中学受験 前向きに試行錯誤し続けるには? SAPIX講師が指南

サピックス 溝端宏光
サピックス 溝端宏光
エジソンは「私は失敗していない。ただ、1万通りのうまくいかない方法を発見しただけだ」と言ったが……(イラストはイメージ)=ゲッティ
エジソンは「私は失敗していない。ただ、1万通りのうまくいかない方法を発見しただけだ」と言ったが……(イラストはイメージ)=ゲッティ

 皆様こんにちは。SAPIX小学部の溝端です。

 時間がたつのは早いもので、年が明けて中学入試が本格化したと思っていたら、いつの間にか入学式や入社式の時期も過ぎてしまいました。

 SAPIXでも、今年4月に新入社員の皆さんをお迎えしました。

 毎年、その年の新入社員に向けて、SAPIX小学部についての講演をする機会があります。私は2023年度からその講演を担当しており、今年が4年目なのですが、毎年、講演内容を変えています。各年度の講演タイトルは次の通りです。

 23年度「“稼げる人”になりましょう」

 24年度「SAPIXってどんな塾?」

 25年度「子どもを伸ばす“学び”の習慣」

 26年度「“学ぶ楽しさ”を力に変える SAPIX小学部」

 なぜ、毎年、話の内容を変えているのか。

 理由は簡単です。同じ話を繰り返すと自分が飽きてしまうからです(笑い)。

 話し手の満足が、必ずしも聞き手の満足につながるとは限りません。

 しかし、逆は言えます。話し手が楽しんで話せていないなら、聞き手も面白いとは思わないでしょう。話し手のマインドはなんとなく聞き手に伝わるものです。

 ですので、私はその時々の“これを話すと聞き手にも喜んでもらえるだろう”という思いを大事にしています。

授業をする溝端宏光さん=SAPIX提供
授業をする溝端宏光さん=SAPIX提供

楽しいことには前向きになれる

 少し話がそれましたが、今年の新入社員研修で話したことを今回は紹介したいと思います。

 以前からこのコラムでお伝えしていることですが、子どもたちが学んでいく上で、「前向きな姿勢で試行錯誤する」ことはとても重要です。

 では、どのようにすれば実現できるのでしょうか。

 小学生に、「将来を見据えた長期的な視野を持ちなさい」「自分がどうあるべきかをきちんと考えなさい」と伝えても、実行することは難しいでしょう。中学生や高校生になり、精神的に成熟してくれば、そういったことも可能になるのかもしれませんが、小学生にそれを求めるのは酷というものです。

楽しいことには前向きになれる(写真はイメージ)=ゲッティ
楽しいことには前向きになれる(写真はイメージ)=ゲッティ

 講演では、「前向きな姿勢で試行錯誤する」ためのポイントを二つ挙げました。

 一つ目は、「楽しいことには前向きになれる」です。

 役に立ちそうだから取り組む、というのもモチベーションにはなり得るでしょうが、自分が「楽しい」「面白い」と感じることにはより前向きに取り組めるものです。

 お子さまが「楽しい」「面白い」と感じているものは、大人の目から見ると、レベルが低く映ったり、勉強や入試とは関係ないものに思えたりするかもしれません。

 しかし、世の中に学びの要素がないものは存在しません。極端な例を挙げると、たとえゲームであったとしても、学びの要素は含まれているものです。

 お子さまの興味・関心をできる限り大事にしてあげることが、頭を活性化させることにつながります。

たとえゲームであったとしても、学びの要素は含まれている?(写真はイメージ)=ゲッティ
たとえゲームであったとしても、学びの要素は含まれている?(写真はイメージ)=ゲッティ

失敗は恐れるものではなく生かすもの

 二つ目は、「失敗は恐れるものではなく生かすもの」です。

 エジソンの言葉に「私は失敗していない。ただ、1万通りのうまくいかない方法を発見しただけだ」というものがありますが、とてつもないプラス思考ですよね。そして、この言葉からも、前向きに試行錯誤することの大事さが伝わってきます。

 保護者の方は、わが子が失敗しないように、自身の経験をもとに得た知恵をお子さまに伝えようとするものです。そのこと自体が悪いわけではありませんし、必要なことだと思います。

 しかし、そのアドバイスに即効性がないことは知っておかなければなりません。

 アドバイスをする側の保護者にとっては自身の経験に基づく「知恵」であるものも、聞き手のお子さまにとっては自身の経験を経ていない“人から伝え聞いたアドバイス”でしかありません。そのため、保護者が事前にアドバイスをしていたにもかかわらず、それを守らずにお子さまが失敗したり、遠回りの方法を選んだりすることが出てくるのです。

 このようなことが起こると、「だから言ったでしょ!」と言いたくなることでしょう。

 でも、こうした経験は必要なものなのです。一度自分で試してみて、「この方法だとうまくいく」「この方法はイマイチ」といった感覚を身につけることで、人から聞いたアドバイスが初めて実感のこもった理解に変わります。成長するために必要な経験なのです。

 このように、伝えたアドバイスがその子に響くまでにはタイムラグがあるのが通常です。

 そのことを理解した上で、明らかに危険なこと以外は、お子さまが遠回りや失敗をしたとしてもそれをとがめず、そこから何かを得ることを期待して見守っていただくとよいでしょう。

わが子にとって「何がよいか」を考え続けることが、保護者自身の成長にもつながる(写真はイメージ)=ゲッティ
わが子にとって「何がよいか」を考え続けることが、保護者自身の成長にもつながる(写真はイメージ)=ゲッティ

思考停止にならないためには…

 学びにおいて、思考停止にならないことはとても重要です。そして、思考停止にならないためには、前向きな姿勢で試行錯誤し続けることが大切です。

 冒頭で、新入社員に向けた研修の講演内容を毎年変えているとお伝えしましたが、実はこのことは、自身が思考停止にならないために自分に課していることです。

 常に新鮮な気持ちで講演できますし、その時々の“これを話すと聞き手にも喜んでもらえるだろう”という思いを大事にすることにもなりますので、自分にとっては趣味と実益を兼ねた話なのです。

 お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、ここまで書いてきたことは、実は、お子さまだけではなく大人にもあてはまります。

 新入社員研修では、自身の「楽しい」を大事にして前向きに試行錯誤すること、失敗や遠回りの経験から何を得るかを重視することが今後の成長につながる秘訣(ひけつ)であることを伝えた上で、「一緒に頑張りましょう!」と呼びかけました。

 今回は、保護者の皆様にも応援メッセージを贈りたいと思います。

 わが子にとって「何がよいか」を考え続けることはとても大変ですが、そのことが、お子さまのためになるだけではなく、保護者の方自身の成長にもつながります。

 お子さまの学びを通じて、親子で共に成長する経験をしていただけることを願っております。(SAPIX小学部・事業本部長、溝端宏光)

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