雑草から見える社会 その魅力を伝授する台湾の2人組=鈴木玲子
雑草の魅力を伝えようと台湾で活躍する2人組がいる。アートチーム「雑草稍慢 Weed Day」の林芝宇さん(40)と頼瑋婷さん(31)だ。各地で雑草を摘んで「雑草茶」を作るなど植物採集のアーティストとして活動している。雑草を通して人と自然のかかわり、社会の在り方を問い直している。
「これは台北市の太平小学校で摘んだ雑草をブレンドして煎じたお茶です」。頼さんが鍋で煮た雑草茶を来場者に振る舞っていた。2人は2025年11月、東京で開催されたイベント「世界薬草博」に参加。その前日祭では雑草茶を提供し、自分たちの活動を紹介した。聞き手は薬草を研究する新田理恵さんだ。来場者は、2人が語る雑草の話に聴き入っていた。
そもそも、なぜ雑草なのか。頼さんは「野草と聞くと身体に良い効能があるようなイメージを抱くと思う。人間に有益だと野草などと呼ばれ、自分に必要がなければ雑草と呼ばれている。でも、私たちは『雑』は万物を網羅し、内包する文字だと思う。だからこの『雑』を大切にしている」と説く。人間にとって不都合な場所に生えると、ひとくくりに「雑草」と呼ばれ「悪者扱い」される。そこに異を唱える。
2人の活動拠点「雑草町Grassland」は台北市の下町商店街の一角にある。古い建物を改装し、畳敷きの広い空間がなんとも心地よい。一見すると喫茶店だが、出される雑草茶の値段は書かれていない。お代はなんと客の投げ銭だ。林さんは「もうけが目的ではない。雑草の魅力を伝え、地域の憩いの場、街角の公民館にしたい」と話す。
「環島」で知った土地の魅力
台湾で大手企業に勤めていた林さんは14年、仕事に疲れて台湾本島を一周する旅に出た。相棒は古びた自転車だ。台湾では自転車やバイクなどで島を一周する旅を「環島」と呼ぶ。海岸線や街並みを巡る体験が人気を集める。多様性に富んだ台湾の土地の魅力を再発見し、自らのアイデンティティーを見つめ直すことにもつながるからだ。
林さんは旅先で、畑で厄介物扱いされている雑草を見て興味を持った。「人間に排除されても、その土地に根付いた植物なのに」。…
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