設しています。一般の皆様へ正しい情報を発信してまいります。
https://www.instagram.com/jsogkoho_citizen/
◇ ◇ ◇
日経チャンネルでアーカイブ配信中 視聴はこちらから
セミナー
Seminar「日経BizGateイベントガイド」では、
企業が主催する法人向け無料イベント・セミナー情報をご紹介しています。








































