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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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文字を読み始めるのは記念すべき…

「パディントン」シリーズを読み返す松岡享子さん=東京都中野区で2017年5月8日午後2時20分、塩田彩撮影 拡大
「パディントン」シリーズを読み返す松岡享子さん=東京都中野区で2017年5月8日午後2時20分、塩田彩撮影

 文字を読み始めるのは記念すべき出来事である。なのに多くの人はその日を覚えていない。4年前に86歳で亡くなった児童文学作家、松岡享子(まつおか・きょうこ)さんも気付かぬうちに読めていた▲ただ、母と2人で町を歩きながら、商店の看板を読んだ幼い日の記憶はある。牛乳屋の前で「ウシノチーチ」と声を張り上げ、母から「あんた字が読めるの」と褒められた。調子に乗り「チノミチィー」と叫ぶと、母は黙り込んだ。女性特有の病態「血の道症」関連の看板だった▲英児童文学「くまのパディントン」シリーズの翻訳や童話創作を続け、東京子ども図書館を共同で設立した。子どもに多くの本を届けたいと願いながら、自著「子どもと本」ではこう記す。<(話を)聞く機会がたくさんある子どもは、できるだけ字を覚えるのが遅いほうがいいと思っています>▲親と子、祖父母と孫の間に最初から絵本を介入させるよりも、大人と子どもが直接向き合ってほしいとの思いだった。互いの目を見て子守歌や童歌を口ずさむ。すると子どもは「意味」を超えた、言葉の不思議な力に反応するらしい▲「よく遊ぶ子ほど、よく話を聞く」と実感した松岡さんはこんなメッセージを残している。<子どもたちの貴重な自由時間をぎっしりつまった予定表で埋め尽くし、分刻みで活動やおけいこごとに追い立てることだけはしないでほしい>(一部抜粋)▲きょう5日は「こどもの日」である。世界中の子が家族や社会の愛情に包まれ、笑顔で暮らせますように。

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