連載

24色のペン

国内外の異なる部署で取材する24人の記者が交代で手がけるコラム。原則、毎日1本お届けします。

連載一覧

24色のペン

よみがえるホルムズ海峡での38年前の悪夢=鵜塚健

空爆で破壊された女子小学校で救助活動をする人たち=イラン南部で2026年2月28日、WANAロイター
空爆で破壊された女子小学校で救助活動をする人たち=イラン南部で2026年2月28日、WANAロイター

 ナツメヤシやマンゴー、オレンジが豊かに実る温暖な地だ。イラン南部ホルムズガン州の町ミナブ。2月28日午前10時すぎ、悲劇は起きた。女子小学校にミサイルが撃ち込まれ、170人以上の児童らが亡くなった。大半は7歳から12歳だった。当初、トランプ米大統領は根拠もないまま「イランの仕業だ」としたが、米メディアの検証によると、米軍による攻撃の可能性が高い。

女子小学校を襲った2発のミサイル

 中東専門メディア「ミドル・イースト・アイ」によると、攻撃は2度にわたる。1発目の攻撃で難を逃れた児童たちが、教師の指示で礼拝室に避難。連絡を受けた父母らも学校に向かっていた。そこに2発目のミサイルが襲い、多くの子どもが息絶えた。

 「しっかり握っていた通学バッグで私の娘とわかった。娘は完全に焼け焦げ、何も残っていない」。父親のロホラさんは現地記者にこう語った。「娘は『将来は必ず医師になる』と話していた。私が病院代を払わなくてもいいようにと」。ロホラさんは仕事から帰り、娘の笑顔を見るのが救いだったという。「私の痛みをいつも和らげてくれた。娘は既に小さな医師のような存在だった。これから私はどうやって生きていけばいいのか」

 学校名の「シャジャレ・タイエベ」は、アラビア語由来のペルシャ語で「清らかな木」を意味する。これから豊かな実をつけるはずの幼木たちが2発のミサイルでなぎ倒された。遺体の収容場所が不足し、一部の遺体は冷蔵トラックに保管されたという。3日後に地元で行われた女児たちの追悼式には、イラン国旗がかけられた小さなひつぎが並んだ。

 現場近くにかつて軍事関連施設があり、米軍が誤爆したとの見方が強い。トランプ大統領は「差し迫った脅威を取り除く」とイラン攻撃の理由を語ったが、脅威とはほど遠い女子小学生が犠牲になった。国連安保理決議も米国議会の承認もないまま始まった攻撃に正当性は乏しい。

米軍艦がイラン民間機を撃墜

 ミナブから南に20キロほど行くとホルムズ海峡にぶつかる。女子小学校で起きた惨劇は、38年前に起きた悪夢をよみがえらせる。イラン・イラク戦争中の1988年7月3日午前10時すぎ、バンダルアバス発ドバイ行きのイラン航空655便が飛び立った。すると、ホルムズ海峡で警戒中だった米軍艦がイランの戦闘機と見間違えて2発のミサイルを発射し、…

この記事は有料記事です。

残り1203文字(全文2170文字)

あわせて読みたい

この記事の特集・連載

この記事の筆者

すべて見る

アクセスランキング

1時間
24時間
SNS

スポニチのアクセスランキング

1時間
24時間
1カ月