連載
女の気持ち
読者の皆様からの投稿欄「女の気持ち」。「男の気持ち」「わたしの気持ち」とともに出来事や悩みなど「時代の心」を映しています。
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前を向いて 兵庫県明石市・岡田智恵(パート・58歳)
2026/5/5 05:04 565文字私の好きなシンガー・ソングライターのミュージックビデオのエンディング。上京したてのデビュー前の不安な日々を送っている自分を、よく頑張ったと10年後の自分が抱きしめるシーンがあった。比べものにはならないが、この春、そのシーンに重なる思いが自分にもあった。 15年前、大病を宣告された。4人の子どもの末
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もんちゃん 埼玉県所沢市・堀江厚子(主婦・77歳)
2026/5/5 02:01 543文字3月29日、あの日以来ずっと泣いている。 その日、ドイツにいた次女から「受かった」とLINE(ライン)があった。12歳の孫もんちゃんがドイツの某バレエ学校に合格したのだ。 夏には行ってしまう。 もんちゃんは幼いころ、聞き分けがよく先読みもでき、大人を困らせない子だった(今は違うと次女は言うが)。こ
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長寿の秘訣 北九州市小倉南区・島田淳子(会社員・51歳)
2026/5/4 05:03 547文字定年退職を迎え、Uターンした知人が「父と山登り」という写真投稿をSNSでしていたのを見た。コメントの中で「父は90歳」とあったが、その写真では90歳とは思えない若さに感じて、たいそう驚いた。 長寿に関心がある私は、90歳のお父さんに、ぜひ長寿の秘訣(ひけつ)を聞きたくて、知人と3人、食事の場を設け
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6Pチーズ 京都市伏見区・川北望(会社員・37歳)
2026/5/3 05:05 549文字「チーズ食いたいねん。三角の形した、6個入ってるやつあるやろ」 介護をしていた父に何度も言われ、しぶしぶ買った青色の丸い箱。乳製品は昔から父の体質に合わないし、病院からも塩分を控えるように言われていた。私は食べさせたくなかったが、父は念願のチーズを「うまい!」と喜んだ。 予想通り、食べ始めてからお
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椅子の物語 宮崎県日南市・矢野博子(76歳)
2026/5/3 05:05 550文字故郷福岡の市街地は再開発が進んでいると聞く。約50年前もそうだった。あちこち工事中で、通勤バスは渋滞に巻き込まれた。大通りの交差点の角にあった老舗デパートも解体工事中だった。 小雪が舞う寒い朝、満員の乗客の息で曇った窓ガラスを手で拭い、ぼんやりと渋滞中の景色を見ていた。がれきや土砂を積んだトラック
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いよいよシニア 東京都八王子市・星加克江(主婦・64歳)
2026/5/3 02:03 536文字いよいよ始まった。私なりに覚悟を決めた。 今までも目や耳、足腰などに老いを感じることはあったが、どこかひとごとだった。だが、今年65歳の私は立派な前期高齢者ということになる。もう高齢者なんだと実感することが続いて起きた。 まずは、初めて電車の中で席を譲られた。以前、高齢の母と出かけて席を譲られたこ
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母のつぶやき 岡山市北区・内山幸子(無職・61歳)
2026/5/2 05:02 547文字先日、89歳の母が大腸の内視鏡検査を受けた。うつ病と軽い認知症があるが、1年以上前から時折、下血するようになった。 2リットル近くの下剤を4時間近くかけて飲む。途中で「もう飲めれん。家に帰ろう」と何度も言った。持参した下着やリハビリパンツは全て汚れてしまった。 検査の間、母がカメラを痛がらないかと
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おむすび 埼玉県川越市・笠川米子(主婦・81歳)
2026/5/2 02:01 507文字夫はビワの木の枝を切っていて見事に木から落ち、腰を痛めた。 困った。私はくも膜下出血と脳梗塞(こうそく)で倒れ、夫に頼った生活を送っている。冷蔵庫は空になり前夜から大雨、今朝も大雨……。 そんな朝、近所の奥さんが玄関のチャイムを鳴らした。夫は痛む腰をさすりながら、やっとの思いで玄関に立った。 奥さ
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フェリー廃止に 和歌山市・丸山妙子(無職・69歳)
2026/5/1 05:02 538文字和歌山と徳島を結ぶフェリーが2028年3月をめどに廃止になるという。先日、利用したばかりだったので驚いた。 最近は年に1、2度、このフェリーを利用して高知県まで出掛ける。夫と祖先が眠る墓に参るためである。車に墓掃除用のホウキや草刈り鎌、剪定(せんてい)バサミなどを積み込んで早朝のフェリーに乗る。徳
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ぬか漬け 山口県宇部市・田中正子(84歳)
2026/4/30 05:01 557文字ぬか漬けがおいしい。ハリハリと歯ごたえのあるカブ、キュウリもいいけれど、しっかり漬かって、少し酸味のあるものも捨てがたい。 ご飯のおかずというよりも、食事の終わりに濃いめの日本茶といただくぬか漬けが好きだ。カブやキュウリと共にニンジン、ショウガ、昆布、キャベツなどで小さなつぼの中はにぎやかだ。 昔
