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進む金融のAI実装 欠かせぬ社会基盤に

FIN/SUM(フィンサム)2026 ブロックチェーンの信頼性 新たな経済圏を創出

フィンテックサミット(フィンサム)

目次

日本経済新聞社と金融庁は2026年3月3〜6日、金融とIT(情報技術)が融合したフィンテックをテーマに議論する総合イベントFIN/SUM(フィンサム)2026を都内で開催した。10回目の今回は、生成AI(人工知能)などの先端技術を活用する事業者が、官・学の有識者を交え、実装レベルの深い議論を展開。自律的に動くAIエージェントとブロックチェーン(分散型台帳)を融合させたビジネスモデルやオンチェーン決済などが普及した近未来の姿が鮮明になった。

注)登壇者の肩書は開催日(2026年3月3〜6日)当時のものです

パネルディスカッション 成長投資、増やす仕組みを

磯和 啓雄氏 三井住友フィナンシャルグループ 執行役専務 グループCDIO
上ノ山 信宏氏 みずほフィナンシャルグループ 執行役常務 グループCDO
山本 忠司氏 三菱UFJフィナンシャル・グループ 執行役常務 リテール・デジタル事業本部長 兼 グループCDTO
島崎 征夫氏 金融庁 総合政策局 参事官
モデレーター:和田 安有夢氏 ベイカレント 執行役員
(右から)磯和 啓雄氏、上ノ山 信宏氏、山本 忠司氏、島崎 征夫氏、和田 安有夢氏

AIなどの新技術を活用した産業育成を今後どう進展させていくべきか。冒頭、和田氏は「国内機関投資家に約900兆円の投資余力がある一方で成長投資は十分ではない」と問題提起。磯和氏は米中では起業家の発掘・育成支援のエコシステムが確立されているのに対し、日本は事業化へつなぐ仕組みが不足していると指摘した。上ノ山氏は「世界に出る日本企業への成長投資を増やし、リスクマネー循環の拡大を図るべきだ」と述べた。山本氏は「専門人材の育成や長期・巨額案件の予見性向上、関係者間の利害調整、資金供給手段の多様化」を求めるとともに、失敗の許容度が低く、企業や行政がリスクを取りにくい日本の文化的背景にも言及した。島崎氏は「地方の大学には高度なシーズが存在する」と指摘し、金融機関が地方・海外・大学・スタートアップをつなぐ触媒になる重要性を強調した。

投資判断やリスク分析に資する業界横断プラットフォーム構築への期待もある。その是非について磯和氏は「アーキテクチャーが変わること自体、意識を変えるきっかけになる」。上ノ山氏は「システムだけでは全部は解決できず、起業家に寄り添う投資家の存在は変わらず重要だ」と述べた。山本氏は「データは競争力の源泉であり安易に共有できない。インセンティブ設計が肝になる」。島崎氏は「利用者保護と市場公正性を維持しながら、イノベーションを阻害しない柔軟な規制姿勢を維持する」とし、AIエージェントの台頭も見据えた制度設計に取り組む意欲も示した。

パネルディスカッション データ起点の金融DX、攻めと守り

益子 治氏 三井住友銀行 執行役員 トランザクション・ビジネス本部 決済企画部長
清水 一寿氏 NEC Corporate SVP 兼 金融ソリューション事業部門長
中田 俊彦氏 NEC コーポレートITシステム部門長 兼 経営システム統括部長
モデレーター:小瀧 麻理子 日本経済新聞社 編集 金融・市場ユニット 金融グループデスク
(右から)益子 治氏、清水 一寿氏、中田 俊彦氏

三井住友銀行(SMBC)とNECがAIとデータ活用による金融業務変革の実践例を報告。益子氏によると、SMBCの外国送金業務では月間約8万件の受電・架電に3000時間超を費やしていた。そこでNECと共同で、システムの記録情報(ログ)を基に業務プロセスを可視化する「プロセスマイニング」を適用。「従来は経験則や主観的な判断で課題を認識していたのに対して、データから時間を具体的に可視化し、施策選定の際に定量的判断ができるようになった」と利点を述べた。この手法を、どんな取引が増えているかの分析や、価格戦略の検討に応用することも視野に入れているという。

中田氏は「NECは自社を『クライアントゼロ(0番目の顧客)』と位置づけ、変革を率先して実施しノウハウをためている」。具体的に全社で100種類近くのダッシュボードを運用するデータドリブン経営を進めた結果、受注前プロセスの標準化を通じて粗利率が5.5ポイント改善した実績や、AIエージェント活用の実績と構想を明かした。清水氏は「攻め」として融資稟議(りんぎ)書や提案書の作成といったコア業務へのAIエージェント導入のノウハウを紹介した。「守り」としては、世界の「標的型メール」攻撃に占める日本語の偽メールの割合が数年で4%から80%まで急増した現状に触れ、1機関だけでの対応には限界があることを指摘。「金融機関が共同で利用できるセキュリティーの枠組みを、協調領域として推進している」と述べた。

対談 自由と安全のバランス肝要

伊田 弥樹氏 GenerativeX 取締役
上田 雄登氏 GenerativeX 取締役 CAIO/共同創業者
(右から)伊田 弥樹氏、上田 雄登氏

言葉の指示だけでAIがプログラムを設計・実装する「コーディングエージェント」を、ビジネス部門の業務にも適用する動きが広がっている。伊田氏は、領収書の自動分類やIR資料の要約といった事務作業を、事前のプログラム開発なしに実務水準でこなす模様を実演。上田氏は「オフィス業務の9割がコーディングエージェントで対応可能になりつつある」とし、専用アプリケーションの役割が問い直されているとの認識を示した。

