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異業種共創で進む社会実装 メタバースが描く近未来像

第4回 日経メタバースシンポジウム

日経メタバースプロジェクト

2024年1月25日、「第4回 日経メタバースシンポジウム」(主催/日本経済新聞社)が、日経ホール(東京・千代田)とオンラインのハイブリッドで開催された。様々な企業や自治体、コミュニティーでメタバースの利活用が進む中、新たな可能性や課題が見え始めている。日本が世界をリードし、メタバースの社会基盤化を進めるために何が必要なのか、その先にどのような変革が待っているのか、活発な議論が行われた。

ゲームの力で現実世界を探索

川島 優志氏 

Niantic ゲーム&パブリッシング部門 副社長

川島 優志氏

ソファに座ったままデバイスを通じて世界とつながるのではなく、スニーカーを履いて外に出て、世界を探索し、発見して、様々な人とつながってほしい。「人々が一緒に世界を探索するインスピレーションを与える」、それが当社のミッションだ。「探索」「運動」「実世界での交流」という3つの要素を満たすことを目指して、ゲーム開発を行っている。

例えば、スマホゲーム「ポケモンGO」や「モンスターハンターNOW」は、端末の位置情報と、拡張現実(AR)を組み合わせ、現実世界にキャラクターを登場させることで、プレーヤーを屋外へ誘う。もちろん、ただ現実世界にキャラクターを映し出すだけではない。現実世界の力、そして物語の力、双方を活用しながら、ほかにはない現実感を生み出すべく工夫をこらしている。

「モンスターハンターNOW」は現実世界にモンスターが登場  © 2023 Niantic. Characters / Artwork / Music © CAPCOM CO., LTD.

当社のゲームを通してプレーヤーが歩いた距離は総計50億キロメートルを超えた。これは太陽から冥王星までの距離だ。また、1億9000万以上の友達のつながりができ、昨年は300万人以上のプレーヤーが現実世界で実施したライブイベントに参加した。

位置情報とARに加え、注目している技術が人工知能(AI)と空間コンピューティングだ。現在、AIによってスマートグラスやヘッドセットは大きく進化し、物理世界とデジタル世界を融合させる空間コンピューティングが実現しつつある。装着すると、現実空間にデジタル情報が重なって表示され、それに触れて直感的に操作することもできる。装置が軽量化していけば、日常生活でも利用できる場面が増え、人々の意識や生活も変化していくだろう。

2026年には、よりグラフィックに優れた3Dディスプレーを備え、没入的な体験を実現しながらも自然な見た目を持つ、機能と実用性を両立したARグラスが多数生まれてくると予想している。

ヘッドマウントディスプレーでデジタルペットと触れ合える日も近い

もちろん、ハードウエアの進化だけでは、未来へのすべてのピースはそろわない。進化したスマートグラスで何を見せるのか。そこを見据えながら、現実世界のメタバース化を目指し、ゲームを開発している。特に力を入れているのが、ARとAIの組み合わせだ。その中で生まれたのが、ペット育成ゲーム「ペリドット」である。

ペリドットには様々な技術が投入されている。現実世界をリアルタイムにマッピングすることで、デジタルペットを道路上で走らせる試みもその一つである。最近のアップデートでは、現実世界の分類データとデジタルペットの個性を大規模言語モデルに読み込ませ、植物や食べ物など現実世界の物体に遭遇したデジタルペットの反応を生成することが可能となった。生成AIとの連動を深めていけば、デジタルペットとより深く、より自然な双方向のコミュニケーションも可能になっていくだろう。ヘッドマウントディスプレーやスマートグラスなどを装着して、デジタルペットと触れ合い、心身ともに癒やされ健康になっていくような未来が待っている。

今後もこうした技術開発やゲームの力を組み合わせて、現実世界のメタバース化を目指していく。

 

都市の3Dデータ、活用を

内山 裕弥氏

国土交通省 総合政策局/都市局 IT戦略企画調整官

内山 裕弥氏

国土交通省では、都市の3Dデジタルツインを整備し、誰もが無料で利用できるオープンデータとして公開するプロジェクト「PLATEAU(プラトー)」を進めている。2024年1月現在、国内130都市のデータが公開されており、23年度中には200都市、人口のカバー率では6割を超える予定だ。

