2025年に人里でのクマの出没が相次いだ秋田県で、不安や抑うつ状態を感じた人の割合が、他地域に住む人の水準と比べて高い傾向が見られたことが、秋田大などの調査で判明した。いつクマと鉢合わせになるか分からない心理状態が続き、強い負担になった可能性がある。専門家は「行政などによる長期的な心理的支援が必要だ」と指摘している。
調査をまとめたのは、尚絅(しょうけい)学院大(宮城県名取市)の奥山純子教授(精神医学、秋田大客員研究員)と秋田大情報データ科学部の門廻充侍(せとしゅうじ)講師(防災工学)。25年11月に国内在住のモニター1500人(男女各750人)にウェブでアンケートを実施した。回答者は秋田県在住者が800人、県外在住者が700人だった。
秋田では感じた不安の程度について、「中程度」や「重い」、「非常に重い」との回答が約50%、抑うつについては同様に「中程度」以上が約40%だった。いずれも他の地域の水準より10ポイントほど高かったという。ストレスは秋田県内、県外いずれも約25%で、大きな違いはなかった。
奥山教授は、23年以前のクマとの遭遇は主に山中で、一定数の被害は想定内とされていたと指摘する。その後は市街地でも出没し始めたことで「想定しなかった体験が続き、長期的な恐怖や生活の制限がもたらされる可能性がある」という。さらに、「23年に続いて2年後の25年にも、クマが大量出没したことにより、住民が敏感になっており、今後、不安の状態が悪化しかねない」と懸念する。
その上で、孤立して悩みを話せる環境にないと、不安の状態は回復に時間がかかるとし、「行政の相談窓口や地域の保健師、子供や若者の声を聞くスクールカウンセラーの存在がさらに重要になる」としている。
心の負担、軽減するには
具体的な心の負担を軽減する方法として、得意なことに取り組み楽しむ時間を持つ▽誰かを喜ばせたりして自信を高める▽不安を共有し、助言を求める――ことを挙げる。同時に、対処の方法について具体的に行動できるよう普段から理解を深めておくことは心理的な安定に有効で、「啓発講座は座学にとどまらず、防災訓練のようなより実際の体験を取り入れていくことは精神面にも貢献するだろう」と指摘している。
秋田県内では25年、県庁付近にもクマが出没し、各地の自動ドアが手動になったり、屋外での活動やイベントが中止になったりするなどの影響が出た。住民からは「外に出るのが不安」「思い出すと怖い」「クマに襲われる夢を見た」といった声も少なくなかった。【工藤哲】
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