パソコン上のフォルダーを開くと、あまりの量の多さに言葉を失った。表示されたのは数千枚の顔写真。ある女性は泣き腫らして目が真っ赤だ。幼さが残る少年の顔はおびえているように見える。深いしわが刻まれた年老いた女性は、亜麻色の瞳でレンズを真っすぐ見詰めていた。不安や恐怖、戸惑いがそこにあった。
収容実態語る「空前絶後」の資料流出
これらの顔写真は、中国新疆ウイグル自治区で暮らす少数民族のウイグル族らが、再教育施設などに送られる際、中国当局によって一人一人撮影されたものだった。中国当局は、テロ思想の影響を受けている「危険な人物」だとして大勢の人を「塀」の向こう側に送った。だが、目に涙をたたえたりしている人々は、普通の生活を営んでいる市民にしか見えなかった。
ウイグル族らの収容政策を巡る中国当局の内部資料「新疆公安ファイル」。それを手にしたのは今年3月上旬だった。この電子データには中国共産党幹部の発言記録や、収容施設の内部写真、2万人分以上の収容者リストなど膨大なファイルが収められていた。
自治区の公安当局のコンピューターから第三者によるハッキングで流出したファイルは、流出資料の分析をしてきた在米のドイツ人研究者、エイドリアン・ゼンツ博士の手に渡り、世界の14の報道機関に提供された。
上海特派員として新疆の取材経験があった私もファイルを手にした。「これほどの規模の資料流出は前例がない。空前絶後だ」。盗聴されぬよう通信を暗号化したアプリで連絡を取ると、ゼンツ氏はそう語った。
同様の内部資料は、これまでに7度流出している。中国当局の監視が強まり現地での自由な取材が困難になる中、それらの資料は秘密のベールに包まれた統治の実態を少しずつ明らかにしてきた。
「新疆公安ファイル」は、収容政策が本格化していった主に2016年から18年にかけて中国当局が作成したものだ。「最後まで反動的なら死の道があるのみだ」。収容政策で重要な役割を果たした自治区トップの陳全国・党委書記(当時)の厳しい姿勢を示す言葉が発言記録には残っている。収容施設の内部写真には、手錠や足かせ、覆面をつけられた男性が、当局者に取調室へと連行される様子が映し出されていた。
連絡途絶えた故郷の家族
「もしかしたら私の家族が死んでいると、そこには書いてあるんじゃないですか?」。オンライン取材の最後、画面に映るヌルシマングル・アブドゥレシッドさん(34)が私に尋ねた。自治…
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