コムエクスポジアム・ジャパン(東京・港)は2025年10月22〜24日、マーケティングに関するアジア最大級の国際カンファレンス「ad:tech tokyo(アドテック東京)」を東京・六本木で開催した。国内外の専門家や企業関係者が最新の広告マーケティングの成功事例についての講演やワークショップが開かれ、23日の基調講演では、米Anomalyのグローバルパートナーで最高イノベーション責任者(CIO)のNatasha Jakubowski (ナターシャ・ヤクボウスキー)氏が、AI(人工知能)時代にブランド価値を高めるための最新のマーケティング手法および留意すべき原則について語った。

米国のデジタル動画広告の30%にAIが活用されている
Anomalyは「企業の成長を支援するために設立された会社」(Jakubowski氏)で、ニューヨーク、ロサンゼルス、トロント、ベルリン、ロンドン、上海に拠点がある。クリエイティビティ(創造性)を広い意味で捉え、従来の広告の枠を超えた様々なソリューションを提供しており、事業領域はイノベーション、デザイン、デジタルトランスフォーメーション(DX)、統合型の広告キャンペーン、コンテンツ制作、ソーシャルメディア、さらには各種イベントの活性化まで多岐にわたる。
Jakubowski氏は、マーケティング業界が直面する現在の課題として、経済の不確実性、予算の縮小、メディアの分散化、消費者の信頼低下、そしてAIの影響を挙げた。同氏によると、一般人は現在、1日あたり平均で6000件の広告を目にしており、米国のデジタル動画広告の30%にはすでにAIが活用されている。
効果的なAI活用の具体例を紹介 コンテンツの氾濫については警告
こうした課題がある一方、Jakubowski氏はサプライチェーンの管理費削減やワークフローの改善、業務プロセスの最適化など、マーケターにとってAIがもたらすポジティブな面があるとも指摘した。
続いて、マーケティングにおける効果的なAI活用の具体例を紹介した。例えば、仮想スーパーモデルのようなブランドアンバサダー、著名サッカー選手のメッシを起用した顧客へのパーソナライズメッセージキャンペーン、顧客体験を向上させるAIコンシェルジュサービス、お菓子の商品開発に機械学習を活用した事例などだ。
一方で、Jakubowski氏は「どれも似たり寄ったりで創造性のないコンテンツ」の氾濫について警告した。異なるブランドの広告でありながら、すべてが同じように見える「爆発する箱」広告の例を示し、AIが多くのコンテンツを生み出せるからといって、安易にコンテンツを増やすべきではないと強調した。増え続けるコンテンツの中で目立つためには、創造性が依然として不可欠だと説明した。

AI時代にブランド価値を高めるには
Jakubowski氏はAIのメリット・デメリットを説明後、AI時代にブランド価値を高めるための5つの原則を示した。
第1の原則は「目立つ存在であれ」。ブランドには、単に商品を売るだけでなく、明確な視点と真の目的が求められる。Jakubowski氏は単なる製品ブランドからライフスタイルブランドへと進化した事例などを挙げた。
第2の原則は「コミュニティーを活性化させよ」。ブランドは検索や広告に頼るだけでなく、消費者と直接的な関係を築くことが重要だ。Jakubowski氏は、米国の高級百貨店Nordstrom(ノードストローム)のロイヤルティープログラムの刷新や、シューズブランド「コンバース」のコミュニティー構築活動などを事例として挙げた。
第3の原則は「象徴的なブランドの世界を築こう」。ブランドには没入感のある体験が必要だ。メキシコのテキーラ会社Don Julio tequilaは伝統的なテキーラ原料植物の畑のイメージではなく、大都市メキシコシティの世界観を創り出し、ビールブランドの「バドライト」はゲーム体験を向上させるためのAIエージェントを開発した。
第4の原則は「製品自体がメディアである」。 広告が難しくなっている現代において、製品そのものが強力なコミュニケーション手段となっている。例えば、ウイスキーの「ジョニーウォーカー」が女性向けに展開した「Jane Walker」や、消費者のライフスタイルに溶け込む商品を作り出したブランドの事例などがあるという。
第5の原則は「リアルで存在感を示す」。世界がデジタル化する中で、物理的な存在価値が高まっている。ネットフリックスが店舗を開設したり、アディダスが子ども向けの体験プログラムを展開するなどがその例だという。

Jakubowski氏はAIが広告業界に効率化の面で大きな可能性をもたらす一方、ブランド側は独自性、コミュニティー形成、没入体験、製品の革新、そして現実世界での存在感といった基本的なマーケティングの原則を見失ってはならないと最後に強調した。
(原田洋)
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