ついに実家にある母の整理ダンスと洋ダンスを処分した。それぞれにあふれるばかりの衣類が詰まっており、物が捨てられない母を思い出してはおかしいやらあきれるやら。戦争の真っただ中で物がない青春時代だった母は、モッタイナイが口癖だった。
洋ダンスにもぎっしりと洋服がかかっている。農家の父には縁がなかった背広やコートも数着入っていた。それ以上に多いのは母のよそ行きの服だ。オシャレだったとはいえ、もちろん先立つものはないので安物ばかりである。
その中に他の服を圧倒するような濃い紫のロングコートが出てきた。まだ新品で上等のカシミヤウールである。だが私は母がこれを着た姿を見たことがない。高級品には手を出さなかった母が、人生の後半になぜ大枚を払ったのだろう。羽織ってみると足元までどっしりと包まれ暖かい。
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