
超高齢社会や人生100年時代の到来に伴い、医療や人々の健康にかかわる課題は多様化し、企業にもより積極的な取り組みが求められている。こうした中、富士通は2022年に新たな事業ブランド「Fujitsu Uvance(ユーバンス)」を立ち上げ、医療ヘルスケアの推進を重要な取り組みの一つに掲げている。2023年12月の「ヘルステックサミット2023」では、ソーシャルソリューション事業本部 Head of Healthy Livingの青野考氏が、業種横断で医療・健康データをつなぎ、ウェルビーイングな社会を実現する取り組みについて紹介した。
多業種との共創で生活者に価値提供
富士通は、ウェルビーイングな社会の実現に向け、社会課題である平均寿命と健康寿命の乖離(かいり)などに対応する個別化医療や予防医療の支援を推進。さらに、年々増加する新薬開発コストの低減や、多様化する生活者・患者ニーズに応える医療情報と生活情報の相互流通などで取り組みを進展させている。それらの課題解決の先に見据えるのは、データとテクノロジーでヘルスケアのあり方を改革し、一人ひとりのQOL(生活の質)を向上させることだ。
具体的には、電子カルテシステムや治験ソリューションでのトップシェアを生かし、2030年をめどに、個人起点のデータ連携と多業種との共創により、人々の日常生活に溶け込むヘルスケアの実現を目指している。そのため、医療機関や製薬企業、保険会社、健康保険組合・自治体、食品メーカー、小売業などと連携し、生活者である皆さまに多様な価値の提供を目指している。
その実現に向け、これまで取り組んできたデータ&セキュリティーやコンピューティング、AI(人工知能)などに加え、スタートアップやテクノロジー企業との連携でキーテクノロジーを強化。それらをベースに、医療データを利活用できるクラウド型のプラットフォーム「Healthy Living Platform」を通じて、人々の診療や検査、健診、運動、購買履歴などのデータを同意に基づき管理する。その上で、医療リソースの最適な組み合わせや創薬のシミュレーション、レコメンデーション(助言)に生かしたいと考えている。
データ活用で医療や保険の質を向上
ここで、実際に進めているプロジェクトを紹介したい。1つ目は富士通の医療情報システムや電子カルテを利用している札幌医科大学との共創の事例だ。地域柄、基幹病院として広大なエリアをカバーするため遠隔医療にも取り組んでいるため、患者の同意に基づく医師や連携医療機関との医療・健康データの共有で、地域医療連携とより質の高いケアの提供を推進している。患者は自身の健康状態や検査結果などがスマートフォン上のアプリから閲覧でき、医師も患者の普段の生活におけるバイタルデータや診療データを活用し、より適切な判断が下せるという評価をいただいている。
製薬企業・医療機関との共創もある。卵巣がんの薬を上市している武田薬品工業が、患者のQOLまで見据えたヘルスケアを実現したいということから、治療を行う国立がん研究センターと電子カルテシステムを提供している富士通とで共同研究を行っている。研究では、患者ごとの長期にわたるがん治療の様子や初回治療の多様性などが分析により見える化され、医師と患者の最適な治療選択の支援につながり、個別化医療の質と治療効果の向上への寄与が期待されている。
次に紹介するのは保険会社に関わる検討だ。Healthy Living Platformを通じて医療機関・保険会社・患者がシステム連携することで、診断書の発行から給付金の申請・受け取りまでを短縮でき、患者本人や家族の負担軽減とともに、医療機関や保険会社の事務効率化にも貢献できる。

社会課題解決へエコシステムを推進
従業員と家族のウェルビーイング向上に向けた事例では、健康保険組合の持つ健診データ等を分析・フィードバックして行動変容につなげる、データドリブン型健康経営の実現に取り組んでいる。さらに、2023年に設立された健康経営アライアンスという組織に参画し、他の企業・団体と共に、業界を超えた健康経営に関する知識やノウハウを広める取り組みも始めている。これらが進展すれば地域社会の健康増進に貢献することになり、企業にとっても従業員の健康改善を通じ、生産性の向上や健保財政の改善に寄与するものとなる。
食品メーカーと、子どもたちの成長をサポートする取り組みも計画している。これは、Jリーグの川崎フロンターレが運営するフロンタウン生田というスポーツ施設において、サッカーやバスケットボールの育成選手や地域住民同意のもと、バイタルデータや検査データ、食事関連データを取得するもの。それらは、食品メーカーが食育や体づくりの一環として商品開発をする際に役立てることができるので、子どもたちや地域住民の健康のため今後も継続していきたい。
最後は小売業界との連携である。小売業界においては現在もPOS(販売時点情報管理)データやポイント、キャンペーンなどのデータを活用しているが、これに電子カルテや履歴、日々の活動記録といったヘルスケアデータを掛け合わせ、個々の特性や生活習慣に合わせた価値のある購買レコメンドで健康を支援していくことを目指す。そのため、他業種との連携にも取り組んでいる。
このように、私たちが「Fujitsu Uvance」で取り組んでいるのは、社会課題を起点とし、お客さまの成長に貢献するデジタルサービスを、業種横断のクロスインダストリーで提供するものである。今回紹介したのは、その注力領域の一つとして、ウェルビーイングを掲げる部門であるHealthy Livingが取り組んでいる事例となる。富士通はこれからも、サステナブルな世界の実現を目指し、社会課題の解決にフォーカスしたエコシステムづくりを推進していきたいと考えている。
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