新刊「首都圏は米軍の『訓練場』」1章⑦ うってつけの撮影場所
9月に出版された「首都圏は米軍の『訓練場』」(藤原書店)のプロローグ及び1章を毎日新聞デジタルで全文配信します。
第1章 黒鷹<ブラックホーク>
⑦■至近距離で撮れるうってつけの場所
2020年8月11日の朝、<撮影拠点>に入ったわたしは、いつものように赤坂プレスセンターのヘリポートに目を落とした。ヘリの飛来の兆候となる送迎車は来ていない。しばらく退屈しそうだ。よく晴れた日で遠くまで見通せた。キャンプ座間のある神奈川方面に富士山がはっきり見える。その裾野に広がる山々の稜線(りょうせん)から黒い点が浮かんだのをわたしは見逃さなかった。撮影を重ねるうちに目が慣れてきたのだ。
ブラックホークは1機。7月9日に目撃した2機と同じコースをたどっている。渋谷駅周辺から山手線内の都心エリアに進入し、<撮影拠点>のフロアの横を通過して死角に入った。フロアからは池袋、新宿、渋谷など都心の西側半分は見わたせるが、東京湾側の東側半分が死角になっている。
■新宿のビル群近くを5回通過
6分後、前回と同じように池袋方面から姿を現し、南下しながら新宿の高層ビルの手前を低空で通過していく。ビル群の南端にある「東京オペラシティ」ビルに差しかかる。このビルを過ぎればあとは神奈川方面に飛び去るだけだ。前回のコースと全く同じ――そう思ったが、ブラックホークはビルの直前でライトを点滅させながら減速した。
「えっ、旋回……」
思わず声が出た。Uターンすると、同じコースを逆にたどってビル群を通過していく。池袋方面からまた死角に消えた。
わたしはビルの中を走った。死角になっている都心の東側を見るためだ。窓という窓に目をやるが機影はない。見失った――あきらめかけた瞬間、窓の向こうで黒い影が動いた。ブラックホークはまた池袋方面に向かっていた。慌てて西側が見えるフロアにとって返す。冷房が効いているのに汗が止まらない。
ブラックホークは新宿に戻ってビル群を通過した。もう3回目だ。今度は進路を赤坂プレスセンターのある東に変え、ヘリポートに着陸した。ヘリポートの脇で待機していた迷彩服と作業着姿の男女6人が乗り込むとすぐに離陸し、基地のある神奈川方面に向かって飛んだ。
だが、これで終わらなかった。…
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