活用の留意点として、伊田氏は企業固有のルールや手順を「言語化する力が成果を左右する」と述べるとともに、「何でもできるAIエージェント」のリスクにも注意喚起した。上田氏はデータ漏洩や誤作動を引き起こす命令文(プロンプトインジェクション)によって損害が生じた事例に触れて「自由度と安全性のバランスが肝要だ」とした。

対談 データの管理・活用を見直し

羽根 俊宏氏 SAS Institute Japan ストラテジック エンタープライズ金融本部 本部長
緒方 兼太郎氏 EYストラテジー・アンド・コンサルティング 金融コンサルティングパートナー
(右から)羽根 俊宏氏、緒方 兼太郎氏

羽根氏は、金融機関を取り巻く環境変化に即応可能なリスク管理の必要性に触れ、SASで取り組むAIによるストレステストを例に挙げた。効果的な実現方法として、業務部門のデータ資産を生かしたガバナンス強化と、AIによるデータ活用を両立した仕組み作りを提唱し、データやAIの管理を支援していく意欲を語った。緒方氏は、アジャイルなリスク管理とレジリエンスがより重要になる時代にAI活用に伴うデータ自体のリスクが新たな論点として注視されていると報告。戦略・財務・人材・テクノロジーなどの領域を横断する全社レジリエンスの構築が急務と訴えた。

トークン化預金発行も検討 植田 和男氏 

日本銀行 総裁

植田 和男氏

日本銀行は、サンドボックスプロジェクトとしてブロックチェーン上で日銀当座預金による決済を実現する仕組みを技術的に検証していく。外部有識者の協力も得て実験を発展させ、既存システムとの連携や銀行間・証券決済への活用も探求する。国際共同実験では中央銀行マネーをトークン化預金として発行する仕組みも検討中だ。一般利用型中央銀行デジタル通貨(CBDC)の実験も継続する。

DXからAXへ AIを中心に据えた企業経営 二見 通氏 

アフラック生命保険 取締役専務執行役員・CDIO(チーフ・デジタル・インフォメーション・オフィサー)

二見 通氏

アフラックは、AX(AIトランスフォーメーション)を掲げ、AIを企業の中核能力に位置付けてビジネスの再創造に取り組んでいる。保険募集人の営業活動、保険金支払いやコールセンターなどの業務において、人と協働するAIエージェントの構築を進めている。また、健康管理や介護などお客様の様々なニーズに対して最適な支援を提供するため、AIプラットフォームの構築も進めている。

AI×ブロックチェーンで先駆 板屋 篤氏 

大和証券グループ本社 執行役員 大和証券 常務取締役

板屋 篤氏

「貯蓄から投資」の潮流のなか、生成AIとブロックチェーンの双方で先駆的な取り組みを進めている。生成AIではAIオペレーターや生成AIチャットなどお客様向けサービスを順次リリース。ポートフォリオ提案に特化したプラットフォーム構築も進める。ブロックチェーン領域では、セキュリティートークンの提供が拡大、ステーブルコインでの決済など実証実験も多く進めている。

パネルディスカッション 「AI筋トレ」首脳陣が率先を

津坂 美樹氏 日本マイクロソフト 代表取締役社長
荒濤 大介氏 日本マイクロソフト 執行役員常務 金融サービス事業本部長
池田 和矢氏 三井住友フィナンシャルグループ 専務執行役員 トランザクション・ビジネス本部担当、デジタル戦略部副担当役員、グローバル事業部門副事業部門長
ラジェーンドラ・マヨラン氏 三井住友フィナンシャルグループ デジタル戦略部 AIトランスフォーメーション推進室長
(右から)津坂 美樹氏、荒濤 大介氏
(右から)池田 和矢氏、ラジェーンドラ・マヨラン氏

津坂氏は、AI変革の成功要因は「アルゴリズムやデータ基盤ではなく、人とプロセスが8割」と指摘。経営陣自らがAIを使う企業はスピードが速いとした。AIを後付けではなく、業務プロセスに含め、全体を見直す重要性も強調した。

荒濤氏がファシリテーターを務めた討論では、池田氏が導入時のカルチャー変革の重要性に触れ、全従業員のAI活用度の可視化や、各部門にAI活用の「チャンピオン」を育てる施策を紹介。経営陣が率先して「AIを日ごろから使う『AI筋トレ』をする」重要性も述べた。マヨラン氏は、テクノロジーパートナーに向け「ITだけでなくガバナンスやカルチャーまで含めた包括的な伴走を」と要望した。

FINX JCrypto 陳 海騰氏 

FINX JCrypto 代表取締役社長

陳 海騰氏

暗号資産市場でも法人・機関投資家の存在感が増している。株主優待へのビットコイン活用や、トークンを用いた不動産・宿泊権の小口化などユースケースも広がる。さらに、AIエージェント同士の取引が広がれば、暗号資産が決済手段として使われる場面も増えるだろう。

*本講演の詳細版はこちらでお読みいただけます。

 

ServiceNow Japan 中原 新氏 

ServiceNow Japan Vice President, Chief Transformation Officer

中原 新氏

AIから確かなビジネス価値を実現するには、サイロ化したプロセスと分断されたデータをつなぎ、AIがエンドツーエンドで業務を完遂できる環境が必要。ServiceNowはデータ・AI・ワークフロー・セキュリティーを統合し、実行力のある形でAIを実装するプラットフォームだ。

 

Helpfeel 矢野 紘平氏 

Helpfeel アカウントエグゼクティブ部 ジェネラルマネージャー

矢野 紘平氏

生成AIの業務活用には、業務や自社の知識を整備するのが不可欠だ。Helpfeelは独自の予測検索技術を基盤に、問い合わせ内容をトピックごとに分割、グループ化して、ナレッジの改善優先度を可視化。AIが正しく機能するための知識基盤づくりを支援する。

