4月27日に開幕した核拡散防止条約(NPT)再検討会議は、核の安全保障や国益を巡り、核保有国と非核保有国、そして核保有国同士が複雑に対立する場になりそうだ。今回はロシアによるウクライナ侵攻、米国・イスラエルとイランの戦闘が終結していない戦時下での会議となるが、条約の「空洞化」も懸念されている。
保有国、理念に逆行 国益を優先、軍備拡大
NPTで核保有が認められた5カ国(米国、ロシア、英国、フランス、中国)は現在、自国の国益や安全保障戦略をNPTの核軍縮義務より重視し、軍拡を進める傾向にある。
ロシアは核を他国への「脅し」に使用し、米国は核開発疑惑があるイランに対し、先制攻撃を仕掛けた。米国とロシア間の唯一の核軍縮合意「新戦略兵器削減条約(新START)」は2月に失効している。
米露(ロシア)両国の攻撃により、欧州や中東、アジアでは自国を守るための「核保有論」が台頭している。フランスは3月、核弾頭数を増やし、欧州各国で核を共有する検討を開始。中国も核弾頭数を急速に増やしている。これらの動きに、グローバルサウスを中心とする非核保有国の不満は強く、会議で双方の主張が衝突することは必至だ。
戦争被爆国、日本 「リード役」果たせるか
一方で、唯一の戦争被爆国である日本はこれまで、NPTを国際的な核軍縮・不拡散のための最も重要な枠組みとして重視し、議論を主導してきた。しかし、核保有国の核増強の動きが相次ぎ、中東情勢が混迷を深めるなど、会議を取り巻く環境は「全く楽観できず、これまでより格段に厳しい」(外務省幹部)状況だ。日本自身も安全保障環境の悪化を理由に防衛政策を大きく転換しつつあり、どこまで「リード役」を果たせるか、不透明となっている。
被爆者ら核廃絶訴え行進
NPT再検討会議を控えた4月26日、広島、長崎の被爆者や市民団体ら200人以上が会場となる米ニューヨークの国連本部周辺を行進した。参加者は「ノーモア・ヒロシマ」「ノーモア・ナガサキ」と核廃絶を訴えた。
参加したのは、被爆者で日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の浜住治郎事務局長や高校生平和大使の才津結愛さん=長崎南高3年=ら。ノーベル平和賞を受賞後初の再検討会議となる日本被団協の浜住事務局長は行進前の集会で「核兵器と人間は共存できません。核兵器のない平和な世界に向けて国際連帯を強めていきましょう」と呼びかけた。
被爆4世の才津さんは渡米前に「国際情勢が緊迫する中での派遣はとても意味がある。曽祖父母の被爆体験を伝え、核兵器が使われるとどうなるかなど、核の非人道性を強く訴えたい」と抱負を語っており、現地の大学生と意見交換する機会も設けられた。
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【核拡散防止条約(NPT)再検討会議】
NPTは核兵器を持つ国を増やさず、保有国も核軍備を減らすことを目指す条約で、1970年に発効した。会議は、条約に参加する191の国・地域が取り組みを話し合うために行われる。11回目となる今回は4月27日~5月22日に米ニューヨークの国連本部で開催。各国とNGOなどの演説が行われた後、核軍縮▽核不拡散▽原子力の平和利用――の3分野で集中審議をする。
NPTで核保有を認められている米国、ロシア、英国、フランス、中国の5カ国には核軍縮に向けた誠実な交渉が義務づけられている。しかし、前々回(2015年)と前回(22年)の会議では核保有国間の思惑の違いから決裂し、成果となる最終文書を採択できなかった。