「◯◯線直通」と表示された電車に乗り、目的地まで一気にたどり着く「直通運転」は、近ごろでは当たり前の光景になっている。だが、鉄道会社の多大な工夫と努力の上に成り立っていることを知っているだろうか。
本書『鉄道 直通運転 探究読本』は、複数の路線、鉄道会社をまたいで列車を運行する直通運転をテーマにしている。直通運転の仕組みや意義、各地の運転状況、将来の展望などについて、具体的な路線や鉄道会社を挙げて説明する。首都圏・関西圏を中心に北海道から九州までのトピックを網羅しており、旅行気分も味わえそうだ。
著者の新田浩之氏は関西の鉄道をはじめ、中欧・東欧・ロシアの鉄道旅行、歴史について執筆するライター。
最大のメリットは混雑回避
まずは基本的な知識を押さえたい。本書によれば、直通運転には2種類ある。2社以上の鉄道業者がお互いの列車を相手方の路線に乗り入れている「相互直通運転」と、一方的に相手方の路線へ乗り入れる「片乗り入れ」だ。都市圏では、相互直通運転が積極的に行われている。片乗り入れは少数派で、例えば、小田急電鉄と小田急箱根(旧・箱根登山鉄道)の関係が当てはまるという。
相互直通運転を実施するには、線路幅や車両サイズの統一が必須だ。だが日本の鉄道では、1067ミリの狭軌、1435ミリの標準軌など複数の線路幅が存在する。車両のサイズも調整しないと他社線のホームとのあいだに隙間ができてしまう。
さらに、乗り入れ相手の会社に支払う「車両使用料」の問題もある。この料金の調整方法が見るからに複雑で、鉄道会社の苦労がしのばれる。異なる2社を結ぶ直通運転は、数々のハードルを越えた先に成立しているのだ。
大変なのに直通運転を行うのはなぜか。利用者にメリットが大きいからだ。所要時間は短縮され、乗り換えのために駅から駅へと移動する労力も不要になる。加えて「混雑回避」の利点も大きい。関西に住む著者の実体験によると、朝ラッシュ時の大阪梅田駅はすさまじい混雑で、乗り換え時に大変疲弊するそうだ。混雑によるストレスを避けられるだけでも直通運転の意義は大きいと述べる。大都市圏で電車通勤するビジネスパーソンなら共感するだろう。

遅延の影響を減らす各社の努力
一方、直通運転による最大のデメリットは、ある路線の遅れが次々と波及してしまうことだ。埼玉の区間で発生した遅れが、遠く離れた横浜の区間に及ぶことも珍しくない。路線がつながっているのだから仕方ないが、鉄道会社も手をこまぬいているわけではない。
鉄道会社は、他社線に乗り入れずに折り返す列車を繰り上げ走行するなどして遅延をカバーしている。事前に代替のダイヤを作成しておき、いざとなれば直通運転を取りやめることもあるという。鉄道各社の陰の努力を知っておけば、遅延時のイライラが少しは治まるかもしれない。
近年は「直通運転のせいで遅延が増えた」といった不満の声も多いという。だが、本書は今や当たり前となった恩恵にも目を向けようと促す。普段の通勤や移動について、少し見方を変えてみたい。
情報工場エディター。11万人超のビジネスパーソンに良質な「ひらめき」を提供する書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」編集部のエディター。

鉄道 直通運転 探究読本
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