女性活躍施策が始まり、SNS上で性被害を告発・共有する「#MeToo」運動が力を持った2010年代以降、これに対抗するかのようにインターネット上で生まれた言葉がある。
「弱者男性」だ。
経済力、社会的地位、外見、コミュニケーション力――。これらに劣等感を持ち、何らかの困難を抱えている男性を指すことが多いが、明確な定義はない。
就職氷河期世代の男性の貧困を示す言葉から派生したとみられるが、次第に「女性より男性の方が弱者だ」という主張、あるいは男性への罵倒語として使われるようになった。
弱者男性はなぜネガティブな「ラベル」になったのか。当事者が語る、弱者男性の「実像」とは――。
ジェンダー平等を目指す取り組みが進む一方で、女性への暴力はやまず、フェミニズムへの反発が顕在化しています。男性の「生きづらさ」も指摘されるようになっています。GWにじっくり読んでいただきたい1本。今回は「弱者男性」の気持ちを丹念に聞いた26年3月公開の記事を再掲します。
「キモくて金のないオッサン」
<この世に女性差別があるように、男性への差別もある>
ライターのトイアンナさんは24年に出版した著書「弱者男性1500万人時代」(扶桑社新書)でそう訴えた。
弱者男性に関心を持ったきっかけは、婚活の取材だった。
「結婚相談所で、男性は年収で足切りされるのに女性は無収入でも登録できることに驚きました。女性は経済力が低いという女性差別はもちろんあります。ですが、男性を収入で差別することは許されるのでしょうか」
そもそも「弱者男性」というワードはどのようにして生まれたのか。
15年、当時のツイッターでこんな投稿が話題を呼んだ。
<オッサンの貧困を最近扱っているけど、驚くほど共感を得られない。性の商品化が問題などと言う人もいるけれど、買えない、売れない、キモくて金のないオッサンの方がどう考えても詰んでると思うのは俺だけ?>
就職氷河期世代の男性について「キモくて金のないオッサン」がKKOと略され、ネットスラングとして広まった。
10年代後半は、女性活躍や「#MeToo」運動が盛り上がった時代だ。
女性が望まぬ形で性産業に従事する問題や劣悪な労働環境も女性差別としてクローズアップされたが、それを逆手にとり「女は体が売れるが、男はそれすらできない」と主張する声も広がった。
「KKOは男性に弱者性があっても、社会的な共感や支援が得られないという不満を端的に表現したフレーズでした」
その代替表現や類語として、「弱者男性」というワードが生まれ、20年代にネットで広く使われるようになったという。
<後半で読める主な内容>
・弱者男性による女性攻撃
・どんな人たち? その心理は
・弱者男性本人が語る「自己責任論」
・女性と弱者男性 誰が差別するのか
「弱者男性」の女性攻撃とは
次第に「…
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