連載
月議
毎日新聞朝刊2面に毎週月曜に掲載するコラム。2026年4月から永山悦子記者が担当します。
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沈みゆく「箱舟」を救う=永山悦子
2026/5/4 02:01 1014文字<getsu-gi> 「狂気の調査」とも呼ばれる研究手法で知られた科学者が今春、大学を離れ、ベンチャー経営に身を転じた。琉球大教授だった久保田康裕さん(59)だ。 地球には500万~3000万種ともされる生き物が暮らす。小さな昆虫から巨大な哺乳動物、数十万種に上る植物が命を育み、「生物多様性」と呼
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その自由診療、大丈夫?=永山悦子
2026/4/27 02:01 1019文字<getsu-gi> より良い医療を受けたい――。どんな患者も持つ思いだろう。ただ、正しい選択をしなければ、命にかかわるリスクもある。 「そうだろうな」と感じる結果だった。国立がん研究センターなどの調査に、がん専門医約800人が答えたものだ。約6割の医師が、自らの患者から自由診療に関する相談を受け
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桜の「危機」に学ぶこと=永山悦子
2026/4/20 02:00 1020文字<getsu-gi> 桜前線があっという間に北上し、青葉がまぶしい季節を迎えた。「今さら桜?」と思わないでほしい。花見の名所でソメイヨシノの倒木が続いた問題である。 3~4月に東京・世田谷の砧公園、東京・千鳥ケ淵で確認された。いずれも老木だったとみられる。戦後各地で一斉に植えられ、その多くがまもな
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月探査も「トランプ第一」=永山悦子
2026/4/6 02:00 1029文字<getsu-gi> 半世紀ぶりとなる月への有人飛行だ。米航空宇宙局(NASA)が1日、4人の宇宙飛行士を乗せた宇宙船を打ち上げた。10日かけて月を周回して地球へ戻る。アポロ計画以来となる人の月面着陸を目指す「アルテミス計画」が、いよいよ本格化する。 日本や欧州、カナダも参加する国際プロジェクトで
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めぐりめぐって=下桐実雅子
2026/3/30 02:00 986文字<getsu-gi> 「シュウカツ」には、いろいろな漢字を当てはめられるが、札幌市を拠点に活動するアーティストの岡碧幸(みゆき)さんが取り組むのは「周活」だ。 作品の制作やその展示には、さまざまな資材が使われる。でも、終わればゴミになってしまう場合も多い。そこで岡さんは2024年、これらを循環させ
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雨宿りの軒先で=下桐実雅子
2026/3/23 02:01 1013文字<getsu-gi> 兵庫県姫路市の棗田(なつめだ)瑞代さん(52)には約20年間、何百通もの手紙のやり取りで支えてくれた人がいた。2017年に初めて会うまで顔も見たことがなかった。まるで「あしながおじさん」だ。 11歳年上の夫と死別したのは、結婚6年がたった25歳の時だった。店舗兼住宅を購入し理
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医療者と宗教者=下桐実雅子
2026/3/9 02:01 1029文字<getsu-gi> 東北は寺院や神社が地域に根付いた土地柄だ。15年前の東日本大震災では避難場所にもなり、葬儀ができない人たちのための読経や各地を回っての読経など、被災者支援に奔走した僧侶も多かった。 宮城県塩釜市の雲上寺住職、東海林(しょうじ)良昌(りょうしょう)さん(55)もその一人だ。寺は
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「働いて」「押して」の陰に=下桐実雅子
2026/3/2 02:00 1017文字<getsu-gi> コロナ下の2020年夏、東京都内の食品会社で働いていた71歳の男性が、業務中に倒れて心筋梗塞(こうそく)で亡くなった。仕事は厚焼き卵の製造で、会社が卵を仕入れ過ぎたため深夜や休日勤務が続いた末の悲劇だった。 労働基準監督署は当初、これを労災と認めなかった。時間外労働が「過労死
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爪痕は今も深く=下桐実雅子
2026/2/23 02:02 1046文字<getsu-gi> 埼玉県で看護師をする光栄(みつはな)みほ子さん(50)は2019年、81歳の父の最期をみとった。 長い間、父は憎しみの対象だった。小学生の頃の記憶では、父は働かず家にいて、ささいなことで烈火のごとく怒った。ひどい頭痛や手足のしびれに悩まされ、それを紛らわそうと毎日大酒を飲み、
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最後のフロンティア=下桐実雅子
2026/2/16 02:01 1021文字<getsu-gi> 太平洋に「クラリオン・クリッパートン」と呼ばれる海域がある。この水深約4000メートルの深海底で酸素が増える現象が一昨年、英科学誌に発表され注目を集めた。光合成で作られるはずの酸素が、光が届かない暗闇で生成される可能性を示したからだ。 発見した深海生態学者のスイートマンさんは
