ハードタイプでなく、少ししっとりとしたソフトタイプの素朴なドーナツは今では珍しい。そんなドーナツ一筋のお店が大阪市阿倍野区で約25年営業している「あたりきしゃりき堂」だ。
店名は店主の久保晶(ひかる)さん(76)が子どもだった昭和時代の言葉遊びから名付けた。テークアウト中心だが、ぜんまい式の壁掛け時計が静かに時を刻む、レトロな店内で喫茶も楽しめる。木製のテーブルと椅子が年季を感じさせる。
「昔はソフトタイプが当たり前だったんですよ」と久保さん。雑貨の小売業からオフィス街でお菓子の移動販売を始めたのが約30年前。当時仕入れていたドーナツをヒントに「子どもたちに安全でおいしいものを」と店を構えて作り始めた。香川県産の小麦粉や鹿児島・徳之島産のきび和糖などの国産材料だけでなく、無添加の菜種油のみを使う揚げ方にもこだわっている。
開店から何十年もたち、子どもだった人が大人になっても買いに来る。「昔来てた女の子が、自分の子ども連れて『おっちゃん、私の子や』って買いに来て。そういうのってうれしいですね」
毎日、何百個もドーナツを揚げる。ただ、最近は喫茶に来て、ドーナツを写真に撮ってネットに投稿する人が増えたという。久保さんは「それが目的なのかな」と少し寂しげ。老若男女に愛される地域自慢のドーナツをしっかり味わいたい。
コーヒーやオーガニック紅茶は450円。カフェオレやバナナジュースも。ドーナツは飲み物とセットで1個100円。【矢追健介】
メモ
大阪市阿倍野区阿倍野元町9の7。正午~午後6時。月日曜と第3土曜は定休。プレーンドーナツが1個120円。きび砂糖付きは1個130円。電話06・6623・1890。