本特集では、書籍『AIエージェント 設計&実装 完全ガイド』(日経BP)から抜粋した内容を基に、AIエージェントを実装および活用するための基礎知識を解説します。第4回では、大規模言語モデル(LLM)とプロンプトを説明します。
今回は、AIエージェントを活用するために必要な基礎機能を解説します。まず、従来の機械学習(Machine Learning)とLLMとの違いを整理し、LLMの基礎的な機能である「ユーザープロンプト」と「システムプロンプト」を取り上げます。
LLMの位置付けと基礎的な機能
LLM とは、「膨大なテキストデータとディープラーニング技術を用いて構築された言語モデル」を指します。LLM の基盤にはディープラーニングがあり、さらにその土台には機械学習があります。LLMはあくまで生成AI技術の一種です。生成AIは様々な生成系AI技術の総称と定義されています。
ユーザープロンプトとシステムプロンプト
LLMの基礎的な機能として、ユーザープロンプトとシステムプロンプトの定義と違いを説明します。まずプロンプトとは、「ユーザーが生成AIに対して入力する指示文」を指します。先述した通り、生成AI は入力(プロンプト)に対して出力を返す「一問一答型」の仕組みであり、プロンプトは生成AI を活用するうえで重要な要素となります。
ユーザープロンプトは、「ユーザーが生成AIに対して直接入力する具体的な要求」を指します。生成AI を実行するには、ユーザーの意図や期待値を言語化したうえで、具体的なタスクや質問を伝える必要があります。
ユーザープロンプトの内容は目的によって様々ですが、LLM は文章生成・文章要約・翻訳・コード生成・キーワード抽出・会話/応答生成などの「言語生成」と、分類・意味解析・感情分析・係り受け解析・文章補完/校正などの「言語理解」にたけており、これらの内容を組み合わせることで様々なユースケースに対応できます。
一方、システムプロンプトは「ユーザーが生成AIの振る舞いを制御するための設定」を指します。AIに対して役割・出力形式・制約を設定することで、ユーザーの期待に応えた回答を一貫して生成することができます。
例えば、システムプロンプトに「あなたは生成AI研究の専門家です。フォーマルな口調で正確かつ簡易な表現で適切な情報を提供してください」と入力する(指示を与える)ことで、ユーザープロンプトへの回答もその設定に従った内容になります。
このようにユーザープロンプトは生成AIへの具体的な質問や依頼、システムプロンプトは生成AI の性格や話し方など振る舞いを設定するための指示と整理できます。そしてユーザープロンプトは、目的に応じて都度入力内容を変える必要がありますが、システムプロンプトは一度設定すれば、常に出力内容に一貫して影響を及ぼします。従って回答の質を担保したい場合や、毎回同じようなプロンプトを入力する手間を省きたい場合にはシステムプロンプトが有効です。
プロンプトを効果的に扱うTips
生成AIから期待する回答を得るためには、インプットであるプロンプトを適切に入力することが重要です。この「生成AIの回答精度を高めるインプットの書き方」は、プロンプトエンジニアリングと呼ばれます。
プロンプトエンジニアリングには様々な手法やフレームワークがありますが、基本的には「端的に、具体的に、分かりやすく」が重要です。ここでは、プロンプトに盛り込むべき観点を6つご紹介します。
①背景と文脈を与える
「誰が何のために?」といったタスクの背景や目的、状況を明確にします。
②役割を与える
AIに特定の専門家や担当者としての「役割」を設定し、思考の方向性を定めます。
③作業を与える
実行してほしい「具体的な作業」を明確に指示します。
④条件を与える
特定の条件や制約を付与し、AI が「考えるべき範囲」を限定します。
⑤出力形式(フォーマット)を与える
アウトプットの「形式・構成」を具体的に指示し、手戻りを防ぎます。
⑥目的を与える
成果物の最終的な「目的・読み手」を定義し、アウトプットのトーンや内容を調整します。
セミナーアジェンダ作成プロンプトの例
以下に、セミナーアジェンダ作成を題材に、プロンプトの一例を紹介します。
AIエージェントの初心者セミナーを実施するにあたり、アジェンダをつくる必要があるとします。その際に、ユーザープロンプトに「AIエージェントのセミナーを実施するので、アジェンダをつくってください」と入力すれば、ある程度の回答は得られるでしょう。
しかしこのプロンプトの内容では、セミナー参加者のレベルを考慮しておらず、セミナー参加者から見て、簡単すぎる/難しすぎるなど、期待値との乖離を生む可能性があります。またセミナーの目的が「AIエージェントの基礎知識の周知」なのか、「簡単なハンズオンの実施」なのかによっても、適切なアジェンダは異なります。
そこで、先ほどの観点をプロンプトに盛り込むことで、期待値を言語化した具体的なプロンプトを作成することができます。以下はその一例です。自分なりのルールを決めて、質の高い回答を出す工夫をすると、さらに効果的です。
①背景
・昨今、競合他社がAIエージェントのビジネス活用事例を発信し、社内でもAIエージェントを使おうとする機運が高まっている。・しかし社内メンバーにヒアリングしたところ、実際にAIエージェントが何なのか、AIエージェントのユースケースとしてどんなものがあるのかといった基礎知識を持っていない人が多い。
・従って、開発経験問わずAIエージェントの初心者に向けたセミナーを実施したい。
②役割
・あなたは生成AI およびAI エージェントのセミナーを企画・開催してきたベテラン講師です。・参加者のレベルに応じて適切なアジェンダと時間配分をつくることができます。
③作業
・初心者向けのAI エージェントセミナーのアジェンダと時間配分をあなたが作成してください。④条件
・セミナーの時間は3時間、適宜10分間の休憩を挟むこと。・参加者は開発経験不要かつ知識がほとんどないので、基礎的な概念から説明してほしい。
・参加者によっては開発経験がないため、ハンズオンは入れないこと。
⑤出力形式(フォーマット)
“””【章番号】.【章名】【節番号】.【節名】
【内容】:【所要時間】
“””
⑥目的
・あなたの回答はセミナーを企画したことがない人が利用します。・なぜそのようなアジェンダにしたか、理由も記載してください。
ただし毎回長いプロンプトを入力するのは手間がかかるため、事前にシステムプロンプトへ観点を盛り込んでおくという方法や、生成AI にプロンプト案を添削させ、ブラッシュアップされたプロンプトで回答させるという方法も有効です。

[日経クロステック 2026年4月16 日付の記事を転載]
アビームコンサルティング(著)/日経BP/3190円(税込み)