 

ビデオ登壇 柔軟さと利用者保護を両立 片山 さつき氏 

財務大臣内閣府特命担当大臣(金融)

片山 さつき氏

日本では、暗号資産やステーブルコインの制度整備を世界に先駆けて進めてきた。国内外で実用化に向けた様々な取り組みが進んでいるが、新たな技術をどう社会経済の効率化などにつなげていくかという視点が重要だ。技術が進化するなかで可能性を狭めない柔軟さと利用者保護の両立が重要であり、国際的な動向を踏まえながら、日本にふさわしい形でデジタル金融の発展を後押ししていく。

ビジネスアイデアを実践するフェーズに 伊藤 豊氏 

金融庁 長官

伊藤 豊氏

ブロックチェーンやAIなどの新技術が注目されている。これらのビジネスでの活用を具体化していくことが重要だ。決済高度化プロジェクト「PIP」では、ブロックチェーン技術を活用した決済高度化に関する具体的な取り組みを後押ししている。AI活用でも、具体的なプラクティスなどを「AIディスカッションペーパー」改訂版に記載した。AI活用の実践に役立ててほしい。

金融知識ゼロでも資産形成 北尾 吉孝氏

SBIホールディングス 代表取締役会長兼社長

北尾 吉孝氏

AIエージェントとオンチェーン化は金融業界に大転換をもたらす2大革命だ。SBIグループはグループ全体をAI起点の組織へ移行させるとともに、各種資産のオンチェーン化を推進する。Ridge-iとの協業で金融業務の完全AIエージェント化を目指し、金融知識が乏しくても資産形成の提案を受けられる「金融AIコンシェルジュ」を開発中。これらの施策により「金融知識ゼロでも最適な資産形成ができる」という顧客体験を実現することで、競争優位に立つ。スターテイルグループとは円建てステーブルコイン「JPYSC」を共同開発する。コンテンツ・メディア領域でも1000億円規模のファンドを組成し、「SBIネオメディア生態系」構築に挑む。

パネルディスカッション デジタル金融で事業創出

[前半]
北山 朝也氏 AlpacaTech 取締役 兼 ソリューション事業部 部長
今城 健太郎氏 Preferred Networks エンジニア
[後半]
牧野 剛氏 Sales Director, Fireblocks Japan
ル イン氏 Head of APAC, Solana Foundation
[前半・後半とも]
モデレーター:和歌 伸介氏 三井物産 コーポレートディベロップメント本部 参与 デジタル金融チームリーダー
(右から)北山 朝也氏、今城 健太郎氏、牧野 剛氏
(右から)ル イン氏、和歌 伸介氏

デジタル金融の事業創出に注力する三井物産が、パートナー企業を交えて事業の先端を議論した。前半は貴金属やエネルギーなどコモディティーデリバティブ(金融派生商品)の売買判断をAIに担わせるプロジェクトがテーマ。三井物産の知見を取り込んだ高精度の基盤モデルを構築したうえで、グーグル運営の世界最大のデータサイエンスコンペ「カグル」を通じて世界中から優秀なアルゴリズムを募集する日本では珍しい取り組みとなった。開発に携わる今城氏は「集合知を集めてモデルを継続的に進化させている。参加者にとっても収益機会が得られる」と説明した。北山氏は今回のコンペには1万人超が参加したとし、「内製、コラボレーション、グローバルプラットフォームの3つを組み込むことでビジネス創出を加速できる」と実感を語った。

後半では、三井物産が2022年から展開するデジタルアセット事業の関係者が登壇した。和歌氏は金連動の暗号資産「ジパングコイン」や不動産セキュリティートークンを個人投資家に提供する「オルタナ」など、元来強みがある領域にデジタルを組み合わせた展開を紹介した。オープンソースのブロックチェーン基盤を運営するル氏は、デジタルアセットの普及には参加者が増えるほど利点が高まる「ネットワーク効果」が重要とし、その拡大のために「各国の規制当局との連携が不可欠だ」と強調した。牧野氏は日本企業がデジタルアセット業界で競争力を持つにはPOC(概念実証)にとどまらず本番環境での統合が必要と主張。「日本は規制面で先行しており、グローバルな流動性ネットワークとの接続を積極的に進めるべきだ」と述べた。

パネルディスカッション デジタル債権譲渡の基盤整備を急げ

池田 眞朗氏 慶応義塾大学 名誉教授 武蔵野大学名誉教授
平 将明氏 衆議院議員
矢端 謙介氏 日本政策投資銀行 執行役員 情報企画部長
宿輪 純一氏 帝京大学 経済学部 教授・博士(経済学) 社会貢献公開講義 宿輪ゼミ 代表
小倉 隆志氏 リーテックス 代表取締役社長 武蔵野大学 客員教授
モデレーター:関口 慶太 日本経済新聞社 編集 Nikkei Financial 副編集長
(右から)池田 眞朗氏、平 将明氏、矢端 謙介氏
(右から)宿輪 純一氏、小倉 隆志氏

日本企業の大半を占める中小企業の資金繰りのスマート化は経済の底上げにつながる重要な政策課題。過去の決算書依存ではなく、現時点の商取引に基づく商流ファイナンスの実現に向けて、電子商取引データへのトラスト(信頼証明)付与の意義を議論した。

小倉氏は文書などへの電子署名自体をブロックチェーン化する独自技術「ONEデジ」を紹介。あらゆるデータ形式に対して従量課金なしの低コストでトラストを付与できることで「商流データを証跡として広く融資に活用できる」と強調した。

