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科学と優しさを クリエイティビティで調合

Feat. 沢井製薬 デザインシンキングの原点と進化

CREATIVITY PROJECT
提供:沢井製薬株式会社
沢井製薬は「なによりも患者さんのために」という企業理念を掲げる

新薬と同等の効果があり、比較的安価に製造・販売できるジェネリック医薬品は、日本人の健康維持に欠かせない。沢井製薬は薬の「飲み心地」に着目し、少量の水でも服用できるオリジナル技術などを開発してきた。その強さは、原薬の加工から錠剤の口どけ、さらには安心の可視化までを一つの「体験」として設計する思想にある。製剤研究部を率いる野沢健児 製剤研究部長とUNIVERSITY of CREATIVITY(UoC)主宰の市耒健太郎氏が対談し、価値創造の源泉に迫った。(一部敬称略)

飲みやすさや視認性 薬を飲む「体験」を設計

市耒 私は企業の創造性を考えるとき「モノづくりとモノがたりが連動しているか」を大切にしています。沢井製薬はそれを地で行く企業だと感じています。

野沢 当社は大阪府に拠点を置き、約800品目もの医薬品を製造・販売するジェネリック医薬品メーカーです。「なによりも患者さんのために」の企業理念の下、日々研究開発をしています。それを体現している取り組みの中にSAWAI HARMOTECH®(サワイハーモテック)やQualityHug®(クオリティハグ)があります。後者は2024年度に、優れたデザインに対して贈られるグッドデザイン賞も受賞しました。

サワイハーモテックは患者さんや医療関係者のニーズに応えるための5種類の製剤技術群です。薬を飲みやすくしたり扱いやすくしたりします。例えばSARAMEL®(サラメル)は少量の水でも服用できる薬を作る技術で、患者さんの負担を軽減できます。ほかにも薬を飲みやすくするためのコーティング技術や、口当たりや味を客観的な指標として数値化する技術もあります。

沢井製薬 製剤研究部長 野沢 健児 氏

クオリティハグは錠剤の表面に模様をつけて何の薬か分かりやすくするなどして、患者さんの服薬時の不安に寄り添うことを目的とした技術群です。当社の若い研究者が中心になって開発しました。具体的な名称としてはKazaria®(カザリア)などがあります。

市耒 科学に「安心の可視化」という付加価値を与えています。品質を追求している医薬品であることを前提に、飲みやすさや視認性まで「体験」を総合設計するのが、沢井製薬のクリエイティビティであり美学なのですね。開発の根底には、患者さんに寄り添う優しさがあると感じます。実現するための秘訣は何ですか。

野沢 様々な情報が部署横断で展開される、有機的な組織だと思います。エンドユーザーの声を拾い上げ、何が求められているのかを掘り下げて研究・開発しています。患者さんの不安や不便を技術で解消し、「沢井製薬の薬っていいね」と言ってもらえることが、我々のモチベーションにもなっています。

意見の違いはチャンス 議論尽くす

市耒 サラメルのネーミングセンスはどこからですか。

野沢 サラメルは「サラッと溶ける(メルト)」の造語です。唾液でサラッと溶ける一方、日本の高温多湿の環境下でも錠剤としての形を維持できるようになっています。様々な要素を調和させるのに苦労しました。

市耒 価値創造は相反する意見や条件などをぶつけ合うことから始まります。大変なこともあるでしょう。

野沢 はい。開発側が作りたいものに製造観点から再考を求められることもあります。ですが、それがきっかけで生まれた技術も多くあります。患者さんのために良い薬を届けたいという思いは、皆共通しています。議論を尽くし、折衷案を探っていきます。

UNIVERSITY of CREATIVITY 主宰 市耒 健太郎 氏

市耒 意見の違いを逆にチャンスととらえることで、新しい価値創造につなげたのですね。議論の源となるアイデアは日ごろからノートに書き留めていると聞きます。

野沢 患者さんに薬を届けるための仕組みや人を説得する方法、組織の作り方などに関することを書いています。当社の強みを自分なりに考えてまとめたものもあります。

市耒 創薬だけでなく経営やマネジメントの観点もあるのは興味深いです。

野沢 科学的なデータを読み取るなどしなければならないため、スペシャリストである必要はある一方、実際に商品化して患者さんに届けられなければ意味がありません。開発コンセプトやサプライチェーン(供給網)なども考慮できるゼネラリストである必要もあります。

私自身、若い時はスペシャリストを志していましたが、それだけでは世の中に薬が出せないと実感しました。全体を俯瞰できる能力は不可欠です。

野沢氏が日頃アイデアを書き留めているノート

ジェネリックを再定義し社会価値向上

野沢 沢井製薬の前身、澤井薬局は今から約100年前に大阪市で誕生しました。創業者の澤井乃よは当時まだ珍しかった女性薬剤師で、医者にかかれない人たちを救おうと奔走した人です。

市耒 患者さんや生活者に寄り添う姿勢は、今もまったく変わっていないのですね。

野沢 患者さんを思いやるという原点を大切にしつつ、未来へ向けて進化もしていかなければなりません。

世間ではまだジェネリック医薬品は「新薬をまねしたもの」というイメージが強いようですが、これは違います。私たちは他の薬にはない価値や利便性を「ジェネリック医薬品」という新たな箱に入れて、社会に届けているのです。

市耒 ジェネリックという言葉自体を再定義しながら、未来へ向けた社会価値の向上を考えているのですね。沢井製薬の技術には、製薬業界以外からも引き合いがあると聞きます。

野沢 健康食品や飲料水の開発などで応用できないか相談を受けることがあります。反対に当社が他社の協力を得ることもあります。例えば錠剤を固める技術は車の塗装メーカーや金型メーカーと協力して開発しました。

根底にあるのは「なによりも患者さんのために」という企業理念です。当社はこの企業理念に則していれば、比較的自由に研究や開発ができます。新しい分野への挑戦で技術を磨き、社会に還元していきたいと考えています。

市耒 変わらぬ原点と、科学に基づき変わり続ける技術。その両立が、御社の強さだと感じます。

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