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JRRCマガジン No.466 2026/4/23
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◆今回の内容
【1】大和先生の「著作権に関する意識の普及啓発(著作権教育)について考えてみた」⑩
【2】第3回 JPCA-日本写真著作権協会 写真展について
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皆さま、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。
本日4月23日は「クラフトビールの日 / 地ビールの日」
1516(永正13)年4月23日に当時のバイエルン国王・ウィルヘルム4世が発布したビール純粋令により、
水・ホップ・大麦・小麦・の麦芽酵母だけがビールの醸造に使用することができるとされました。
このことが世界で初めてビールとは何か?を明確に定義したものだったことにちなんで、
「クラフトビールの日 / 地ビールの日」としてそれぞれ日本の記念日に制定されたそうです。
さて、今回は大和先生の著作権に関する意識の普及啓発(著作権教育)についてです。
大和先生の前回までの記事は下記からご覧いただけます。
https://jrrc.or.jp/category/yamato/
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【1】大和先生の「著作権に関する意識の普及啓発(著作権教育)について考えてみた」⑩
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千葉大学アカデミック・リンク・センター特任教授 大和 淳
【承前】
著作権教育の実践に当たっては,著作権が規制ではなく私権に関わる契約であるという意識が重要だという観点から,前回は,権利者による著作権の普及啓発のアプローチにおいても学習者に「法律でそう決まっている」という誤解をさせないための配慮や工夫が必要ではないかという提案をしました。
【既存の著作権普及啓発のための資料を活用して】
著作権の普及啓発のための教材には,文部科学省や文化庁が作成したもの,著作者の団体やコンテンツの流通事業者の団体が作成したもの,情報教育等の教育関係者が作成したもの,士業など法律実務関係者が作成したものなど,すでに様々なコンテンツが公開され,多くのものが無償で利用できるようになっています。態様についてもパンフレット,リーフレット,ポスター,クイズ,Q&A,ショート動画,解説動画など簡潔なものから詳細なものまでバリエーションも豊富です。
しかし,以前の号でも述べたとおり,「やってはダメ」「法律でこう決まっている」式のものも少なくありません。特にコンパクトなものについては,端的に印象付けようという狙いがおそらくあるのでしょうから,その傾向が強いような気がします(他方,長尺のものは,丁寧な説明が逆にくどかったり間延びしてしまったりして,授業にせよ職員研修にせよ,どうしても使い勝手が悪いと考えられがちです。)。
もちろん,著作権侵害は刑事罰が規定されている犯罪でもあるので「やってはダメ」というメッセージが間違っているというつもりはありません。ただ,教員の場合,著作権というテーマは専門性が高く難解なものだけにその扱いに悩み,できるだけ遠ざけておく方が無難という意識が働きがちになるようですし,企業等の職員研修の場合でも,法務担当者が説明する場合には,社内的にできるだけリスクを減らすためにコンプライアンスを狭く捉えてしまう面もあり,「べからず集」的な説明に留まってしまうこともあるそうです。
先に高等教育における課題について述べた際,学部等を問わず大学生に共通して必要な最低限度の内容のオンデマンド教材を開発してはどうかと提案しましたが,既存の様々な教材コンテンツのうち規制的・抑制的なメッセージ性の強いものであっても,活用法次第で有効な著作権教育ができるのではないかと思っています。
筆者の授業でも実践研究しているのですが,学生にアンケート調査をすると,著作権に関する学習経験については「やってはダメと教わった」と受け止めている(本当に教員からそのように教わったのか,学生本人がそう思い込んでいるのかまでは分かりませんが)者は少なくなく,おそらく学校の教育以外の規制的・抑制的なメッセージのコンテンツとも相まって,そのような印象を強くしているのではないかと推測しています。
SNSなどで流しっぱなしにしてそれを視聴する者の判断に委ねてしまうと,インパクトが強いほど「そうか,法律で禁じられているんだ」という誤解が刷り込まれてしまうおそれがありますが,講師と学習者との間で適切なコミュニケーションがあれば,一歩引いて,あるいは俯瞰して考えることができ,「○か×か」の二者択一ではなく許諾を得る契約を含めた応用に視野を広げていくことができると考えます。これも繰り返しになりますが,最近の若い世代はタイパ・コスパを気にして「どれが正解なのか」だけを知りたがりますが,著作権教育のねらいについて,私権であれば個人の数だけ正解があってもおかしくないということに気づいてもらうことを目標にしてはどうでしょうか。
