大阪市に3匹の保護猫がいる書店がある。JR弁天町駅前にある書店「ブックスB」(同市港区)は、猫好きの癒やしの場となっている。3月に一番人気だった初代の保護猫が他界した際は、多くの客が来店して別れを惜しんだ。店主の大野勢津子さん(70)は「店を訪れて猫に関心を持ったお客さんもいる。保護活動への理解がもっと広がればうれしい」と話す。
店は創業40年で20年前に同区に移転。外観はごく普通の書店だが、店内には、ナナ(12歳、雌)、ダイキチ(8歳、雄)、ハナ(3歳、雌)の3匹がいる。いずれも大野さんに保護された。本棚やレジ横の台などにいることが多く、客に頭をなでられると、幸せそうな表情をみせる。中には猫がいて驚く客もいるが、苦情は一度もないという。
店内で飼うようになったのは15年ほど前から。当時飼っていたラブラドールレトリバーのゴン(2022年7月死去)を慕い、1匹の野良猫が店を訪れるようになった。それが3月に18歳で死んだ初代保護猫のフク(雄)だった。2匹は大の仲良しで、いつも並んで店番をしていた。
ゴンは高齢で飼えなくなった飼い主から大野さんが引き取った犬で、ゴンの前にも別の犬を「行き場のない子たちを見殺しにできない」と保護した。フクを迎えたのを機に野良猫の保護活動にも取り組み、捕獲して避妊・去勢手術を施すTNR活動や、新たな飼い主を探す譲渡会も店内で開催。もらい手がない猫たちを引き取って世話をしてきた。
たまたま来店して活動を知ることで、関心を持つ客たちも増えた。大野さんは「ただの飼い猫ではなく、店のスタッフの一員みたいな存在。命の大切さを伝える役割も果たしてくれている」と話す。
人なつっこかったフクはファンが多く、“訃報”が店のインスタグラムで流れると「ありがとう」「さみしい」など死を悼むメッセージが次々と投稿された。いつもフクを一度だけやさしくなでるのが日課だった男性も、涙を流して悲しんだ。花を持参して来店する人もおり、大野さんは「すごく慕われていたんだとあらためて気づいた」と振り返る。
今も、猫に会うために来店する客は絶えない。常連客の主婦、松浦友子さん(68)=兵庫県宝塚市=は、長年猫を飼っていたが、「年齢的に猫は飼えない」と、趣味のカメラで猫たちを撮影することが楽しみの一つだ。「賃貸暮らしなので、猫が飼えない」と週に数回通うのは、近くに住む30代の男性。「つい用がなくても立ち寄ってしまう」と猫をやさしくなでた。
「見知らぬ同士でも話が弾むこともある」と大野さん。一方で、近年の書店離れの影響で経営は厳しく、赤字が続いているという。常連客が本を購入するなど支えはあるが、厳しい状況に変わりはない。大野さんは「猫たちにとってこの店が家で、人と猫をつなぐ保護活動の場にもなっている。なんとか一日でも長く営業していきたい」と語った。【広瀬晃子】