薬の開発で動物実験は減らせるか? 進む培養細胞やAIの導入
薬の開発ではヒトに投与する前に、動物実験で安全性が確認されてきた。だが製薬業界では近年、ヒトの培養細胞や人工知能(AI)を用いた代替法によって、動物実験を減らそうとする議論が本格化しつつある。背景に何があるのか。
動物とヒトの反応に違い
「新たな治療の開発が効率的になり、安全性を正確に予測でき、何千頭もの動物の命が毎年救われるだろう」――。今年4月、米食品医薬品局(FDA)が動物実験の段階的な廃止を目指すロードマップを公表した。マカリー長官は代替法への期待についてこうコメントした。
薬は体内に取り込まれ、患者の命に直結する。重い副作用が出ないかなどを動物実験で慎重に確認したのち、ヒトの臨床試験に進む。
動物実験では、数の削減、苦痛の軽減、代替を目指す「3Rの原則」が求められてきた。代替法が注目される背景には、動物福祉に対する関心だけでなく、「抗体医薬」と呼ばれる薬の存在感が増していることが関係している。
抗体医薬は、異物を排除するヒトの免疫反応を応用した薬だ。がん細胞などの表面にある標的(抗原)を抗体が狙い撃ちし、副作用が少ないなどの利点がある。がんの他、感染症やアルツハイマー病、関節リウマチなど、幅広い治療に使われている。
ただし抗原はヒトの体にしかないものもある。合致する抗体を作っても、動物の体内では異物として認識されかねず、動物実験ではヒトでの反応を予測しづらい。海外では過去に、動物実験で安全性が確認されていたものの、臨床試験の参加者が炎症反応による多臓器不全を起こした事故もあった。
こうした中で米国では2022年、薬の承認申請で義務づけられてきた動物実験を必須としない法律が成立した。FDAは25年4月に公表した計画で、まずは抗体医薬から代替法を導入し、他の薬にも広げる方針だ。製薬企業に対し、代替法を使ったデータの提出も促している。
「ミニ臓器」で代替
抗体医薬の国内トップシェアを誇る中外製薬(東京都中央区)の担当者も「動物実験だけで安全性を調べるのは限界がある」と認識する。
同社は既に複数の代替法を取り入れている。その一つが、…
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