「『書かずには死ねない』案件が一つ片付きました」。苦笑マークが付いたメッセージを受け取ったのは昨年末だった。
差出人はジャーナリストの佐田尾信作さん。新著「陸戦隊と暁部隊 ヒロシマの秘史を追う」(集英社新書)の刊行案内だった。
佐田尾さんは1957年島根県生まれ。中国新聞社で論説委員などを歴任し、広島を拠点に半世紀近く取材活動を続ける。退職後に温めていた構想を基に執筆したという。
「『大和』生還者から父への手紙」と題された巻頭の逸話から引き込まれる。
第二次大戦末期の45年、日本海軍は本土決戦を想定し、広島県呉市の山中に陸戦部隊「呉鎮守府特別陸戦隊第23大隊」を配置していた。「東洋一の軍港」と称された呉は米軍による度重なる空襲で焼き払われ、もはや動かせる艦船もなかった。
公的記録の乏しい秘匿部隊は約1400人ともいわれ、地雷を抱えて敵戦車に突撃する訓練をしていた。多くは新兵で、18歳だった佐田尾さんの父、歳雄さん(故人)もその中にいた。
8月6日朝、広島の方角にキノコ雲が湧き上がる。部隊は翌日、救援のため急行して惨状を目の当たりにし、「入市被爆」することにもなった--。
敗戦後に散り散りになった部下を捜し出し、被爆者健康手帳の取得を支援したのが上官だった八杉康夫さん(2020年に92歳で死去)。沖縄特攻で沈没した戦艦「大和」の生き残りで、大和の語り部として知られた。
23大隊の駐屯地に近い地名を冠した戦友会「川原(かわら)石(いし)会」の代表でもあった。佐田尾さんは著書で98年ごろに八杉さんから父に届いた手紙を紹介している。
「見つけて上げるのが遅くなりお許し下さい」
元部下の救済に奔走した思いが伝わる。
著書は父の足跡を丹念に追い、同じ部隊の元兵士らの証言や手記をたどり、膨大な公文書や文献を読み解きながら秘匿部隊の輪郭を明らかにしていく。…
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