プラトーの特徴は単なる3DCGではなく、位置情報や意味情報など空間情報を総合するリッチなデータ構造を持つ点だ。メタバースのワールド構築のほか、まちづくりのシミュレーション、ドローン運行マップ作り、映画やミュージックビデオといった映像作品の背景制作など、すでに様々なソリューションが生まれている。

国土交通省としては、さらに多くの活用を促すため、プラトーのサイトで、データを活用するためのマニュアルや技術資料、開発者支援ツールも取りそろえ、開発環境そのものを積極的に提供している。また、企業や自治体の最新の取り組みを知る機会であるコンソーシアムを立ち上げたほか、開発者向けの勉強会やアイデアコンテストなども多数実施している。ぜひ参加いただきたい。

 

360度映像でVR空間を構築

相澤 清晴氏 

東京大学 教授/東京大学バーチャルリアリティ教育研究センター センター長

相澤 清晴氏

実世界を仮想現実(VR)空間に取り込む手段がある。それが、東京大学バーチャルリアリティ教育研究センターが共同で手掛ける「ムービーマップ」という技術だ。

ムービーマップは実在エリアの360度映像群を使ってユーザーが自由に行き来できるオープンワールドを作るもの。エンドユーザーの利用イメージとしては、グーグルマップのストリートビュー機能の動画版を思い浮かべていただくとよいだろう。

ムービーマップでVR空間を構築する際には、まずバーチャル化したいエリアの街路に沿って移動し、360度の動画を撮影する。その映像データを街路の交差点ごとにつなぎ合わせ、面的な地図情報と結び付ける。これにより、街路を自由に行き来しているかのような映像体験が可能になる。

この360度映像を球形スクリーンに投影し、位置に同期させる形でその映像を更新していけば3次元性が得られる。ここにアバターやオブジェクトを導入すれば、より没入感のある、リアルな仮想空間「360RVW」を作ることもできる。また、アバターに位置情報を付与し、別のユーザーのアバターの位置情報と同期すれば、アバター同士の交流も可能になる。

ムービーマップは建物だけでなく、人物や乗り物なども映っている実写映像を利用するため、街中の動きや空気感をリアルに再現することができる。

CGでVR空間を一から作るよりも、低コストで簡易にバーチャル都市を構築でき、ユーザー端末で扱うデータ量や計算量も軽くて済む。

現在、360度映像と地図をアップロードすれば簡単にムービーマップが作れるようなアプリケーションも開発中だ。

ムービーマップにより実在する街をアバターが歩き回る

 

仮想×現実でまちづくり

長田 新子氏

Metaverse Japan 代表理事/渋谷未来デザイン 理事・事務局長/シブヤ・スマートシティ 推進機構 理事

長田 新子氏

東京都渋谷区ではメタバースをまちづくりに活用している。その一翼を担っているのが、渋谷区が2018年に設立した外郭団体、渋谷未来デザインだ。産官学民の連携組織で、オープンイノベーションによる課題解決を目指す。

20年には、コロナ禍で来訪者が途絶えた渋谷の魅力を広く知ってもらうため、国内初の自治体公認メタバースとして、企業や観光協会とともに「バーチャル渋谷」を立ち上げた。ハロウィンフェスなど大がかりなバーチャルイベントを実施したほか、感染対策で活躍の場を失ったアーティストのために、バーチャルライブハウスを設ける試みも行った。

その後も、バーチャルと現実を連携させたイベントを通して、地域を盛り上げ、関係人口を増やす方法を模索している。人と人をつなげる場づくりとしては、公共空間である公園のメタバース活用も進めている。宮下公園をバーチャル化した「バーチャル宮下公園」ではアート展や、不登校児童・生徒の第3の居場所をつくるための講演やワークショップを実施した。

新たな試みとして、AR技術を活用して、街中で飛行機のレースを観戦する「エアレース エックス渋谷」も開催した。世界各地で各パイロットが渋谷の街のデータ

を基に、事前にフライトを実施し、そのフライトデータで競技の模様を生成した。決勝当日、観客はクロスリアリティー(XR)デバイスやスマートフォンをかざすことで、ビルの間を飛行機が駆け抜ける競技を観戦。エアレースは全世界に配信され、新しいモータースポーツの在り方と、渋谷の街並みの魅力を伝えるものとなった。

テクノロジーを使ったこうした事例を積み重ねつつ、最終的にはそれが当たり前のように実装される未来を目指している。

渋谷の街で繰り広げられるエアレースをAR技術で観戦

 

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