ビデオ出演した平氏は、中小企業経営者だった経験を基に、資金調達の困難さと売掛金ファイナンスの必要性を説明。「債権譲渡の確定日付に関するアナログ時代の規制が残っている」としてデジタル改革に意欲を示した。池田氏も債権譲渡研究50年の経験から、日本の債権譲渡法制が世界の周回遅れになっていることを述べ、確定日付関係のアナログ手続きの課題を詳細に分析した。

矢端氏は金融機関の実感として資金需要のタイミングで迅速に応える重要性を強調し「デジタルのトラスト技術が融資判断に使えれば、資金調達ニーズに応えやすくなる」と期待を示した。宿輪氏も「商取引データのトラストが担保として認められれば銀行の融資拡大に直結し、中小企業の資金調達の選択肢が広がる」と明言。「デジタル証明研究会」の下に新たに設置された「商取引のトラストと金融」研究部会で、大手EDIに実際にデータのトラストを付与して、4月以降実証に取り組んでいく計画を示した。

パネルディスカッション コスト削減と自動化を促進

尾島 司氏 イオンフィナンシャルサービス 取締役 イオン銀行 取締役
島崎 征夫氏 金融庁 総合政策局 参事官
山崎 琢矢氏 経済産業省 中小企業庁 経営支援部長
ブルーノ・バタビア氏 Valor Capital Group 次世代技術部門 ディレクター
モデレーター:平子 惠生氏 ディーカレットDCP 取締役 副社長執行役員 COO
(右から)尾島 司氏、島崎 征夫氏、山崎 琢矢氏
(右から)ブルーノ・バタビア氏、平子 惠生氏

トークン化預金がもたらす小売りと金融の変革について、海外の先行事例も交えて討論した。バタビア氏はブラジルの即時決済基盤「Pix」が1日3億回超の取引を処理する、世界最大規模のデジタル公共インフラに成長した実績を紹介。「全ての銀行やフィンテック事業者が接続する官民連携の枠組みが成功のカギになった」と強調した。

尾島氏は小売りの視点として、AIが電子商取引(EC)の顧客接点を置き換えつつあることに危機感を表明。サプライチェーンの中小企業とデータ連携したうえでトークン化預金による決済を実現すればコストも削減できるとし、小売りの立場から今後こうした実証実験に取り組みたい考えを示した。島崎氏は金融庁の立場から、ブロックチェーン技術の特徴である改ざんの困難性や透明性、あらかじめ定めた条件を満たした場合に取引が自動執行される「プログラマビリティ」によりコスト削減と自動化が促進されるとし、トークン化預金やステーブルコインといったオンチェーン決済手段が重要な選択肢であるとの認識を述べた。

山崎氏は、迅速に動ける中小企業こそトークン化やAI活用を迅速に進められると論じ、経済産業省の「100億企業創出事業」など、成長志向の中小企業への後押し施策にも触れた。平子氏は、請求書発行から資金回収、仕訳記帳までをブロックチェーンとAIで自動化する構想を語り、日本の「オンチェーンエコノミー」推進への意欲を示した。

パネルディスカッション 事業規模により役割分担進む

野呂 崇享氏 三菱UFJ銀行 執行役員 法人デジタル戦略部長 兼 デジタル戦略統括部部長
落合 修平氏 トヨタブロックチェーンラボ ゼネラルマネージャー
ザック・チェスナット氏 Kinexys エグゼクティブ・ディレクター・グローバル事業開発責任者
モデレーター:三輪 純平氏 国立リベラルアーツ 代表取締役 フィンテック協会 常務理事
(右から)野呂 崇享氏、落合 修平氏
(右から)ザック・チェスナット氏、三輪 純平氏

デジタル通貨が出そろってきたなか、三輪氏が「ステーブルコインとトークン化預金、最終的に優位に立つのはどちらか」と問いかけて議論が始まった。チェスナット氏の回答は共存。「小規模・個人向けにはステーブルコインが、大規模・企業向けにはトークン化預金が適している」とし、使い分けながら24時間365日動く決済の将来像を提示した。野呂氏も中長期では役割分担が進むとの見立て。「ステーブルコインが小口決済や周辺サービスを担い、トークン化預金は企業間決済などの基盤を支える。MUFGは銀行、信託、証券の連携でこの変化に備える」と語った。落合氏は車の販売後のサービスで継続収益を生む事業構想を語り、「権利や資産の管理、決済をデジタル上で一体的に扱える点で、オンチェーン決済の拡大は親和性が大きい」とした。

パネルディスカッション 制御機能をどう組み込むか

吉田 晴彦氏 三菱UFJ銀行 リスク統括部 副部長
鳥居 秀行氏 ニューメリカルテクノロジーズ 代表取締役社長 Numerical Technologies Pte Ltd (Singapore) Managing Director
キアンゾン・シアオ氏 Numerical Technologies Pte. Ltd. (Singapore) COO 兼 CTO
(右から)吉田 晴彦氏、鳥居 秀行氏、キアンゾン・シアオ氏

銀行の純金利利息収益(NII)マネジメントにおけるAI活用を討論。銀行の実務視点として吉田氏は、利上げ一つとっても金利や他市場との整合性まで詰めるために多大な時間を要していると明かし「整合的なシナリオの自動生成、将来の資産・負債構成の逆算、前月比の異常値検知などにAIの活用余地がある」と述べた。

業務を執行できるAIエージェントが不可欠になるが、実装側の鳥居氏は「やらせることよりも、やらせないことが難しい」と制御の困難さを指摘。透明性と監査可能性を備えた「グラスボックス」設計の必要性を訴えた。シアオ氏はハルシネーション(幻覚)防止策として、データ検証、シナリオ生成、報告書作成の各段階に人間のチェックを組み込む設計が有効だと提案した。

