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新疆ウイグル問題

中国・新疆ウイグル自治区で深刻な人権抑圧が続いています。現地で何が起こっているのか、世界の目が向いています。

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中華民族として生かされる ウイグル統治政策のグロテスクさ

2013年10月の新疆ウイグル自治区カシュガル地区のバザール。キルギスやタジキスタンなど中央アジアが目の前にある=隅俊之撮影
2013年10月の新疆ウイグル自治区カシュガル地区のバザール。キルギスやタジキスタンなど中央アジアが目の前にある=隅俊之撮影

 中国新疆ウイグル自治区で少数民族のウイグル族らに対する人権侵害が指摘される問題で、中国政府は「再教育施設」の運用は2019年後半には終了したと説明しています。

 新疆での統治政策の本当の問題点はどこにあるのか。法政大の熊倉潤准教授は、中国政府の目的は「中華民族と言う共同体で生きていくこと」を強いることにあるのではないかと指摘します。インタビュー上下回の下です。【ニューヨーク隅俊之】

 ――自治区では多くのウイグル族も幹部として登用されてきました。古くは自治区政府の初代主席に就任するなど重用されたセイフディンらも挙げられます。目的はどこにあるのでしょう。

 ◆中国共産党からすると、漢族が指導者として新疆を見ておく必要は絶対にあるんですね。ただ、漢族だけで治めるとなると、自分たちで言っている「自治」を否定することになる。だからある程度までは「自治らしく」しておく必要があるのです。民衆をつなぎ留めるためにもウイグル族の登用が必要なのです。

 セイフディンがなぜ重用されたかというと、ソ連の存在が大きかったからです。彼はソ連共産党員でもあり、ソ連とつながりがありました。中国とソ連は同じ社会主義国家という共通点はありますが、ライバルとして対抗する相手でもありました。連邦制をとり、民族国家がまがりなりにも成立していたソ連の自治よりも、中国の自治の方が優れていると言いたかったというのがあります。

 ――新疆の人々のソ連に対するシンパシー(共感)は強かったのでしょうか。

 ◆かなり強いです。逆に言うと、ウイグル族の中国に対するシンパシーはあまりありません。イスラム教徒の人からすると、例えば(漢族が大部分を占める)中国人は豚を食べるので汚いというイメージが最初にきてしまう。自分たちの世界の外にいる人という感じで、理解しがたいのです。古代から中国王朝とある程度の関わりはあったのに、漢字も儒学も普及しませんでした。

 新疆の人々にとって文明は、イスラム文明にせよ西洋近代文明にせよ、(彼らから見て)西から来るものなのだという発想があります。それを近代において仲介したのがかつてのロシア帝国であり、ソ連だったのです。抑圧的な支配は東から来て、文明は西から来るというイメージがあるようです。

抑圧の裏には自信のなさ

 ――自治区で取材をしていた時、人々は自分たちの文化や慣習に対する尊厳を求める気持ちは強かったですが、中国から独立したいという人が多かったかというと、そうでもなかったと思います。

 ◆共産党の体制内にいるウイグル族は既に多数います。共産党員になったウイグル族も万単位でいる。入党は1950年代から続いていますから、もう4世代にわたって共産党員だという一家もいるわけです。

 ですから共産党の支配が始まって70年以上たついま、完全に共産党とたもとを分かって独立しようという考えの人は、何割だというのは難しいですが、かなり少ないのが現実だと思います。

 一方で、共産党政権の視点から見れば、ウイグル族の人々が本当のところ、政権に対し満足しているのか、独立を考えているのかも含めて自信がない…

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