戦後80年の節目となった2025年が暮れる。日本人だけでも約310万人が命を落とした先の大戦。その惨禍を振り返り、教訓をつなごうと、多くの報道や書籍、作品が発表された。一方、世界では戦火が絶えず、対立や分断が深まる。私たちはこれから何を伝え、何を考えていけばいいのか。今年7月に刊行した新書「『あの戦争』は何だったのか」が話題となった近現代史研究者の辻田真佐憲さんに聞いた。【聞き手・平川昌範】
80年の節目に起きたこと
今年は戦後80年の節目でしたが、大きな関心が集まったとは言えないと思います。戦争体験者が減り、一方で新しい戦争が世界で起きている中で「今、なぜ80年前の話なのか」という空気感が強まったためでしょう。今後、さらに関心は薄れる。今年はあの戦争を振り返る最後の機会だったのかもしれません。
10月10日に石破茂首相(当時)は「戦後80年に寄せて」と題した所感を発表しましたが、それほど話題にはなりませんでした。最も注目されるはずの8月15日に発表できず、しかも、同じ日に飛び込んできた公明党の連立政権離脱のニュースにかき消されました。閣議決定による談話ではなく、所感という曖昧な形で、内容も中途半端だったと言わざるを得ません。
政治家は歴史を踏まえた上で何を言うかが重要です。戦後70年の安倍晋三首相(当時)の談話は、彼なりの歴史観をまとめた上で「だからこそ積極的平和主義をやるんだ」という論理になっていました。今回の所感は石破氏が何をやるのかという点が希薄でした。当時の内政についての言及が中心で、党内からの批判を避けるためか、外国との関係にもほとんど触れませんでした。
80年前の戦争への関心は高くないにもかかわらず、7月に出版した私の著書「『あの戦争』は何だったのか」には予想を上回る反響がありました。あの戦争に関する書籍は、専門的で一般読者にはハードルが高いものとイデオロギーに偏って粗雑なものに二極化しています。その中間を狙い、戦争の俯瞰(ふかん)図を示したことが「戦後80年だし、1冊くらいは読んでみよう」…
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