寿退社は死語でも「稼ぎ手は男性」 石崎さんが指摘する課題とは
共働き家庭が大半となり、今や少数派となった専業主婦の現在地を見つめてきた企画「『憧れの専業主婦』は今」。専業主婦という生き方について研究してきた跡見学園女子大学の石崎裕子准教授(社会学)に話を聞いた。
「専業主婦」の今を描く企画の最終回。志向する若い女性が増えつつあるのか、どんなリスクがあるのか、石崎さんが現状を分析します。
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――かつては「憧れ」ともされた生き方ですが、「女性活躍推進」と固定的な性別役割分担のはざまで今、新たな息苦しさを感じる人もいます。
孤独感や不安感のようなものは、専業主婦になることが女性の典型的な生き方だった時代からあったと思います。
例えば、結婚後、子育てをしながらフリーのライターをしていたベティ・フリーダンが、1963年に著した「女らしさの神話」は、一見、幸せそうに見える米国の郊外住宅に暮らす白人中流層の専業主婦たちが抱えていた不安感や虚無感を「名前のない問題」と名付けて注目されました。これを機に、フリーダン自身も米国の女性運動の中心的存在となっていきました。日本でも、男性の長時間労働が当然視されていた80年代、夫不在の家庭の中で、寂しさや不安、不満を抱える女性たちを取り上げたルポルタージュ「妻たちの思秋期」(斎藤茂男著・82年刊行)が話題となりました。
ただ、近年は女性のライフコースが多様化している上、官民を挙げて女性活躍が推進されています。育休を利用し、就業を継続する女性も増えてきています。女性の生き方や働き方が変化している中で、孤独感や、このままでよいのだろうかとモヤモヤとした思いを余計に感じやすくなっているのではないでしょうか。
男性の意識も変化
――共働きが主流とはいえ、今でも女子学生の一定数は専業主婦を目指しているようです。
就職情報会社マイナビの「2027年卒大学生のライフスタイル調査」によれば、「専業主婦志向」の回答は、前年から微増したとはいえ、9・2%と1割を切っています。長期的にみれば、女子学生の専業主婦志向は減少傾向にあります。
かつては、短大や大学を卒業して「女性向けコース」とされた一般職に就き、結婚したら退職して専業主婦になるのが女性の幸せとされていました。現在では、女性が結婚を機に退職することを指して使われた「寿退社」という言葉も死語となり、女性の採用を前提としてきた事務職を廃止する会社も出てきています。
雇用環境の変化から、女子学生たちも、働くことに自覚的になっていると思います。「本気で」専業主婦になることを目指している女子学生は、少数派になりつつあると思います。
若い世代では、女性だけでなく男性の意識も変わってきています。「男女共同参画白書(2023年版)」(内閣府)によると、未婚男性(18~34歳)の将来のパートナーに対するライフコースの希望として、「両立コース」が39・4%と半数近くを占め、「専業主婦コース」の6・8%を大きく上回っています。若い男性たちも、「パートナーには働いてほしい」と思うようになってきています。例えば、夫が転職したい、仕事を一旦やめたいと思った時も、妻に安定した収入があることは夫にとって心強いでしょう。
そもそも、夫一人の稼ぎで妻子を扶養することができる、経済力のある若い男性が少なくなっているのが現実です。若い女性が専業主婦に憧れたとしても、経済的に余裕のある専業主婦生活を送ることのできる理想の結婚相手に出会えずに、年齢を重ねていく場合もあり得るでしょう。
経験生かし起業も
――羨まれることも多い専業主婦ですが、リスクもあるようです。
病気や失業など、ひとたび夫に何かあって収入が途絶えた場合や、夫との関係がうまくいかなくなって離婚するとなれば、専業主婦生活を支えてきた経済的な基盤は崩れてしまいます。夫という存在と切り離されると、経済的に困窮するリスクが専業主婦にはあると思います。
また、朝、夫が出勤してから夜、帰宅するまで、日中、一…
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