品川―名古屋間(約286キロ)を約40分でつなぐリニア中央新幹線。総工費は従来の計画から大幅に増額する見通しで、工事も各地で難航するなどし、開業時期が見通せない状況が続いている。建設を進めるJR東海が「国家的プロジェクト」と位置付ける「夢の超特急」は今、どうなっているのか。
27年開業断念 自然環境への悪影響懸念
2007年、JR東海は全額自費でのリニア新幹線整備を発表した。第1期として、品川―名古屋間の工事が14年12月にスタート。当初はこの区間について27年の開業を目指していた。
ところが2年前に、27年開業を断念した。山岳地帯にある南アルプストンネル(全長25キロ)は難しい作業が予想され、早くから工事を始めた。ただ、長野県内(8・4キロ)と山梨県内(7・7キロ)にとどまり、静岡県内(8・9キロ)は取りかかれていない。工事に伴う水資源や南アルプスの自然環境への悪影響が懸念され、静岡県が着工を認めてこなかったからだ。
静岡工区の着工を巡って静岡県とJR東海は激しく対立してきた。ただ、県の有識者専門部会は3月、トンネル掘削工事を巡って県が解決を求めた水資源や工事で発生する土、生物多様性に関する3分野の28課題について、JR東海が示した全ての対応策を承認した。鈴木康友知事が掲げた着工容認の前提条件を満たすことになり、静岡工区の年内着工の可能性が出てきた。それでも、静岡工区は着工から完成まで少なくとも10年と想定されているので、今年中に着工したとしても、品川―名古屋間の開業予定は36年以降となり、名古屋―大阪間の開業時期は見通しが立っていない。
工事費増加の見通し 運賃引き上げの可能性も
さらに工事にかかる費用も、増える見込みだ。JR東海は25年10月、総工費が従来計画の7兆400億円から約4兆円増えて11兆円となる見通しを示した。工事がスタートした際の当初計画では5兆5235億円だったので、倍増したことになる。JR東海は品川―名古屋間の運賃について、東海道新幹線のぞみの指定席よりも約700円高い料金を前提としている。実際の料金設定はこれからになるが、運賃を引き上げた分を工費とする可能性もある。
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【リニア中央新幹線】
磁力で車体を浮かせ、最高時速500キロで走る最新型の新幹線。車輪とレール、架線とパンタグラフといった接触がなく、摩擦による騒音はない。日本列島の真ん中を進む「中央新幹線」として1973年に国が整備を決めた。
東海道新幹線とは異なる新しい路線で走行し、東京―名古屋―大阪間を結ぶ。東海道新幹線の最高時速は285キロで、品川―名古屋間は86分かかるが、リニア新幹線では500キロで走行し、最速40分に短縮される。品川―大阪間は67分の予定。時間短縮によるビジネス効率の向上のほか、東海道新幹線の混雑緩和や地震など災害時のバックアップ路線としての役割、先端技術をアピールできることで日本全体の経済活性化につながると期待されている。