故郷福岡の市街地は再開発が進んでいると聞く。約50年前もそうだった。あちこち工事中で、通勤バスは渋滞に巻き込まれた。大通りの交差点の角にあった老舗デパートも解体工事中だった。
小雪が舞う寒い朝、満員の乗客の息で曇った窓ガラスを手で拭い、ぼんやりと渋滞中の景色を見ていた。がれきや土砂を積んだトラックが、工事用通路から大通りへ出て行く。1人の年老いた作業員が旗を振り、トラックを送り出すと寒風に身をすくめ、傍らの椅子に腰掛けた。
その時、椅子に目を奪われた。他にも3、4脚、通路の脇に並ぶ。普通の4本脚だが、六角形の背もたれがしゃれている。工事現場には不釣り合いだ。気に入ったので今度の休みに父の車でもらいに来ようと思った。バスは翌朝も渋滞した。目を皿にして見ても、椅子は1脚もなかった。残念で仕方なかった。
この記事は有料記事です。
残り196文字(全文550文字)
あわせて読みたい
アクセスランキング
1時間
24時間
SNS
スポニチのアクセスランキング
1時間
24時間
1カ月