米国とイスラエルがイランへの軍事作戦に踏み切って2カ月が経過した。一時停戦で合意したものの戦闘終結への道筋は見えず、ホルムズ海峡の封鎖が続いている。一刻も早く開放されなければならない。
事態を複雑にしているのは、トランプ米政権の迷走だ。
パキスタンの仲介によって米国とイランは2週間の停戦で合意し、イスラエル・レバノン間の停戦も発効した。これを踏まえてイランのアラグチ外相は「海峡は完全に開放される」と宣言した。
しかし、米国は海峡を「逆封鎖」してイランの港湾を出入りする船舶の通過を禁じる。態度を硬化させたイランは封鎖を解かず、両国による拿捕(だほ)も起きた。
ホルムズ海峡は世界の原油供給量の約2割が運ばれる要衝で、戦闘前には1日約2000万バレルの原油や石油製品が通過していた。
国連海洋法条約により自由航行が認められる国際海峡だ。米イランともに未加盟だが、国際的な規範は順守されるべきである。
封鎖によって、東南アジアなどで深刻な燃料不足が生じている。化学肥料の原料供給が不安定となり、食料生産の減少や価格高騰も懸念される。
とりわけ影響を受けるのは貧困国・地域だ。国連開発計画(UNDP)は、最悪の場合には世界で新たに3200万人が貧困に陥る恐れがあると報告した。
にもかかわらず国連安全保障理事会の機能不全は深刻だ。海峡での安全航行に向け商業船舶の保護に協調して取り組む決議案は、中露が拒否権を行使し否決された。
米国とイランの交渉は期限が設定されていない。イランが所有する高濃縮ウランの扱いや核を平和利用する権利などについて意見の隔たりは大きいままだ。
トランプ大統領は「一つの文明が滅びる」などと相手の尊厳を踏みにじる言葉を発信し、交渉の障害になっている。イランでは革命防衛隊など強硬派が勢いを増し、早期の戦闘終結を主張する大統領や外相との意見対立が深まっているとの見方もある。
世界の混乱を収めるには、米イラン双方が妥協し戦闘を終結させる必要がある。そのためには国際社会のさらなる圧力が不可欠だ。