日本の獣医の歴史は戦前まで、馬への医療を中心に歩んできた。古くは飛鳥時代、聖徳太子は高句麗から来た僧から馬の治療法を学ぶよう臣下に命じたと伝わる。大宝律令(701年)は、馬の医師を役職として定めた▲家畜だけでなく犬や猫などペットへの医療も広がり、今や約4万人の獣医師資格者が従事する中でのイベントである。約70の国・地域から約6000人の獣医師や研究者が参加、交流する「世界獣医師会大会」が、21日から4日間の日程で東京都内で開かれる。160年以上の伝統がある国際会議で、日本での開催は1995年の横浜以来、約30年ぶりになる▲獣医師が診察するのはペットや牛馬に限らぬ「人以外の動く生き物」だ。魚類も対象で、ミツバチにも病気を診断する専門の獣医師がいる。小紙の仲畑流万能川柳の秀逸作に今年「スゴイなあ 動物みんな 診る獣医」とあった。その通りだ▲野生動物や家畜を介する新たな感染症が、人類の脅威となっている。大会では人と動物の健康、取り巻く環境の相互関連や、一体的な取り組みを表す「ワンヘルス」という考えをメインテーマとする▲国際協力が不可欠な中、獣医師の連携も重要さを増す。国内では高齢化や1人暮らしの増加に伴いペット医療だけでなく、飼い主がいなくなった後のケアへの関与なども課題となっている▲獣医師には名称を「動物医」に改めてはどうかとの議論もかねてある。役割も領域も変化する中、関心を高めたい国際会議開催である。