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ピアノ曲集「読み直し」術 アンデルシェフスキさんのブラームス

ブラームスの後期ピアノ作品を取り上げたアルバムをリリースしたピアニスト、ピョートル・アンデルシェフスキさん=東京都港区で2025年11月28日、岩下幸一郎撮影
ブラームスの後期ピアノ作品を取り上げたアルバムをリリースしたピアニスト、ピョートル・アンデルシェフスキさん=東京都港区で2025年11月28日、岩下幸一郎撮影

 バッハ、ベートーベンとともに「ドイツ3大B」に数えられる作曲家ブラームスは、63年という生涯の晩年にさしかかった頃、ピアノのための小品集を四つ残した。

 七つの幻想曲(作品116)。

 三つの間奏曲(作品117)。

 六つの小品(作品118)。

 四つの小品(作品119)。

 ポーランドのピアニスト、ピョートル・アンデルシェフスキさんは、全20曲の中から12曲を選び、並び替え、1枚のアルバムに収めた。

 全集ではなく選集。そこに隠された意図に迫った。

「遺書」の始まりは不協和音に満ちて

 はじめに作品119の第1曲(作品119の1)を弾き、最後は作品118の6で終わる――。

 アンデルシェフスキさんが2026年1月にリリースしたアルバム「ブラームス:後期ピアノ作品集」(ワーナー)のプランは、ここからスタートした。

 言い換えれば、これ以外に明確なプランは持っていなかった。

 冒頭を飾る作品119の1がどのような曲か、まずは簡単に紹介したい。

 バッハの「ミサ曲」やシューベルトの「未完成」と同じロ短調というほの暗い調性で書かれ、遅めのテンポ(アダージョ)で曲は進む。

 ブラームスはこの曲について、作曲家でピアニストのクララ・シューマンに宛てた手紙で「不協和音に満ちています!」と書いている。

 不協和音の一例を示すと、1小節目に鳴り響くのは「ミ・ソ・シ・レ・ファ♯」と、3度音程を積み重ねた厚みのある和音。よく聴くと、現代のジャズやポピュラー音楽にも通じるような先鋭的な響きがする。

 「この曲は私をブラームスの世界へといざなってくれると感じます。晩年の作品がブラームスの遺書だとすれば、これはその1ページ目です」

三位一体で生まれた新たな情景

 アルバムを聴いていて、はっとさせられた部分があった。

 4曲目を聴き終えた後、5曲目の途中でその瞬間は訪れた。

 4曲目の作品118の2は「アンダンテ(歩くくらいの速さで)、愛情を込めて」という指示が添えられたイ長調の美しい旋律を持つ。

 小説家・平野啓一郎さんが15~16年、毎日新聞に連載した小説「マチネの終わりに」で、主人公の男女の出会いのきっかけとなった曲(ただし小説ではギター編曲版)として記憶している人もいるかもしれない。

 これに続いて、アンデルシェフスキさんはイ短調の作品116の2を弾く。

 作品番号の異なる曲集からの2曲だが、並べて聴くとそこには明ら…

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