規律整備、問われる局面 半沢 淳一氏 

三菱UFJ銀行 取締役頭取執行役員 全国銀行協会会長

半沢 淳一氏

AIが実装段階に入り金融機関の中核業務に広がる。ガバナンスやルールの整備が重要な局面だ。活用の過度な制約にならないよう配慮しつつ、情報管理、著作権侵害、ハルシネーション(幻覚)を防ぐ枠組みを整えていく必要がある。MUFGグループとしても、AIを実装した業務を現在の100件超から26年度までに250件超へ広げるなか、実装の広がりに応じた規律整備が問われている。

価値をいかに届けるか 上ノ山 信宏氏 

みずほフィナンシャルグループ 執行役常務 グループCDO

上ノ山 信宏氏

金融の価値は「価値創出×価値提供」。すなわち金融サービスの本質と、届け方の掛け算だ。伝統的金融機関は前者は備えているが、後者の届け方を、AIも使いながら磨く必要がある。当社は人とAIが補完し合う業務プロセスへの再設計「オペレーショナルモデル改革」を推進し、資産形成の相談相手など、顧客と伴走するAIも構想している。未来は不確実ゆえ、試行錯誤しながら前進し続ける。

現場を訪ね共創へ発想転換 磯和 啓雄氏 

三井住友フィナンシャルグループ 執行役専務 グループCDIO

磯和 啓雄氏

私自身大企業・中堅企業とスタートアップそれぞれ年間100社以上を訪問し、新規事業の取り組みを急速に拡大させてきた。そのなかで、大企業・中堅企業とスタートアップ双方を同じ人間が見ることが重要であることがわかった。個別の支援の蓄積を「線」から「面」に変える共創プラットフォームをつくり、日本企業のカルチャーを含めた変革を先導していく。

 

ガバナンスが極めて重要に アナンド・ラマチャンドラン氏 

オラクルフィナンシャルサービス 副社長 グローバル バンキング ソリューション プラクティス

アナンド・ラマチャンドラン氏

AI時代の金融エコシステムは、支出分析、商品推薦、パーソナライズ、与信判定、本人確認など複数のAIエージェントなどが連携し、従来は数時間かかっていた作業が数分で完了するほどの効率化が期待される。リテール、法人向け問わず、より多くの顧客価値が提供できるが、銀行の信頼を支える基本的な管理要素として、データのセキュリティーの維持や監視が極めて重要になる。

組織の進化、AIに合わせて 長﨑 忠雄氏 

OpenAI Japan 代表執行役社長

長﨑 忠雄氏

AIエージェントを大企業が活用するための統合基盤「フロンティア」はエージェント実行、業務文脈の理解、セキュリティー対応を一体で支援する。「コーデックス」はコード生成から開発工程を支援するAIエージェントで、米金融大手のレガシー化した基幹システム900万行のコード刷新を28万時間削減した。組織自体がAIに合わせて進化すべきであり、変化に早く適応した企業が勝つ。

パネルディスカッション 次世代インフラ、段階的に移行

白石 直樹氏 三井住友フィナンシャルグループ デジタルソリューション本部執行役員 デジタルソリューション本部長
田中 徹氏 MILIZE 代表取締役社長
稲葉 大明氏 日本ブロックチェーン基盤 代表取締役社長 Japan Open Chain ファウンダー
小森 卓郎氏 衆議院議員 自由民主党デジタル社会推進本部 元AIの進化と実装に関するPT事務局長
モデレーター:小川 恵子氏 EYストラテジー・アンド・コンサルティング 金融サービス グローバルアカウンツリーダー パートナー 公認会計士
(右から)白石 直樹氏、田中 徹氏、稲葉 大明氏
(右から)小森 卓郎氏、小川 恵子氏

AIとブロックチェーンによる次世代型金融インフラをテーマに討論した。金融サービスがどう変化し、社会実装に向けた基盤整備をどう進めるかについて意見を交わした。

白石氏は、法人金融で優秀な担当者個人が持っていた暗黙知を、AIが共有可能な形式知に変えて水平展開する世界を予測。「受発注や請求、支払いといった業務フローの中に金融サービスが組み込まれ、企業が別途資金調達を意識しなくても必要な資金が手当てされる形に近づく」と展望した。

今後、AIエージェント同士による取引が増加していくのは確実だ。田中氏はその前提として「証跡や検証可能性を担保するブロックチェーンとAIを、セットで成長させるべきだ」と強調。日本人はロボットに親和的であり、良いモデルケースがあれば広く受け入れられるとの考えを述べた。

稲葉氏は、法定通貨建てのステーブルコインによって、デジタル通貨の社会実装が進むと展望。「インターネットが情報の動きをプログラムしたように、ステーブルコインはお金の動きをプログラムする。お金の仕組みそのものの変化と捉えるべきだ」と訴えた。

ただ、移行は一足飛びにはならない。白石氏は「既存の法定通貨システムとブロックチェーン基盤のデジタルアセットが併存する段階が来る」との見方を示した。決済インフラは業界横断で整備し、アプリケーションは大手企業とスタートアップが連携して競争力のあるサービスを育てるのが「日本なりの戦い方」とした。

小森氏は、「挑戦しないこと自体がリスク。挑戦しない金融に未来はない、という段階にある」とした上で、次世代金融インフラの利用を広げるには事業者が見通しを持てる「予見可能性」を高めることが重要だと指摘した。リスク対応と挑戦を促すバランスを取りながら、「アジャイルに制度を変えていく」考えも示した。

将来像を巡っては「利用者に煩雑な入力や判断を強いるのではなく、AIが裏側で自然に支える金融が望ましい」(田中氏)、「便利で滑らかな仕組みは、気が付けば使われるようになる」(稲葉氏)との発言もあった。

