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カンヌライオンズ参加者 広告の力と熱意を共有

広告クリエーティブフェスティバル「虎ノ門広告祭」セッションから

BizGateリポート/Creativity

日本最大級の広告クリエーティブフェスティバル「虎ノ門広告祭」が2025年10月17〜24日、東京都内で初めて開催された。毎年6月にフランス南部のカンヌ市で開かれる世界最大の広告祭「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」(カンヌライオンズ)に関するセッションを2つ設け、広告やクリエーティビティー(創造性)の持つ可能性を来場者に訴えた。登壇者は広告の持つ力や制作にかける熱意を、来場者と共有した。

虎ノ門ヒルズ内の情報発信拠点「TOKYO NODE」で開催された。約400人のコピーライターや広告クリエーターらが登壇。広告やクリエーティビティーに関する展示、トークセッション、交流イベントなどが催された。8日間の会期中、累計約1万6700人が来場した。

虎ノ門広告祭には累計約1万6700人が訪れた

カンヌライオンズ名作解説 ユーモアや相手の視点大事に

20日午前に開かれた「カンヌライオンズは社会課題にどう挑んだか?」と題したトークセッションには、博報堂執行役員の嶋浩一郎氏、電通クリエーティブディレクターの長谷川輝波氏、TBWA HAKUHODOのクリエイティブディレクターの原口亮太氏が登壇した。

世界中の企業や団体からえりすぐりの作品が持ち寄られるカンヌライオンズは、広告・クリエーティブ業界全体のトレンドを映し出すとされる。毎回優秀な作品を表彰している。3氏はそれぞれ、審査員、登壇者、受賞者として関わった経験がある。

カンヌライオンズ経験者が過去の名作について語り合った(左から嶋氏、長谷川氏、原口氏)

冒頭、嶋氏は広告主が社会課題解決を意識した事業を展開する近年の潮流を念頭に、「クリエーティビティーなしに社会課題は解決できない」と強調した。

トークセッションでは3氏が過去の名作や話題作を、クリエーターの視点で解説した。金融業界での女性活躍を推進するため、米ニューヨークのウォール街にある雄牛像の前に少女の像を設置した事例を紹介。嶋氏は女性なら誰しもが少女に感情移入できる点に触れ、「いい企画はシンプル」と話した。原口氏は象徴的な場所を見つける重要性を指摘した。

電車による死亡事案を減らすためのオーストラリアの作品も話題にのぼった。この作品は「自分の髪に火をつけて亡くなった」「熊を刺激したら反撃を受けて亡くなった」といった死に方をあまりにももったいないとし、電車による死亡もその一つだと訴え、愛らしいキャラクターやリズミカルな歌を通してメッセージを発信した。長谷川氏は「社会課題となるとどうしても『ふざけてはいけない』となりがち。皆が行かないところに穴を掘って大成功した」と話した。嶋氏は「ユーモアはとても大事」と語った。

同性愛者に寄り添った米ハンバーガーチェーンの広告も秀逸だ。ハンバーガーが入った包装紙をめくると、中から「(同性愛者もそうでない人も)私たちは皆同じ」という文言が現れる。長谷川氏は「見た人が背後にある物語を創造し、涙ぐむ」とインパクトの大きさを評した。

この他、3氏からは「クリエーターは多くのステークホルダーを巻き込んでいかなければならない」「広告はどれだけ相手の視点から見られるかが重要」といったコメントがあった。トークセッションを聞いていた放送局勤務の20代男性は、「社会的意義のあるものを届けたいと改めて思った」と話した。

若手クリエーターが世界の舞台裏報告 「アイデア出し10時間」

21日午後には、若手クリエーター向けの広告コンペ「ヤングライオンズ」に今年出場したメンバーによる報告会が開かれた。ヤングライオンズはカンヌライオンズの運営主体が開催している。

国際コンペに出場した若手クリエーターが、世界に挑戦する楽しさなどを語った

報告会には6チーム12人が登壇した。実際に出品した作品をつくる上で意識した点や難しかった点などを披露。事前に出された卵巣がんやミツバチなどのテーマに対し、「(難しさから)血の気が引いた」などと、当時の心境を率直に振り返った。

「アイデア自体は2時間で出てきたが、本当にそれでいいのか4時間くらい議論した」「10時間ほどかけてアイデアを出し合った」といった舞台裏も明かした。また、一時的な取り組みにしないように企業と連携したり、1990年代半ば以降に生まれたZ世代を意識してインフルエンサーらを活用したりする案が出たことも紹介した。

一方、入賞を逃したことについて「時間までに勝ち筋をつくれなかった」と反省を述べた登壇者や「結果は何であれ納得できるものをつくりたかった」と振り返った登壇者もいた。

最後にカンヌライオンズ未経験者に向けたアドバイスやエールを求められ、「本音で話せる人と行くのがいい」「小さなハードルでもサボらずにやること」などと答えていた。このほか、海外に出て多様な人々と交流しながら挑戦する楽しさに言及し、「最高の一年だった」と満面の笑みで語る登壇者もいた。

来場した大学生の荒井光寛さん(22)は「クリエーティビティーがあれば生活が豊かになる。自分も心がワクワクする瞬間をつくりたい」と目を輝かす。その上で、「(カンヌライオンズなどは)手の届かないものでもないと思った。いずれ出場してみたい」と語った。

国内広告規模、3年連続で過去最大に 課題は訴求力

日本の広告市場は全体的に好調だ。電通が2月に公表したリポートによると、2024年の日本の総広告費は前年比4.9%増の7兆6730億円で、3年連続で過去最高だった。同9.6%増のインターネット広告を中心に多くの分野で前年実績を上回った。好調な企業収益や消費意欲の活発化、インバウンド(訪日外国人)需要の高まりなどが要因だ。

日本からカンヌライオンズへの応募件数は2019年(982作品)から2024年(433作品)まで約6割減少したが、2025年(547作品)はやや回復した。

参加したある広告業界関係者は「クリエーティビティーで企業価値が向上するという発想は日本企業にはまだあまりないのでは」と指摘した。その上で、「(広告クリエーターは顧客が訴求したい事業の)実装段階まで伴走する必要がある」とし、「顧客企業の成功体験を積む手伝いがしたい」と話していた。

(山下宗一郎)

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