都会を離れ、田舎で暮らしたいと思う若者が増えている。その一人、栄大吾さん(32)が東京の政府系金融機関を飛び出し、移住先に選んだのは、瀬戸内に浮かぶ小さな島、山口県周防大島町。栄さんはこの春、島で収穫したヒジキの通信販売を始めたほか、畑仕事から集落支援まで10以上の仕事をこなす。安定した人生を捨て、栄さんがこの島で実現したいことは何なのだろうか。【毎日新聞大阪経済部・小坂剛志】
満員電車の日々…「この人生、幸せか?」
「自分、何もできないな」
銀行員時代、衰退していく地方を目の当たりにし、やりきれない思いを感じていた。大学卒業後、政府系金融機関の日本政策投資銀行(DBJ)に就職。戦後、海運や鉄鋼などへ長期融資をした金融機関で、「先の見えない世の中においても、半官半民の組織として長期的な視点で自らやるべきことを考える組織」と感じ、就職を決めた。
広島市の支店に配属され、山口県や島根県の有力企業を担当した。それぞれの企業について、10年後の収支予測を立ててみると、人口は減り、縮小していく地方の姿が浮かび上がった。
今のままでは、いくら融資をしても長期的な成長への道筋は見えてこない。「何かできることはないか」。高校野球で培った「ド」がつく体育会系の性格だ。現場で体を動かさず、会議室で数字や仕組みを考えるだけの仕事にもどかしさがあった。
広島での2年間の勤務を終え、2016年、東京・大手町の本社に異動した。駐車場代込みで月12万円のマンションに住み、満員電車に乗って通勤する毎日が始まった。
「家に住むためだけに、こんなに一生懸命働いているんだっけ?」。東京に住み続けることを前提に、生涯の収支を試算すると、家賃や住宅ローンに大部分が消える将来が浮かんだ。そんな人生で自分は幸せになれるのか。人口減少が進む地方は圧倒的に人が足りていない。地方の現場でこそ、自分は役に立てるのではないか。そんな考えが芽生えた。
強く背中を押したのは、28歳の時、地方活性化をテーマにした地域エコノミスト、藻谷浩介氏の講演を聞いたことだった。「…
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