講師と学習者との間の適切なコミュニケーションについては,分かりやすいものとしては「なぜ,このようなメッセージが発せられているのか」という問いから,単に「法で決まっているから」というのではなく背景を考察させたり,「君たちがクリエイターであるとするとどのような行動をとるか(アマチュアや新人時代の場合と売れっ子になった後の場合)」「もし法で規制されているのだとすると,どのようなことになるか」といった展開に広げたりすることが考えられます。いずれにしても「○か×か」ではなくいろいろな立場から想像力を働かせるような討論に誘導します。さらに興が乗ってくれば,再販制度の話,値切り交渉(契約自由の原則)の話,新しい技術の光と影の話,表現の自由と個人の権利の話などのような身近にありそうな話題で自分事に近づけていくと,法的な知識というよりも人と人との関係性で解決できる道も見えてくるように思われます。著作権法の目的である「文化の発展」というのはそのような延長線上にあるのではないかと考えています。
なお,学習者のタイプも様々ですので,今紹介したような考え方を基本としつつも,例えば規範意識が稀薄だとか,ルール違反の常習者だとかいう場合には,強面(こわもて)の教材により罰則で脅すような指導が必要な場面もあるだろうと思います。筆者としては,性善説に立って文化の発展にポジティブに考えることを第一義とし,場合によって(相手によって)性悪説的,あるいは一罰百戒的に罰則を強調することもあってもよいという発想で著作権の普及啓発を考えたいところです。
【契約への理解】
著作権の普及啓発には,権利制限規定の解釈よりも契約への意識づけが重要ではないかと考えていますが,最近の事例ではこのようなことがありました。
教育機関や行政機関等で学校だよりや事務事業の説明資料等による広報活動をする際,インターネットを通じて提供されているイラストを素材として用いた結果,イラストレーターから損害賠償を請求されたという事案が,ここ数年前から全国各地で発生しています。当然,研修会ではそのことが話題になり,解決策(予防策)として「イラストや写真の素材サイトの利用規定をよく読みましょう」ということが結論になるわけですが,参加者の話を聞いてみると,「利用規定に定められている(無料で利用できる)条件に従ってイラストや写真の素材を利用すれば,許諾を得なくても著作権侵害にならない」と理解している人が結構いるようです。利用規定に定められた条件に従って利用するということは,当事者間で事実上の申込みと承諾があり,簡易ではあるものの契約が成立しているわけですが,そのような自覚がないようです。
かつては商店街の八百屋や魚屋で買い物をする際,「端数を切り捨てて」とか「1匹おまけして」とかいった値切り交渉が日常的に行われていましたが,今ではコンビニやスーパーで買い物をする際,商品の値札に表示された金額を了解して(値切り交渉をすることもなく)その商品をレジに持参するのが当たり前ですが,これも契約です。イラストの素材サイトもそれらと同じですが,利用規定の「無料」を確認することによって契約の概念から抜け落ちてしまうのでしょうか。「無料」というのは契約の中の条件のひとつにすぎないのですが,「無料」と「無断」が混同してしまうことがあるようです。
それと似たような話で,動画投稿サイトなどのSNSでは,投稿する動画に音楽が収録されている場合,法的には動画を投稿する者が音楽の公衆送信について権利処理をする責任がありますが,サイト運営事業者の多くは個々の投稿者に代わって音楽の著作権者(著作権等管理事業者)に対して包括的な使用料を支払い許諾を得ています。このことについてかなりの投稿者は知らないのではないでしょうか。筆者はこのような契約上の取り扱いをしていることを周知することも著作権教育の一つであり,音楽著作物の権利保護と円滑な利用のために関係者が取り組んでいることについて,著作権等管理事業者やサイト運営事業者がもっと積極的に発信してもよいのではないかと思っています(ただし,そのような包括的な権利処理の代行が行われているのは著作権だけであり,実演やレコードの著作隣接権としての送信可能化までは行われていないため,CD音源などを用いた音楽の投稿の場合には原則どおりということになります。
その点で必ずしも(利用者にとって)完璧とはいえないので,積極的な発信が難しいのでしょうか。)。音楽を利用する場の提供ということについて,いわゆるカラオケ法理の妥当性や限界について議論がありますが,インターネットを利用した音楽の利用では場の提供者(サイト運営事業者)の責任は無視できず,裁判例でもKYC(Know Your Customer)の重要性が指摘されていますので,利用者もそのことを理解しておく必要があるように思います。
分かりやすい例としてイラストや音楽の利用を取り上げましたが,契約を結ぶこと,そしてその方法については合理的なものを工夫すること(その余地があること)を理解することも著作権の普及啓発にとって大切ではないかと考えています。
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【2】 第3回 JPCA-日本写真著作権協会 写真展について
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当センター関連団体である日本写真著作権協会による写真展が、下記のとおり開催されます。
ご興味のある方は、ぜひ足をお運びください。
【 第3回 JPCA-日本写真著作権協会 写真展 】
期間:2026年4月28日(火)~ 5月10日(日)
場所:JCIIクラブ25
東京都千代田区一番町25番地JCIIビルB1
開催時間:10:00 ~ 18:00
費用:会期中無休 / 観覧無料
主催: 日本写真著作権協会
日本で初めての写真著作権管理機構として誕生したJPCAは、
日本を代表する写真11団体を会員とする組織です。
第3回となる本展覧会では、各会員団体の有志による出展に加え、
石黒健治、中谷吉隆、英伸三、田沼武能(JPCA前会長)、
松本徳彦(JPCA元専務理事)、瀬尾太一(JPCA前常務理事)らの作品も展示予定。
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