「シルバージュエリー」はゴールドやプラチナに比べると価格が手ごろなこともあり、若い人が初めて手にするファーストジュエリーの印象が強い。加えて、メンズジュエリーのハードなイメージもある。大人の女性がシルバージュエリーに関心をもたない理由は、自分たちのものではないと思っているからだ。しかし、その魅力と価値を知れば、きっと興味が湧いてくる。
「シルバー=銀」は長い歴史と伝統をもつ金属で、紀元前3000年ごろから宝飾品や通貨として使われていた。19世紀末、高級宝飾の世界にプラチナが登場すると、シルバーに代わり主流となっていく。だが、20世紀初頭に活躍したアールヌーヴォーの作家たちは、ジュエリーや工芸品の素材としてシルバーを好み、使用し続けた。銀特有の月あかりのような輝きと細工のしやすさが魅力だったのだ。また、北欧には銀工芸を専門とする著名なデザイナーも現れ、シルバージュエリーの伝統は現代まで受け継がれていった。
これからの季節、シンプルな装いを簡単かつスタイリッシュにクラスアップするには、量感のあるメタルジュエリーが効果的だ。そのなかでもシルバージュエリーは、白い輝きが軽やかな印象を与えてくれる。
数千年かけて鋳造、加工などの技術を高めてきたシルバーは、品質的にも安心できる金属だ。さらに現実的な話をすれば、ボリュームのあるジュエリーもシルバーなら比較的容易に手が届く。
万国博覧会での銀器で名声を高めた「ティファニー」

世界のトップジュエラーのなかで唯一、シルバージュエリーの名品がそろうのが「ティファニー」だ。ティファニーとシルバーの関わりは古く、創業時まで遡る。
1837年、ニューヨークで誕生したティファニーは、当初、ヨーロッパの銀器や工芸品、宝飾品、文具などを幅広く扱うファンシーグッズ・ショップ(高級雑貨店)だった。有名ブランドの創業者はたいていが職人かデザイナーだが、ティファニーの創業者チャールズ・ルイス・ティファニーは商人だったことが興味深い。だからこそ、大胆な発想で道を切り開くことができたのだろう。カタログによるメールオーダーを始めたのも、ブランドのイメージカラーを定めたのもティファニーが最初だ。そんなビジネスセンスのある創業者がシルバーに着目したのは、世界進出のためだった。
ティファニーは1850年代に銀細工の工房を職人ごと買収すると、60年代にデザイン部門を設立。自社工房で製作したオリジナルデザインの銀器を、世界の国々が参加する万国博覧会に出品し、それらが数々の賞に輝いたことで名声を高めていった。
1851年には、自社の「スターリングシルバー」の純度基準を925/1000(92.5%)と制定。それがのちにアメリカの公式基準となる。「スターリング」とは「信頼のおける」「本物」の意で、スターリングシルバーは92.5%の銀に対して、割り金である銅を7.5%加えた銀合金のことをいう。やわらかい金属である銀はそのままでは加工しにくく、耐性も低い。合金となることで硬度を高め、ジュエリーとしての美しさを保てるようになるのだ。
ティファニーにおけるシルバーの伝統は、高度な製作技術と共に工房に受け継がれてきた。そして1970年代、ひとりの稀有(けう)な才能をもつデザイナー、エルサ・ペレッティの登場によって、シルバージュエリーは新たなステータスを与えられることとなる。




















































