「人間はたとえアマチュアランナーでも、哺乳類屈指の優秀な長距離走者なのである」。市民ランナーでもある米ハーバード大のリーバーマン教授(人類進化生物学)が「人体六〇〇万年史」(早川書房)に記している▲木から下りて二足歩行を始めた人類は持久走に適するよう進化した。長い脚や土踏まず、発汗機能。ヤリや弓を持つ前には動物が動けなくなるまで長距離を追跡する狩りを行っていたという説である▲短距離ではライオンにもシマウマにもかなわないが、猛暑の中でも長く持続的に走れる動物は人間ぐらいだそうだ。英国で行われている人とウマの長距離耐久レースでは人が勝ったこともある▲それにしても人類の能力には驚かされる。ロンドン・マラソン男子でケニアのサウェ選手が公式競技で初めて2時間の壁を破る1時間59分30秒で優勝した。平均時速は21キロ超え。100メートルを17秒弱で走り続けた計算になる▲2位も2時間を切った。2人とも同じメーカーのシューズを履いて走った。発表されたばかりの最新モデルである。スポーツ用品メーカーはコース外で開発競争にしのぎを削る。その成果も歴史的記録に貢献した▲リーバーマン教授は研究を兼ねて裸足で走り、足裏の前方(フォアフット)で着地する方がケガをしにくいと結論づけた。裸足の時代が長かった人類に適した走法はケニアなどマラソン強国の選手の走法でもある。最新モデルの片足はわずか97グラム。裸足同然の軽さも異次元の速さを生んだ秘訣(ひけつ)だろう。