昭和の高度成長期。1964年の東京五輪と70年の大阪万博の間にもう一つの国家的行事があった。68年の明治100年記念行事である。佐藤栄作首相と全閣僚が参加した準備会議が設置され、さまざまなイベントが実施された。NHKの大河ドラマは「竜馬がゆく」だった▲当初はどこが明治の起点かが議論になった。大政奉還か五箇条の御誓文か。結局、慶応から明治に改元した日を西暦に置き換えた10月23日に日本武道館で記念式典が行われた▲五輪や万博のような国民的記憶にならなかったのは時代の変わり目で歴史への見方も分かれていたからか。ベトナム反戦が叫ばれ、東大闘争が始まった。水俣病が公害病に認定された。祝賀ムードの式典には批判も多かった▲「昭和の日」のきょう、日本武道館で政府主催の昭和100年記念式典が開かれる。価値観が多様化した令和の時代。明治100年に比べても盛り上がりに欠ける。目立つニュースは記念硬貨の発行ぐらいである▲昭和生まれは国民の7割。昭和レトロブームがあり、昭和歌謡も愛されている。戦後の日本が平和を続け、発展を遂げたことは確かだ。しかし、100年では戦前とどう切り分けるのかと戸惑う▲「昭和は、戦争、終戦、復興、高度経済成長といった、未曽有の変革を経験した時代」。高市早苗首相の言葉である。作家の保阪正康さんは「人類史の見本市」と評した。明治100年式典では万歳の大合唱が巻き起こったそうだが、謙虚に歴史と向かい合いたい。