モデレーターの小川氏は各氏の発言を受けて、これから安心・安全を確保しながら成長をどう促すか、動きが速い国際情勢のなかで金融インフラをどう築くか、技術進歩に制度や実装がどう追いつくかが課題になると整理。「発展性ある経済圏をつくるには、官民で理解を深めながら議論を重ねていく必要がある」と述べた。

*本パネルディスカッションの詳細版はこちらでお読みいただけます。

対談 衛星データ、金融の戦略的資産に

ベーレント・デ・ヨング氏 Planet Global Insurance & Finance lead
生田目 雅史氏 東京海上ホールディングス 専務執行役員 グループデジタル戦略総括(2026年3月当時)
(右から)ベーレント・デ・ヨング氏、生田目 雅史氏

東京海上ホールディングスの生田目氏が、人工衛星から地球のデータを収集するプラネットのデ・ヨング氏をゲストに招き、衛星テクノロジーによる防災・減災と保険の融合について対談した。生田目氏は冒頭、東京海上の呼び掛けで4年前に発足した防災コンソーシアムでの活動や、建設エンジニアリングのID&Eを経営統合して世界160カ国で災害の事前対策を展開できる体制を整えたことを報告。デ・ヨング氏は約140基の人工衛星で地球全体を日次撮影するプラネットの技術を紹介。ロサンゼルス山火事やミャンマー大地震では衛星画像にAIの分析レイヤーを重ね「撮影から約1日で建物の全壊・半壊を評価できた」と述べた。

生田目氏は気候変動の激化について「金融サービス全体で気候変動の影響を無視できなくなっている」と指摘し、衛星データの有効活用に期待感を示した。デ・ヨング氏は海外金融機関の事例として、洪水や山火事前後の映像を損害保険業務に活用したり、リアルタイムで衛星データを提供したりする取り組みを紹介し「保険適用の検討や、防災にも役立つ」と強調した。生田目氏は「保険会社は歴史的に災害発生後に保険金を届けるのが役割だったが、予防と保険を組み合わせることで、お客さまの安心・安全によりつながる」と語った。

デ・ヨング氏は今後5年で地球上の変化をほぼリアルタイムで定量化できるようになるとの見通しを示しつつ、「衛星データは金融機関にとって戦略的な資産になる」と語った。生田目氏は衛星データを、気象データなどに基づき保険金を即時支払いする「パラメトリック保険」に活用していくことに言及。テクノロジーを起点とした保険の再定義に意欲を示した。

パネルディスカッション 「ラストワンマイル」で遅延、決済高度化を

池田 和矢氏 三井住友フィナンシャルグループ 専務執行役員 トランザクション・ビジネス本部担当、デジタル戦略部副担当役員、グローバル事業部門副事業部門長
ロジャー・バークハート氏 ブロードリッジ AI責任者 兼 最高技術責任者(CTO)
アスカリ・ブラウン氏 ACI Worldwide APAC ソリューションコンサルティング責任者
ケヴィン・ウォン氏 スイフト チーフエグゼクティブ アジアパシフィック
モデレーター:牛田 遼介氏 金融庁 総合政策局国際室 国際企画調整官
(右から)池田 和矢氏、ロジャー・バークハート氏、アスカリ・ブラウン氏
(右から)ケヴィン・ウォン氏、牛田 遼介氏

決済の高度化とAI活用をめぐるセッションを実施。冒頭でモデレーターの牛田氏が、決済とは清算・流動性管理・不正監視など複雑なプロセスの連鎖であると整理し「利便性とともに、金融のインテグリティー(誠実さ)、顧客保護のバランスを考えていかねばならない」と規制当局の問題意識を示した。

池田氏は現状の課題として、国内決済では小額取引増加によるコスト負担が重くなっていることを挙げた。国際送金では、標準規格「ISO20022」が定められたものの、各国独自の規制に対応するため、着金側銀行で手作業確認などが生じ、送金スピード改善の障害となっていると述べた。ウォン氏はスイフトのトラフィックの75%が10分以内に着金する一方、受取銀行が資金を口座に入れる「ラストワンマイル」の遅延が多いと報告。40カ国調査では「日本の1時間以内の入金率は10%にとどまり、世界平均の45〜50%を大きく下回っている」という。

コスト負担と処理の複雑さに対し、バークハート氏は、決済の失敗予測や大量のメールの自動仕分けと回答にAIを導入し、自社のバックオフィス業務の生産性を最大50%改善した実績を紹介。一方で生成AIについては「非決定性(結果が一定にならない性質)」などの課題があり「金融業務では最終判断に人が関わることが必須だ」と強調した。ブラウン氏はソフトウエアおよびソリューションプロバイダーとして「国際標準への移行やシステムの転換、不正対応機能の刷新など、複数の技術課題に同時に対応する必要がある」と指摘。課題を段階的に解決していくアプローチが重要であるとした。

ウォン氏は「AIは強力なツールだが、その有効性は情報をどう共有できるかにかかっている」と指摘。規制やデータ保護などの懸念を超えて、不正取引などの疑わしい行動に関する情報を金融機関同士で共有していくためのイニチアチブを立ち上げたと語った。また決済システムに関しても、複数の異なる仕組みが乱立するとコストが増すとして「共有の基盤に多くの金融機関が参加し、参加者が多いほど価値が上がる『ネットワーク効果』を生み出すことが重要」とした。

パネルディスカッション 国際決済の迅速化が急務

渡邉 操氏 みずほフィナンシャルグループ、みずほ銀行 トランザクション業務部 担当部長
岸 道信氏 三井住友銀行 トランザクション・ビジネス本部、決済企画部 部長
磯村 大誠氏 NTTデータ 第三金融事業本部 e-ビジネス事業部長 部長
村上 紀年氏 三菱UFJ銀行 トランザクションバンキング部 部長
モデレーター:茅壁 慎二氏 スイフト ディレクター
(右から)渡邉 操氏、岸 道信氏、磯村 大誠氏、村上 紀年氏、茅壁 慎二氏