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私の秘密基地 愛知県碧南市・石原ゆみ子(パート・57歳)
2026/4/29 02:00 470文字23年前に家が完成したとき、子どもたちの部屋や夫の書斎はあったが私の個室はなかった。そこで出入り口に使う予定だった2畳半ほどの空間を自分の個室に改造した。 幅180センチ、奥行き90センチの板を机にし、脚は衣類ケース9個を重ねた。背面にはスチール棚を二つ並べ、その隙間(すきま)にキャスター付きのリ
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父から引き継ぐ 京都府京丹後市・金森恵里(非常勤講師・65歳)
2026/4/28 05:02 572文字55歳で早期退職し、非常勤になって10年が過ぎた。最初の5年間は、花を植えたり、ラジオ講座を聴いたり、スポーツ新聞の川柳欄に投句を始めたり、自分の時間を楽しむことができるようになった。 6年目の秋、一緒に暮らす父が倒れて入院した。私は父親似と言われてきた。顔、歩き方、早期退職の引き金となった後縦(
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それ、口ぐせか? 津市・横山久美子(清掃員・60歳)
2026/4/28 02:00 515文字25歳で結婚し、還暦を迎えたタイミングで結婚生活に終止符を打った。年老いた両親2人暮らしの実家に出戻って、はや1年がたとうとしている。35年ぶりの実家での生活では時折、子どものころのワンシーンがよみがえることがある。 中学生のころ、自分でもコントロールできないほどイライラしていた。母のどんな言葉に
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家族とは… 神戸市東灘区・秋山裕子(自営業・68歳)
2026/4/27 05:01 558文字父は孤独死をしたらしい。「らしい」というのは、父と私たち家族は何年も交流がなかったからだ。父の死も姉から聞いた。すでに父の死から数年がたっていた。 私は父の死を知っても少しも悲しくなかった。幼い頃から家にほとんどいない父。母を泣かせていた父。多くの人たちに尋常ではない迷惑をかけていた父。そんな父が
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白木蓮と弟 福岡県飯塚市・堀江貴実子(窯元手伝い・77歳)
2026/4/27 05:00 574文字「白木蓮(はくもくれん)のつぼみの頃は世にありし」。弟が亡くなった翌年、母が詠んだ句である。白木蓮の花を見ると、弟のことを思い出す。弟は38年前の3月27日に突然亡くなった。 幼い頃から病弱で、小3の時はいじめにも遭った。私はちょうど校内の週番長をしていたので、弟の教室に入るなり、いじめっ子に「今
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古いアルバム 横浜市青葉区・田村真知子(無職・77歳)
2026/4/27 02:01 534文字夫と私は後期高齢者です。子どもは娘2人で、結婚して遠くで暮らしています。 押し入れにある大量のアルバム、特に娘たちのものを断捨離することにしました。布張りの重いアルバムが2人分で10冊あります。このアルバムを小さくして、持って帰らせることにしました。 「毎日が日曜」の生活を送っている夫が「やる」と
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読書の扉 鹿児島市・松永あやみ(主婦・74歳)
2026/4/26 02:00 556文字一昨年の暮れに夫が入院した時のこと。長女宅に招かれ、年越しそばを一緒に食べた。夫不在の独りで迎える年越しを、中学生の孫娘が心配しての提案らしかった。 帰り際に高校生の孫娘が「面白い本があるよ」と言うので貸してもらった。タイトルは「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」で、自分では手に取らない本だなあと思っ
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後悔 北九州市小倉北区・北元喜久子(主婦・80歳)
2026/4/25 05:02 532文字「女の気持ち」の投稿で、親の病気についてそれぞれ同じ思いを書いたことが縁で、彼女と友達になって約2年半。年が近かったこともあり、すぐ旧知の仲のような親近感を覚えた。 時にはメールで、時には電話で長話をした。外国旅行もお互いあちこち同じ国に行っていたこともあり、話題は尽きない。会って話をすれば、共感
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横に並んで 岡山市南区・岩藤由美子(主婦・73歳)
2026/4/24 05:04 552文字「おばあちゃんは年寄りだから……」 ギクッ。やはりそう見えるんだ。「手加減してあげて」というような言葉が続いたと思う。8歳の女の子の気遣いに動揺した。ありがたいより、情けないが実感だった。 お彼岸の墓参りに来てくれた娘と孫たちとドッジボールをした時のことだ。メンバーは小学校を卒業したての子、8歳の
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母のコート 福岡県久留米市・河内千栄子(元教員・75歳)
2026/4/24 05:04 562文字ついに実家にある母の整理ダンスと洋ダンスを処分した。それぞれにあふれるばかりの衣類が詰まっており、物が捨てられない母を思い出してはおかしいやらあきれるやら。戦争の真っただ中で物がない青春時代だった母は、モッタイナイが口癖だった。 洋ダンスにもぎっしりと洋服がかかっている。農家の父には縁がなかった背
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