創造的復興を目指した東日本大震災の被災地では、地域コミュニティーの維持が難しくなっているなど、あの日から15年がたって課題がはっきりと見えてきた。
片や、地震から2年が過ぎた能登半島は、復興に向けて歩み出したところだ。
限界集落を抱える被災地が同じ過ちを繰り返さないため、二つの大地震で復興に携わる姥浦道生・東北大教授が指摘する教訓とは。【聞き手・砂押健太】
初めは目の前の「復旧」中心
――石川県輪島市の復興まちづくり計画検討委員会で委員長を務めましたね。1995年の阪神大震災や2011年の東日本大震災では、復興計画に住民の声をいかに反映させるのか課題が残りました。市の計画はどうでしょうか。
◆検討委は24年5月に始まりました。ただ、初めのころの住民の関心は、「復興」の計画より「自宅前の道路は、いつになったら通れるようになるのか」といった目の前の「復旧」に関する問題が中心でした。
市の復興まちづくり計画には、災害公営住宅といった住まいの確保や、輪島朝市の再生などについて記されています。
行政の総合計画のようなもので、復興に関する総論的で抽象的な内容が中心なので、それに反対する市民はほとんどいなかったと思います。
これからは災害公営住宅であれば、どの地区に何戸確保するかという具体的な段階に進んできます。入居希望者のいろいろな意見を事業に反映させていく必要があります。
朝市についても、具体的にどのような形で再生させていくかという話になれば、朝市や地区の商店街に関係する人たちなどと市が協働・役割分担しながら進める必要があります。
団塊の世代が70代後半で能登地震
――能登半島の現状は、東日本大震災後と比べ何が違いますか。
◆輪島市は当時の東北と比べて、人口が大きく減り続けています。さらに高齢化も進んでいます。
東北の被災地では、団塊の世代である60代前半が人口構成のピークという場合が多かったです。「あと20年は地元で頑張る」と、まだ勢いがありました。
その団塊の世代の人たちが70代後半になった時、今回の能登半島地震が起きました。それによって、仕事の継続、居住場所や再建方法の選択など、さまざまな点で違いが出ています。
例えば、居住場所については「スーパーや病院の近くがいい」と利便性を求める人が増えているように感じます。
「集落の今後」事前の話し合い必要
――輪島市は高齢化や人口減少を見据え、まちづくり計画で商業施設や住宅を集約させる「コンパクトシティー」を目指しています。その一方で、市内には限界集落もあり、そこでの生活再建を望んでいる住民もいます。限界集落は、どう復興させていけばいいのでしょうか。
◆何より大切なのは「集落をこれからどうしていくのか」ということに関する話し合いです。
出ていく人も、残る人もいるでしょう。
ただ、集落との関わりは残ると思います。それをどのように紡いで新たな集落としての営みにしていくか。この点を考える必要があります。
そのうえで、電気や水道などのインフラ設備については、人口が減った地域では、災害前と同じように戻すことが効率性や災害対応の観点から望ましくない場合もあります。
太陽光発電などを利用して電力を自給自足するシステムについても、考える必要があると思います。
また、災害公営住宅についても、あまりに分散的に建設すると、将来的な維持管理費用がかさむことになります。
元の場所で住みたいという被災者の希望と将来の子ども世代の負担とを考えて、折り合いをつける必要があります。
輪島市は、コンパクトシティーの核となる3カ所の市街地で、災害公営住宅を建設する計画です。
それに加え、住民からの希望に応じて公民館があるような拠点の集落にも整備する計画があります。
地域の人の希望と効率的なコンパクトなまちづくりとの折衷案といえると思います。
普段から課題向き合うべき
――今後、南海トラフ巨大地震や首都直下地震の発生が想定されています。東日本大震災や能登半島地震を踏まえ、復興の教訓をどう生かしていけばいいのでしょうか。
◆能登半島では、地震に関わりなく人口の減少や産業の衰退が進んでいました。
つまり、日ごろから地域が抱えていた課題が、地震など災害が起きたことで明確に浮かび上がったんです。
南海トラフ地震や首都直下地震が想定される市区町村や、そこで暮らす住民は、普段から生活上の課題や産業上の課題などに真摯(しんし)に向き合う必要があります。
日ごろから住民同士、さらには行政と一緒に現在の街の課題について話し合いをしておく。
それが、被災後に生活や産業の復興について考えなければならなくなった時、円滑に対応するための第一歩だと思います。
輪島市復興まちづくり計画
市が姥浦氏のほか、商工会議所など関係団体の代表者や市民らを交えて議論し、2025年2月にまとめた。計画の象徴は、朝市とその周辺の再生。利便性を高めた住まいの確保や、子育て支援のための環境整備など5項目に重点を置いて復興を進めるとしている。
うばうら・みちお
富山市出身。東京大大学院工学系研究科博士課程満期退学。大阪市立大助手などを経て東北大災害科学国際研究所教授。専門は都市計画。東日本大震災の復興まちづくりについて研究している。
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