国際送金をより速く、見えやすく、安くするデジタル化が求められる。茅壁氏は、既存の決済インフラを生かしつつ、ルール付与やシステム連携で国内送金並みのスピードと透明性を国際決済でも実現する構想を提示した。渡邉氏は、日本では外為と内為の仕組みが分かれており、国内決済網との接続に向けた「『ラストワンマイル』が最大の課題だ」と説明。岸氏は、利用拡大には、入力項目の多い国際送金を迷わず使える画面設計が欠かせないと強調した。磯村氏は、地域金融機関ではアンチマネーロンダリング(AML)対応の負担が重いとし、共同化の必要性を訴えた。村上氏は、既存基盤の高度化と新たなデジタル基盤の接続を両面で進める必要があると述べた。

インパクトピッチ 先を見据え衝撃度競う

最終日には、社会課題の解決に向けた強い衝撃になりうるプロダクトやサービスを競う「インパクトピッチ」が行われた。未来のユニコーンへの登竜門ともいえるセッションで、フィンテックの革新的な技術と先を見据えたアイデアを各社がアピールした。

参加するスタートアップは公募し、書類審査を通過した国内外の40社を日本経済新聞本紙に掲載した。公式サイトでの読者応援投票を経て、9社がこの日の「ファイナルピッチ」に進出。それぞれ3分間のプレゼンテーションを行い、審査員との4分間の質疑応答に臨んだ。

最優秀賞にあたる日経賞に選ばれたのはサニーズ(東京・千代田)。家族間のデジタル資産の引き継ぎを安全かつスムーズに完結させる取り組みと技術が高く評価された。

三菱地所賞には、寄付を中心とした金融・データ・文化のインフラを構築するコングラント(大阪市)が選ばれた。

ソニーフィナンシャルベンチャーズ賞には、画像処理半導体(GPU)を共有するプラットフォームを、ブロックチェーンを使って実現する事業を行うジャスミーラボ(東京・港)を選出。その他、決勝に進んだのはVlightup(東京・千代田)、E9Technologies(東京・渋谷)、デジタル証券(東京・港)、EduCare(東京・中央)とシンガポールの2社、HEYMAX、SLASH VISION PTE。

全体の講評に立った松澤氏は生成AIが進化したことにより、将来の予見は難しくなっていると指摘。「例えば10年後にどんなサービスを、どんなインターフェースで扱っているかは正直想像がつかない。そうした中で、今後伸びていくスタートアップを見つけるのに頭を悩ませた」と審査を振り返った。

その上で「どの分野、マーケットに目を付けるのか。生成AIでカバーできる部分だけでなく、それ以外の、大企業とパートナーシップをつくりにいくといった泥臭さもスタートアップが伸びていくためには必要になる」と指摘した。

また、技術面ではブロックチェーンの話の中でステーブルコインという言葉が何度も出てきた点が特徴的だったと話し、「あくまでツールの一つとして使われていて、技術が浸透してきていると強く感じた」。

最後に関口氏が「インパクトという視点で選んだが、それ以外のキーワードで選べば別の企業が受賞していたとも思う」と接戦を総括した。

日経賞 サニーズ

中澤 望氏 代表取締役

中澤 望氏

保険会社で10年以上フィンテックの経験を積み起業した。デジタルサービスやアカウントがますます増えるなか、デジタル遺産の引き継ぎに関する課題はますます拡大する。家族で話し合うきっかけにもなるとうれしい。

 

三菱地所賞 コングラント

佐藤 正隆氏 代表取締役・CEO

佐藤 正隆氏

寄付をテーマとしたフィンテックとして、AIを活用して資金の流れを変え、包摂的な世界をつくっていきたい。技術力を生かしながら、日本発のユニコーン(企業価値が10億ドルを超える未上場企業)をめざす。

 

 

ソニーフィナンシャルベンチャーズ賞 ジャスミーラボ

原田 浩志氏 代表取締役

原田 浩志氏

ブロックチェーンを使いGPUを共有するプラットフォームを開発した。FIN/SUM期間中、GPUの高さが挑戦の壁になっているとの声を何度も聞いた。そうした皆さまと一緒にイノベーションを創出したい。

 

審査員講評

堺 美夫氏 三菱地所 イノベーション施設運営部 ユニットリーダー 東京科学大学 特任講師
番所 健児氏 ソニーフィナンシャルベンチャーズ 代表取締役社長  ソニーフィナンシャルグループ 執行役員 中長期投資・AI戦略推進室担当
松澤 翔太氏 Decima Fund 共同創業者 デジタル庁 エキスパート
関口 慶太 日本経済新聞社 編集 Nikkei Financial 副編集長
(右から)堺 美夫氏、番所 健児氏、松澤 翔太氏

全体講評に立った松澤氏は、審査が接戦となったなか「社会課題へのアプローチで伸びそうなスタートアップを選定した」と授賞のポイントを話した。番所氏はジャスミーラボのGPUの遊休資産活用という事業を「AirbnbのGPUインフラ版。着眼点が面白く、市場性は期待できる」と高く評価。堺氏は、コングラントは「寄付文化は日米でまだ差があるなかで、革新的なサービスになる可能性がある」と語り、サステナビリティーの観点でも共感できるとした。

日経賞を獲得したサニーズについて関口氏は、デジタル遺産を守るサービスを具体的にどう磨けるかの議論が、審査員の間で盛り上がったと明かした。サービスにユーザーがつながる契機や、金融サービスとしての規約のつくり込みといった課題を指摘しつつ「改善点が見えているのも伸びしろだ」と成長性に期待を述べた。さらにフィンテック取材の経験を振り返って「10年で多くのフィンテック企業が羽ばたいた」と話し、各社の飛躍にエールを送った。