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もがいて、もがいて=下桐実雅子
2026/2/2 02:00 1026文字<getsu-gi> 一線の研究者が展示や研究トピックについて語る国立科学博物館(科博)の「ディスカバリートーク」。先日、午(うま)年にちなんで馬の進化史を解説したのは、哺乳類の化石を研究する木村由莉さんだ。会場は満席で、終了後も質問する人の長い列ができた。 実は木村さんも15歳の時、科博のトーク
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緩和ケアを受ける権利=下桐実雅子
2026/1/26 02:01 1013文字<getsu-gi> 緩和ケア。世界保健機関(WHO)は「患者の痛みやつらい症状を和らげる」「その人らしく生きられるよう最期まで支える」といった定義を示している。 これが公表された翌年の2003年、神経内科医の荻野美恵子さん(国際医療福祉大教授)は、子育てで遠ざかっていた国際学会に久々に参加した。
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マンション理事長の憂い=下桐実雅子
2026/1/19 02:02 1001文字<getsu-gi> 北海道旭川市の佐々木允(まこと)さん(82)は、自分が住むマンションの管理組合の理事長を務めて19年目になる。健康面に不安があり、退きたいと申し出ているが、後任がなかなか決まらない。 理事長不在のマンションは、市内にいくつかある。住民の高齢化が背景にあるが、それだけではない。
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姉と弟 病気は違えど=下桐実雅子
2026/1/12 02:02 988文字<getsu-gi> 同じ病と共に生きる仲間と、ブドウの実のように寄り添っていきたい――。宮城県塩釜市の浜端光恵さん(55)が運営する「すい臓がん患者と家族のおしゃべりサロンぶどうの木」には、そんな思いが込められている。 2017年、職場の健診で早期の膵臓(すいぞう)がんが見つかった。手術と抗がん
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日月丸は問い続ける=下桐実雅子
2026/1/5 02:01 1037文字<getsu-gi> 1996年、一隻の木造漁船が熊本県の水俣港を出発した。乗っていたのは漁師で水俣病患者の緒方正人さん(72)。東京湾までの1400キロを約2週間かけて航海した。当時の毎日新聞に「水俣病は文明社会に生きる私たちのあり方、生き方を問うている」という緒方さんの言葉が載っている。 帆が
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異変は冬眠にも?=下桐実雅子
2025/12/22 02:02 1012文字<getsu-gi> 今年の世相を表す漢字は「熊」だった。市街地への出没が多発して人身被害は過去最多となり、休校やイベント中止も相次いだ。政府は129億円を投じて対策に本腰を入れざるを得なくなった。 冬も深まってきたが、目撃情報はなくならない。福島県は今月15日までとしていた「出没警報」を1カ月延
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脱原発と脱炭素=下桐実雅子
2025/12/8 02:01 1026文字<getsu-gi> 脱原発を目指す市民団体「原子力資料情報室」は、設立から今年で半世紀。東京電力柏崎刈羽原発、北海道電力泊原発の再稼働を容認する地元知事の表明が続く中、記念するつどいが開かれた。 発足した1975年は、各地で原発計画が持ち上がり、反対する住民運動も活発だった。全国の運動を支える場
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一隅を照らした人=下桐実雅子
2025/12/1 02:02 1033文字<getsu-gi> アフガニスタンで医療支援や農業復興に取り組んだ医師、中村哲さんの活動を間近に見ていた人の講演を聴く機会が続けてあった。 1人はドキュメンタリー映画「荒野に希望の灯をともす」を監督した谷津賢二さん。中村さんが2019年に銃弾に倒れるまでの21年間、アフガンに通い、1000時間に
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「お静かに」は当たり前?=下桐実雅子
2025/11/24 02:00 1001文字<getsu-gi> 「おしゃべりOK」という公立図書館が、最近よく話題になる。子連れでも立ち寄りやすく、地域の交流の場になっているという。 私の街の小さな図書館もそうだ。老朽化で建て替えられ、公民館と一体化した新施設の1フロアは「会話可」になった。これまであまり見かけなかった中高生が勉強を教え合
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8文字のつぶやき=下桐実雅子
2025/11/17 02:01 1019文字<getsu-gi> 北海道の大学生が先月、希少がんで亡くなった。X(ツイッター)に投稿していた言葉が大きな反響を呼び、研究機関や病院への寄付が広がっている。 「グエー死んだンゴ」。ネットで流行した8文字のフレーズがつぶやかれたのは、逝去から2日後だった。死を予期した本人が、生前に予約投稿をしてい
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