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渋谷の上空で仮想エアレース メタバースで街の魅力発信

第4回日経メタバースシンポジウム講演 Metaverse Japan 長田新子代表理事

日経メタバースプロジェクト
日本経済新聞社は2024年1月25日、「第4回日経メタバースシンポジウム」を日経ホール(東京・千代田)とオンラインのハイブリッドで開催した。Metaverse Japan 代表理事でメタバース(仮想空間)を使った東京・渋谷の街づくりに取り組む長田新子氏の講演を紹介する。
長田 新子氏 Metaverse Japan 代表理事/渋谷未来デザイン 理事・事務局長/シブヤ・スマートシティ 推進機構 理事

メタバースをリアルな場所・社会につなぐ

私が取り組んでいる活動は大きく2つある。一つは、メタバースの領域で人が互いを尊重しながら活躍できる社会づくりをめざす業界団体「Metaverse Japan」で、メタバースの社会実装や発展を支援すること。もう一つは、具体的に街というフィールドを使って前述の理念を実証・実装していくことで、都市の可能性を拡張することだ。

メタバースの社会実装を進めるには、メタバースを電子空間の中だけにとどめるのではなく、リアルな場所、リアルな社会とどうつないでいくのかが問われる。新しい技術を使って、あらゆる人がコミュニケーションできる場を作ったり現実社会と接点を持てたりする、それこそがメタバースに求められる本質的な役割ではないだろうか。

そうした取り組みの一つとして紹介したいのが、東京都渋谷区によるメタバースを使ったまちづくりだ。その一翼を担っているのが、渋谷区が2018年に設立した外郭団体「渋谷未来デザイン」である。産官学民の連携組織で、渋谷を多様性あふれる未来に向けた世界最前線の実験都市とするため、多様な人々のアイデアを集め、オープンイノベーションによる課題解決を目指している。

2020年には国内初の自治体公認の都市連動型メタバース「バーチャル渋谷」を立ち上げた。コロナ禍で来訪者が途絶える中、渋谷の魅力を広く知ってもらうため、ハロウィーンフェスなど大がかりなバーチャルイベントを開催したほか、感染対策で活躍の場を失ったアーティストのためにバーチャルライブハウスを設ける試みも行った。

2年目には、いわゆる「投げ銭」の仕組みを使ってアーティストを支援する方法を進化させ、その収益を子ども食堂に寄付するなど経済を回す方法を発展させた。今後もブロックチェーン技術を使った代替不可能なデジタルデータ(NFT)などの新たな技術を取り入れていきたい。

バーチャルと現実を連携させたイベントを通して地域を盛り上げ、関係人口を増やす方法も模索している。人と人をつなげる場づくりとしては、公共空間である公園のメタバース活用を大日本印刷(DNP)の協力のもとで継続的に実施してきた。宮下公園をバーチャル化した「バーチャル宮下公園」ではアート展や、2023年11月には不登校児童・生徒の第3の居場所を作るための講演やワークショップを開催した。今や若者によるTikTok(ティックトック)の聖地としても知られる宮下公園だが、バーチャルだからこそできる展示や取り組みを行うことには、大きな意義があると考えている。

XR技術で渋谷の空を飛行機が駆け抜ける

2023年秋には、世界初の都市型XRスポーツ「AIR RACE XーSHIBUYA」を開催した。クロスリアリティー(XR)技術により、実際には飛行不可能な都市空間をレース会場化し、都市の可能性を拡張することを試みた。

まず、渋谷の地形やビル群を生かしたレーストラックを設定する。そのデータをもとに、世界各地で各パイロットが事前にフライトを実施。そのフライトデータで競技の模様を生成した。

XR技術によって実際には飛行不可能な渋谷の上空をエアレースの会場にした「AIR RACE XーSHIBUYA」

決勝当日、観客はリアルメタバースプラットフォーム「STYLY(スタイリー)」をインストールしたスマートフォンやヘッドマウントディスプレーを用意して、公式の観戦会場ほかレーストラックが見える場所で観戦。デバイスを通じて、ビルの間を飛行機が時速400キロメートルで駆け抜ける様子を楽しんだ。このエアレースは全世界に配信され、新しいモータースポーツの在り方と渋谷の街並みの魅力を伝えた。

街に人が集まって何かを体験できるこうした取り組みが、今後ますます増えてくるだろう。VR(仮想現実)グラスなどのインターフェースがもっと身近なものになっていけば、体験価値はさらに上がる。

地域住民も巻き込んで新しい体験価値を提供

テクノロジーの進化と連動して、新しい体験、新しいコンテンツ、新しいコミュニケーションが次々と生まれていく。そうした中、リアルとバーチャルを融合できるメタバースならではの体験価値をどう作っていくか。カギは産官学だけでなく民も参加することだ。

スマホの普及時にそうであったように、「誰か」が作るのを待つだけではなく、ユーザーもアイデアを出してトライしていくことが重要だ。メタバースで街おこしをするなら、地域住民も巻き込んでいく必要がある。

メタバースならではの特性を生かし、多様性あるメンバーそれぞれの可能性が創出できたらと考えている。

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