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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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佐賀県立博物館(佐賀市)には…

明治時代の錦絵「東京品川海辺蒸気車鉄道之真景」に描かれた高輪築堤=港区立郷土歴史館所蔵 拡大
明治時代の錦絵「東京品川海辺蒸気車鉄道之真景」に描かれた高輪築堤=港区立郷土歴史館所蔵
再開発用地で見つかった高輪築堤の石垣=東京都港区で(港区教育委員会提供) 拡大
再開発用地で見つかった高輪築堤の石垣=東京都港区で(港区教育委員会提供)

 佐賀県立博物館(佐賀市)には日本初の鉄道が開業する際、海上に建造された「高輪築堤」の遺構の一部が復元展示されている。1872年、東京(新橋)―横浜間約29キロの鉄路のうち、約2・7キロは浅瀬に石積みの堤防を築き走らせた。巨額の鉄道事業に反対論も強かったが、官僚だった肥前(佐賀)出身の大隈重信が「日本の近代化に不可欠だ」と主導した。その業績を伝えるため、2022年から展示している▲高輪築堤の遺構は、今は陸地となっているJR東日本の再開発用地(東京都港区)で19年に発見された。JR高輪ゲートウェイ駅周辺、約800メートルの遺構のうち約120メートル分の現地保存などが決まった▲続く南側の第2期再開発の用地にも、推定約500メートルの遺構が残されている。JRはこの区域の保存に慎重だったが、学術・文化的価値を指摘する声を踏まえて再検討を始めたという▲明治初期、鉄道が海を走る光景は人々の度肝を抜いたに違いない。錦絵に様子が描かれている。日本の近代化を象徴する文化遺産と言える▲都市開発の際、文化財が見つかるケースは少なくない。事業者は保存と開発を両立させる難題に直面する。国、自治体も加えたルール作りが課題となっている▲保存が決まっている120メートルの遺構は、28年春に一般公開される。海上ルートを大隈らが選んだ理由は諸説あるが、用地取得などの障害を避けるための知恵だったのだろう。遺構を生かしつつ、地域の価値も高められるような妙案を待ちたい。

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