台湾の大手半導体メーカー、TSMC(台湾積体電路製造)の工場進出で注目を浴びる熊本県は、豊かな自然と風土が国内外の人々を魅了する日本有数の観光地を抱えています。加えてモビリティーの分野でも独自の存在感を世界に示す、意外な一面も備えています。今回のA RIDE FOR FUNでは、その熊本の現状を考察してみたいと思います。
熊本県では阿蘇の豊富な水資源を生かした電子部品・デバイス産業が盛んですが、それと並んで自動車産業も大きな存在といえます。なかでも二輪自動車の出荷額は都道府県別で全国1位を誇る規模です。その主な理由は、ホンダの二輪車・パワープロダクツ事業のグローバルマザー工場である熊本製作所(通称:熊製=くませい)が、阿蘇の玄関口である熊本県大津町にあるからです(冒頭写真)。ここは二輪を祖業とするホンダにとって、文字通り基幹事業の要となる工場なのです。
1976年に操業を開始した熊本製作所は、ホンダにとって4番目の製作拠点です。二輪車生産台数は昨年5月16日に累計2000万台に達しました。車種はエンジン排気量50ccのコミューターから1800ccの大型バイクまで幅広く生産しています。
2008年には国内の二輪生産を当時の浜松製作所からここ熊本製作所へ移管・集約し、その後、北米や欧州からも大型モデル生産を移した経緯があります。現在、ホンダにとっては世界唯一の大型モデル生産拠点であり、ここから世界約60カ国へ輸出しています。まさに世界中でバイクファンを生み続ける拠点といっても過言ではありません。
熊本製作所はホンダの工場の中でも敷地が最も広く、自然環境にも恵まれています。「カーボンニュートラル」(温暖化ガスの実質排出ゼロ)「クリーンエネルギー」「リソースサーキュレーション(資源循環)」を3本柱に環境負荷ゼロ社会の実現に取り組むホンダにおいて、その具体的な施策を実行する先駆的な工場という役割も果たしています。
阿蘇山が生む豊かな水資源
この豊かな自然環境を支えるのは、日本有数の火山である阿蘇山を由来とする豊富な水資源です。阿蘇山は約27万年前から約9万年前にかけて4度の巨大噴火を起こし、大規模な火砕流が大地を覆いました。熊本地方には日本の平均降水量を上回る雨が降ります。大火山が生んだ、水の浸透しやすい地層が、豊富で良質な地下水を蓄える「水がめ」になりました。そして世界に誇る地下水都市・熊本を生み出したのです。
74万人が住む熊本市は、市民の水道水の100%を地下水で賄っています。人口50万人以上の都市としては日本で唯一、そして世界でもまれな地下水都市なのです。実はその誕生には自然の恵みのみならず、熊本城を築いた加藤清正公も一役買っています。
約430年前、肥後に入国した清正公は、白川中流域(大津町・菊陽町など)に堰(せき)や用水路を築き、大規模な水田開発を行いました。その後も加藤家や細川家の子孫らによって開発は受け継がれます。白川中流域の土壌は通常の5〜10倍も水が浸透しやすいため、水田開発によって大量の水が地下に供給されることになりました。つまり阿蘇の自然に人間の手による土木工事が重なったことで、たぐいまれな「地下水の都」が出現したというわけです。
製造業の話に戻れば、半導体も自動車も、水資源をはじめとする豊かな自然環境が工場運営にもたらす恩恵は計り知れません。サステナビリティーとは人間の経済活動と自然環境の相互作用によって成立するのだ、ということが、熊本の製造業の現状観察を通じて痛感させられます。
爽快なツーリングスポット ライダーを魅了
さて、この阿蘇山周辺は「バイクの聖地」とも呼ばれています。ホンダ熊本製作所の存在に加え、日本中のライダーを魅了する「阿蘇パノラマライン」や「ミルクロード」といった絶景ロードのほか、ツーリングスポットが数多くあるからです。

阿蘇パノラマライン・阿蘇吉田線から見える米塚
とりわけライダーの人気が高いのは県道39号線の通称「ケニーロード」。1978年から1980年に世界グランプリ(GP)3連覇をなし遂げ、「キング・ケニー」の愛称で親しまれるアメリカの伝説的ライダー、ケニー・ロバーツが愛するツーリングロードです。正式名称は「グリーンロード南阿蘇」。見晴らしの良い展望所にはケニー氏の看板が立っています。阿蘇五岳と巨大カルデラが織りなす、雄大で美しい風景の中を疾走すれば爽快な気分に満たされます。




















