対談 さらに広がるエンタメ活用

渡邉 尚史氏 ソニー銀行 専務取締役 BlockBloom 代表取締役
金森 伽野氏 ソニー銀行 DX事業企画部長 BlockBloom取締役
(右から)渡邉 尚史氏、金森 伽野氏

ブロックチェーンなどの技術を使い、エンターテインメントと金融を融合させる取り組みをソニー銀行の2氏が論じた。金森氏はNFTを活用したアーティストのプロモーションや、盆栽アート作品の3Dデータのデジタル所有事例などを紹介。「イベント参加の証明をブロックチェーンで付与しても、位置情報などは秘匿化して安心・安全に楽しめる設計にする」と述べた。渡邉氏は音楽カタログへの投資を裏付けとしたデジタル証券の組成や、ステーブルコイン活用にむけた提携を報告。「エンタメでの利用シーンはまだ広がる」と意気込んだ。

対談 顧客への責任を果たす

粟津 敏典氏 東京海上ホールディングス IT 企画部 シニア・アーキテクト
松葉 威人氏 Citadel AI Chief Operating Officer
(右から)粟津 敏典氏、松葉 威人氏

AI実装のリスク管理と利便性の両立について対談。粟津氏は、AIアプリケーションのリスク評価ツール「シタデルレンズ」の導入により、ハルシネーションや不適切な出力の発生確率を定量的に可視化できたと説明。「グループ全体のAI推進体制を構築し、関係部署を巻き込んでチームで導入効果とリスク対策・ガバナンス両面を議論した」と述べた。さらに単一ツールに依存せず、入出力監視やデータの匿名化などを組み合わせる必要性も論じた。松葉氏は「推進側とガバナンスが足並みをそろえ、顧客への責任を果たす意識が重要だ」とまとめた。

パネルディスカッション 中小の補助金、行員とAIで取得

佐藤 淳氏 Stayway 代表取締役 CEO
峠 清孝氏 NOBUNAGAキャピタルビレッジ 代表取締役社長
猿渡 功己氏 経済産業省 経済産業政策局総務課 課長補佐
(左から)佐藤 淳氏、峠 清孝氏、猿渡 功己氏

地域の成長投資拡大は日本の課題だ。猿渡氏は補助上限50億円の大規模成長投資補助金など、中堅・中小企業に向けた国の補助金の拡充を紹介。採択企業の賃上げなども設計に組み込んでおり「地域での波及効果まで狙った」と説明した。峠氏は地域金融機関として企業の補助金取得をサポートする立場から、補助金支援の現場について「事業を見極める金融機関の目利きがあってこそ、採択につながる申請書になる」と指摘した。佐藤氏は自社の「補助金クラウド」について、生成AIを活用することで申請書作成時間を大幅に短縮できると説明し、「AIで70点まで支援し、行員が100点に仕上げる役割分担が進んでいる」と述べた。一方で、補助金は採択から入金まで半年から1年程度を要する場合があり、補助金支給までの資金ギャップを補完するファンド設立の検討にも言及した。

*本パネルディスカッションの詳細版はこちらでお読みいただけます。

グローシップ・パートナーズ

松井 晴彦氏 グローシップ・パートナーズ 代表取締役 オーナーシップ 代表取締役

松井 晴彦氏

デジタル証券やデジタル社債のプラットフォームを提供。あるデジタル社債の発行時は、優待の宿泊券を目当てに、100万円の社債が飛ぶように売れた。ファンを巻き込んだ資金調達の実現、顧客ロイヤルティーの向上、売り上げ増加を同時に達成できた事例だ。

 

Global Mobility Service

中島 徳至氏 Global Mobility Service 代表取締役社長 CEO

中島 徳至氏

東南アジアなどで15億kmの車両稼働データを分析し、ドライバーの真面目さなどを定量評価し、信用情報のない低所得層も融資が受けられる仕組みをつくった。ドライバーは車を使って働き、そこに投資した人が現地での資金使途を見られる仕掛けも設けた。

 

Trust

友田 恭輔氏 Trust 代表取締役社長

友田 恭輔氏

「脱レガシー」は技術面より、いかにブラックボックス化させないかが本質だ。当社はAIでソースコードから設計書を自動生成する「Nova」と、要件定義から構造化する「Genesis」を備えたツールTrust TLanPを提供。常にシステム仕様の信頼できる唯一の情報源を提供する。

 

日本ブロックチェーン基盤

近藤 秀和氏 G.U.Group 代表取締役社長CEO Japan Open Chain ファウンダー

近藤 秀和氏

経済安全保障の観点からも国産ブロックチェーン基盤が必要だ。日本企業14社が運営するコンソーシアム型ブロックチェーン「Japan Open Chain」は、高速・低コスト・安心な金融インフラをめざす。国内外での採用先からも高い評価を得ている。

 

Ippu Senkin

鈴木 秀弥氏 Ippu Senkin 代表取締役社長 CEO/Founder

鈴木 秀弥氏

AI活用はクラウド一辺倒でなくオンプレミスとの用途に応じた使い分けが重要。金融では機微情報を扱うためデータ主権の確保が不可欠。AIエージェントのように大量のトークンを消費する場合はコスト面でもオンプレが優位で、デジタル赤字の削減にもつながる。

 

Ginco

房安 陽平氏 Ginco 取締役社長

房安 陽平氏

パブリックとプライベートの二元論から脱却することが社会実装の鍵。トークン移転制限やKYCなど伝統的金融の制約を前提に、現実的なユースケースが創出されている。台帳への参照機能がオープンになるだけで新しい金融体験が提供できる。

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