「常連さんより一見(いちげん)さんの方が怖い。常連さんは、ある程度、妥協してくれるけど、一見さんは一口目で答えを出すから」。広島県尾道市の海岸通りにある老舗ラーメン店「つたふじ本店」で、店主の仁井博明さん(74)がつぶやいた。
戦後、両親がラーメン屋台を始め、1950年に店を構えた。仁井さんは商売が嫌で、高校卒業後、外航船の乗組員になった。しかし、23歳の時、休暇で実家にいた際に父親が病死し、「母親に頼まれ、嫌々跡を継いだ」という。
それから半世紀。行列が絶えない店になった今でも「父親の味を変えないようにするのは難しい」と初心を忘れない。「一生懸命ラーメンを作り、お客さんに『おいしい』と言ってもらうのが一番の幸せ」と実直に語る。
店はカウンター8席のみ。メニューは中華そば(並800円、大900円)と、同じスープの中華うどん(同)。スープの原料は「企業秘密」。麺は細い特注でチャーシュー、メンマ、ネギが乗る。
仁井さんが手際よく作った一杯を、ラーメン好きの記者も頂いた。口に含むと、あっさりしたしょうゆ風味が広がる。お見事。
仁井さんは腰痛に悩まされ、5年ほど前から夜営業をやめ、昼(午前11時~午後4時)のみにした。店を手伝う次女の牧平真貴子さん(40)は「腰が痛いのに頑張ってくれる」と気遣うが、本人は「お客さんが来てくれる以上、体が続く限り頑張りたい」と豪快に笑った。
月、火曜定休。同店(0848・22・5578)。【村瀬達男】