必要なのは「国家による経済計画」 斎藤幸平さんが描く未来図

東京大の斎藤幸平准教授=東京都目黒区で2026年1月26日、小林努撮影
東京大の斎藤幸平准教授=東京都目黒区で2026年1月26日、小林努撮影

 今日4月6日は新刊『人新世の「黙示録」』の刊行日だ。5年以上前に刊行した『人新世の「資本論」』の続刊である。

 前著の時は、新型コロナウイルス禍の真っただ中であった。だからこそ、行きすぎた経済活動を減速し、エッセンシャルな共有財<コモン>を重視した脱成長コミュニズムこそが必要だという訴えが、想定以上の反響を呼んだ。

 だが、コロナ禍以降、世界情勢は急速に悪化していった。

 ウクライナとロシアの戦争が始まり、イスラエルによるガザでのジェノサイド(虐殺)、トランプ米大統領の再選とパリ協定からの離脱によって、地政学的緊張は高まり、脱炭素化に向けた世界的協調は困難となっていった。

 人類の団結が必要となる時代に、むしろ、資源価格高騰によるインフレを前にした自国優先主義が広がるようになった。

 そのような現実を目の当たりにして、『人新世の「黙示録」』を書くことを決めたのは、もう2年前だ。

 その時は1年間のドイツ滞在で一気に書き上げようと思っていたが、思いの外、時間がかかってしまった。やっとの思いで完成させ、ドキドキしながら、今日という日を迎えている。

キーワードは「戦争」

 苦労したのは、テーマが「戦時経済」を扱うものだったからだ。世界では戦争が起きていても、日本では遠いことのように感じられてしまうのではないかという不安があった。

 なぜ「戦争」がキーワードになるかといえば、私たちは、地球環境を守るために残されていた2020年代の最後のチャンスを手放してしまったからである。

 パリ協定が失敗し、今後、気候変動が急速に悪化していく中で、高温化、異常気象や海面上昇などによって、経済活動に大きな影響が出ることになる。さらなるパンデミックや資源をめぐる戦争・紛争が起きることにもなるだろう。

 だとすれば、第二次世界大戦後の経済成長による繁栄と進歩を前提としてきたような世界観は、これからの「人新世」の時代にはそぐわない。

 むしろ、欠乏状態が慢性化していく時代になる。

「社会主義計算論争」にヒント

 もちろん、それは急にすべての生産ラインが止まって、人々が餓死するというような話ではない。それでも、これまでの…

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