「光る君へ」で再び脚光 海峡の町で続く「聖地巡礼」
光源氏が住んでいた館、月見をした場所――。「源氏物語」明石の巻の舞台になった兵庫県明石市内に物語ゆかりのスポットが複数存在する。NHK大河ドラマで作者・紫式部を取り上げた「光る君へ」で注目を集め、地元観光協会に問い合わせが相次いでいる。物語は1000年以上前のフィクションだが、江戸時代後期の旅行案内本でも縁の深い場所として紹介されている。「聖地巡礼」は時代を超えて楽しまれている。
「ここは光源氏が『明石の上』という女性のお宅に通った『蔦(つた)の細道』と呼ばれる小道。この裏が住まいだったそうです」。明石観光協会のボランティアガイド「ぶらり子午線観光ガイド連絡会」メンバー、中里登志子さん(63)が案内してくれた。
JR明石駅から南西へ約1・5キロ、港町の一角に神社仏閣が居並ぶ。市の立て看板には「光源氏の恋の通い道」と説明書きがある。その住まいとされた無量光寺境内には源氏稲荷(いなり)のほこらが鎮座。ここで月見をしていたらしい。
隣の善楽寺には、門から入ってすぐ脇に風化した石碑が建っている。その横の「明石入道(あかしのにゅうどう)之碑」と書かれた比較的新しい石碑の裏には、古い碑に刻まれていた歌が紹介されている。「いにしへの 名のみ残りて 有明の あかしの上の おや住みしあと」
明石入道は登場人物の一人。現在の兵庫県南西部の播磨国の元播磨守で、地元の有力者という設定だ。都落ちしてきた光源氏を邸宅に住まわせ、娘の明石の上(明石の君)に近づけて復権を画策した。
明石の巻には当時の明石地域と周辺の描写がたびたび出てくる。「浜のさま、げにいと心ことなり。人しげう見ゆるのみなむ、御願ひに背きける」(浜の様子は実に際立っている。人が多いことだけが希望に沿わない)などだ。淡路島が対岸に見えることや、明石の上が住む館(現在の神戸市西区)まで馬や車で行く距離といった描写もある。いずれも地理感覚がないと記述は難しそうだ。
地域の歴史に詳しい明石市立文化博物館の学芸員、浜室かの子さんによると、紫式部と明石との関係は…
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