金融政策の罪と罰(5)
本年秋、財務省の矢野康治事務次官が月刊誌に寄稿し、与野党こぞってのバラマキ合戦に警鐘を鳴らした。忘れられつつあるが、日本銀行も異次元緩和の開始当初は、政府に財政規律の維持を強く訴えていた。だが、その声は次第に小さくなり、今は積極的な発言を控えるようになった。
中央銀行にとって、財政のありようは大きな関心事だ。とくに国債を大量に購入してきた日銀にとっては、財政規律が守られることは、金融政策の独立性を担保する「最後のよりどころ」だったはずである。にもかかわらず、なぜこうなったのか。
法律が禁じた「国債引き受け」
財政法は、日銀による国債の引き受けを禁じている。引き受けを許せば、日銀が国の「ポケット」として使われるようになり、いつでも資金調達できる安心感から財政規律が失われかねない。また、政治から国債引き受けの圧力がかかりやすくなり、日銀による独立した金融政策の運営が難しくなることを懸念したものである。
現在の日銀の国債購入は、市中からの「買い入れ」であり、財政法でいう「引き受け」とは区別されている。しかし、購入額が巨額になれば、引き受けと同様の危惧をもつのは当然である。
異次元緩和の導入当初、日銀が財政運営に厳しい注文をつけたのも、自然な成り行きだっただろう。黒田東彦日銀総裁は2013~14年の記者会見で、「財政規律が緩むと、間接的に、金融緩和の効果に悪影響を及ぼす懸念がある」と語り、消費増税についても、先送りは「リスクが大きい」と明言した。
しかし、14年11月に安倍政権が、翌年秋に予定する消費増税の先送りを決めたころから、発言は慎重になった。その後は財政健全化目標などの政府の公式見解を時折なぞるだけとなった。
日銀が支えた「国の資金繰り」
日銀によるネット国債購入額(「購入」マイナス「償還」)は、異次元緩和開始後20年度末までに400兆円を超えた。8年間の財政赤字の累計を上回り、国の資金繰りを日銀が丸ごと面倒見た計算である。
この間、8%から10%への消費税率の引き上げは2度にわたり延期され、当初の予定に比べ4年後…
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