※この記事は、公開から数時間限定で、登録会員(無料)もお読みいただけます。詳しくはこちら

 血道を上げてでも損益を回復させる気概はないのか――。国内外で1万人規模の人員削減を含む構造改革を発表したパナソニックホールディングス(HD)。創業者・松下幸之助氏の教えから、これまで避けてきた人員削減に踏み込む。2021年の就任以降、「30年間成長がない」と幾度となく危機感を訴え続けてきた楠見雄規社長。そんな楠見氏に、社内にまん延する「甘さ」の存在を改めて突き付けた出来事が、リストラ発表の1年前にあった。

日本の産業史を代表する経営者で「経営の神様」とも称された、松下幸之助氏が興したパナソニックHDが揺れている。国内外1万人の人員削減を含む構造改革を打ち出したが、プロジェクター事業の売却撤回や車載電池工場のフル稼働延期など足元も揺らぐ。針路が見えずに漂流するパナソニックは、成長へ向かう歩みを進めることができるのか。その最前線を追う。

 パナソニックHDは例年、予算など次期の事業計画を年度が替わる数カ月前から協議する。24年度の事業計画についても、ホールディングス幹部への本格的な説明が例年通り、24年が明けると始まった。そこで楠見氏の前に並んだのは、回復しない中国市況など外部環境を原因とする「言い訳」だった。

 24年度は3カ年の中期経営計画の最終年度であり、楠見体制の真価が問われる年だった。津賀一宏前社長の後を継いで社長に就任すると、楠見氏は事業ポートフォリオの入れ替えを2年間封印すると宣言した。「売却されるかもしれない」という不安を取り除き、事業競争力の強化に専念してもらう狙いだった。5%という事業ごとの営業利益率目標も取り下げ、それ以上に大きく伸びる事業が生まれることを期待した。

 そんな準備期間を終え、大きな飛躍を期待したのが24年度だった。中計の年度別の詳細は示されていないが、当初の社内計画では24年度に大きなジャンプアップを想定していた。ところが、24年度は事業計画段階から23年度比微増にとどまった。着地は人工知能(AI)向けが好調で想定を上回ったものの、中計で示した3つの指標のうち、累積営業キャッシュフローこそ達成したものの、自己資本利益率(ROE)、そして累積営業利益は未達だった。株価純資産倍率(PBR)は解散価値とされる1倍割れが長く続く。

 もちろん、市場想定の変化という企業単体ではあらがえない事情もある。例えば大きな伸びを期待した欧州のヒートポンプ暖房では、市場自体が減少に転じるなど予期せぬ逆風もあった。それでも、何としてでも目標を達成する、という気概が見えてこない事業計画に、パナソニックHDが直面する病巣の大きさが改めて露見した。まさにそれは、楠見氏がこれまで何度も強調してきた「危機感の欠如」だった。

持ち株会社と事業会社の間にあった「甘さ」

この記事は会員登録(無料)で続きをご覧いただけます
残り2067文字 / 全文3274文字

【春割】5/18(月)締切迫る!

  • 月額プランなら最大2カ月無料体験
  • 年額プランなら今だけ10,700円お得
  • 有料会員ならすべての記事が読み放題