湯田温泉に「中原中也記念館」 直筆原稿や遺品3万点収蔵 山口
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苦悩に満ちた生涯
市街地にある温泉スポットで知られる山口市の湯田温泉。日本を代表する詩人、中原中也(1907~37年)のふるさとであり、温泉街にある生家跡には、足跡をたどる「中原中也記念館」がたたずむ。青春の切なさや人生の悲しみをテーマに、心に響く詩を数多く残した中也。ファンはもちろん、温泉目当ての観光客も訪れる。
記念館は故郷の風土を通じて中也の世界を感じてもらおうと、市が4億6500万円かけて94年2月にオープン。中也の直筆原稿や遺品など約3万点を収蔵し、最近では中也の研究者の遺族から小学4年時に書いた習字も寄贈された。これらの貴重な資料を入れ替えながら展示している。
現在開催中のテーマ展示は、中也の遺作となった詩集「在りし日の歌」。詩集の清書をまとめて友人に託し、当時住んでいた神奈川から山口に帰郷予定だった中也は37年10月、突如病に倒れて30歳の若さで早逝した。詩集は友人らの尽力で38年4月に刊行され、日記やノートに書かれた原稿などからは編集の背景が伝わってくる。
運営する市文化振興財団の広報担当、細田萌美(めぐみ)さん(37)は「息子を幼くして亡くすなど、苦悩に満ちた中也の生涯を知った上で作品を読み返すと深みが増す」と語る。酒癖が悪く、感情の起伏が激しい人間臭さも魅力の一つと感じている。
Tシャツや缶バッジなどのグッズを作ったり、現存しない中也の肉声に迫る企画展を開いたりと裾野を広げる工夫も。中也を題材としたアニメの影響もあり、若い世代のファンも増えているという。
4月下旬からの企画展では、萩焼の作家12人が「サーカス」「一つのメルヘン」といった代表作にちなんで制作した置物などを展示している。
くしくも中也と同じ名字だが、血縁関係はないという中原豊館長(67)は「中也は生活を全てささげ、純粋に詩に生きた。読み手が想像力で作り上げるのが詩の世界であり、ぜひ作品に触れてほしい」と来館を呼びかけている。【脇山隆俊】
中原中也記念館
山口市湯田温泉1の11の21。一般330円、学生220円、18歳以下と70歳以上無料。開館時間は午前9時~午後6時(11~4月は午後5時まで)。月曜と毎月最終火曜など休館。電話(083・932・6430)。