Watch & Jewelry

カルティエの「トリニティ」 3色に込めた3つの絆

ジュエリー名品図鑑

Vol.5

2025.4.15

人生をともに歩むパートナーとして愛用でき、時代を超えて受け継がれる「ジュエラーの名品」を紹介する本連載。今回は、2024年に誕生100周年を迎えたカルティエ(CARTIER)の伝説的コレクション「トリニティ」にフォーカスを当てる。ホワイト、イエロー、ピンクの3色のリングが滑らかに絡み合い、調和するデザインは、多様な愛や絆を象徴。ミニマルなたたずまいの中に、奥深い世界観を秘めたアイコンの魅力を、歴史や語り継がれるエピソードとともに紐(ひも)解く。進化を続けるコレクションはバリエーションも豊富。併せて、新作や注目したい名品も見ていこう。




2024年で誕生100周年に 3色のリングが生んだ革命

カルティエの「トリニティ」は家族、友人、恋人、パートナーなど、多様な絆を象徴するジュエリー

100年以上にわたり愛され続けてきたカルティエの名品「トリニティ」が誕生したのは1924年。ブランド創業者の孫であるルイ・カルティエによってデザインされた。

1924年にルイ・カルティエがデザインした、プラチナ、イエローゴールド、ピンクゴールドからなる初代「トリニティ」リング(編集部注:白黒写真)

プラチナ、イエローゴールド、ピンクゴールドという3色の環(わ)が滑らかに絡み合い、指の動きに合わせて可動する3連リングは、当時としては非常に画期的だった。

宝石を贅沢(ぜいたく)にあしらった装飾的なジュエリーが主流だった時代において、無駄をそぎ落としたピュアでミニマルなフォルムは、鮮烈なインパクトを持って登場。

ピュアな美しさのミニマルなデザインは、1世紀を超えても斬新。「トリニティ」リング、ラージモデル(ホワイトゴールド×イエローゴールド×ピンクゴールド) 55万円(2025年4月現在の価格)/カルティエ(カルティエ カスタマー サービスセンター)

人間工学に基づく着け心地の良さ。そして、洗練を兼ね備えた「トリニティ」のジュエリーは、一大センセーションを巻き起こし、カルティエの象徴となった。

1925年の米「ヴォーグ」誌に掲載された広告。3本のゴールドの環からなるリングとブレスレットに「トリニティ」の名称が使われた

詩人ジャン・コクトーが愛した「お守り的存在」

そんなモダンな感性にいち早く魅了されたのが、詩人で小説や舞台芸術のほか、映画、美術などでも活躍したフランスの芸術家、ジャン・コクトーだ。彼は「トリニティ」のリングを2本、小指に重ねて着け、まるでお守りのように日常的に愛用していたという。

小指に「トリニティ」のリングを2本重ねて愛用したジャン・コクトー

当時のカルティエのパリ・ブティックは、知識人や文化人が集うサロンのような存在で、コクトーもその常連の一人だった。コクトーのような気鋭の芸術家たちの支持を得たことが、「トリニティ」を特別なジュエリーへと昇華させるきっかけとなった。

グレース・ケリーやアラン・ドロンも愛用

右手の薬指に「トリニティ」のリングをまとったグレース・ケリー

その後も、ハリウッド俳優からモナコ公妃となったグレース・ケリー、「世界最高峰の女優」として名をはせたロミー・シュナイダー、二枚目俳優として知られたアラン・ドロンといった、名だたるセレブリティーたちが、こぞって着用。

カルティエのアイコンとして、その地位を確固たるものにしていく。

ピンキーリングとして「トリニティ」の3連リングをまとった俳優のアラン・ドロン

1970年代に入ると、よりプレシャスな素材を用いたものから手の届きやすい価格帯のモデルまで、幅広いジュエリーが発表され、世界中で「トリニティ」人気がより一層高まっていった。

1970年代には、「マスト ドゥ カルティエ(カルティエで欠かせないアイテム)」シリーズが誕生。手の届きやすい価格帯のアイテムのほか、ライターなどのライフスタイルアイテムも登場